2024年は「お金の大移動」の年 - FRB「利下げ」の行方
注目の2月米雇用統計はまた投資家泣かせの微妙な数字。NFPのヘッドライン+27.5万人を見て「先月より減った!」と米国債は買い(金利は低下、5年債は一時@4%)、ドル円は売りに飛びついたが、そもそも+20万人台は弱い数字ではない。慌てて6月に「利下げ」を急ぐ理由には成り難い
年内の「利下げ」は依然7月開始~▼0.75%が有力だが、面白いのは30年金利が指標発表前よりむしろ上がったこと。1つは「利下げ」を見越したイールドカーブの「スティープニング」取引、e.g., 5年買い+30年売り、そして平均時給の低下ペースが非常に緩やかな事
一時@146円台半ばまで売られたドル円もその後少し落ち着きを取り戻したが、対ユーロ、ポンドでも「ドル安」傾向が続く。そもそも米国債の「スティープニング」は海外長期投資家の「ドル売り」を連想させる。足音が大きくなってきた日銀の「マイナス金利廃止」→「利上げ」もあって「ドル買い」一辺倒の戦略は徐々に見直しを迫られるだろう
ECBは難しい選択を迫られそう。自動車産業等の輸出競争力を考慮すれば過度な「ユーロ高」は避けたいのが本音。かといって「インフレ」を再加速させる「ユーロ安」も悩ましい。結局FRBと足並みを揃えるしかない
そして根本的には「利下げ」によって 燻る「インフレ」の ”種火” 。|損切丸 (note.com) への "再点火リスク" にどう対処するか。AI取引がもたらす「インフレ」効果については前稿.ヨーロッパから聞こえてくる ”悲鳴” - AI相場は高速回転の ”インフレマシーン” |損切丸 (note.com) で解説したが、これはなかなか厄介
現状の難しいマーケットに対応するため「過剰流動性」の大元である日銀、FRB、ECBはいつにも増して緊密に連絡を取っていると推定。一定の「戦略」をもって臨んでいるはず。筆者が2024年に想定するのは:
金融3極ではこういう「戦略」でAI相場に対処していく事になる。FRB、ECBが「利上げ」に戻る展開は避けたいので、特にFRBは慎重なステップを踏むだろう。対「インフレ」の観点からも日銀の「利上げ」は必須
実際「金利低下」を受けてNYダウ、ナスダック、S&Pとも買われたが、その後米国債が売り戻されると株価は急反落。いかに「利下げ」頼みかを露呈してしまった。ビットコイン(BTC)ももう一暴れしそうな気配
ここでなかなか刺激的な「世界の主要株価指数ランキング」↓
例えば株価上昇値率1位+322.69%のアルゼンチンはCPI+254%。対ドルの通貨下落率▼76.5%を足すと丁度そのぐらいになる。つまり「実質株価」は上がっていない。ここにランクインしている国は「高インフレ」「高金利」のいわゆる "経済最貧国” ばかりで、ここに10位とはいえ先進国の「日本」が入っているのは異様。そう言う意味では多少の株価の調整は覚悟して「円安」是正には取り組むべき
ただ30年続いた「デフレ」で成長が止まっていた点を考慮すると「円安是正」と「株高」を同時進行させる事も可能。他のランクイン諸国と大きく異なるのは1,000兆円という巨額の「預金」を抱えていること。その点「新NISA」は時宜を得た政策でもあり上手く利用したい
「ブラックスワン」があるとすれば金利がジワジワ低下する「人民元」と不気味に上昇を続ける「ルーブル」。ぱっと見中国が余った「人民元」をロシアに貸せばいいようだが、不良債権問題に苦しむ中「人民元安」を誘発しては元も子もない。どちらも独裁国家だが「お金」の事は両国あまり上手くいっていおらず、「戦争」リスクが高いことも筆者を不安にさせる
とにかく「金融政策」に関しては世界中で問題が山積。30年振りに「金融引締」に動く日銀は不確定要素が多いし「過剰流動性」「インフレ」を意識すればFRBもECBも「利下げ」はそれほど簡単ではない
多額のドル建債務を抱える "経済最貧国” に目を向ければ継続する「ドル高」≓「自国通貨安」は死活問題。折しもエジプトが+6%の「利上げ」+「自国通貨切下げ」を敢行したばかり。頼みの「中国」は外貨準備3兆ドルを使い切ってしまい、「人民元」を貸して市場で "ドル転" されては堪らない。ロシアもエネルギー代金として受け取った「ルピー」「人民元」を "ドル転" 出来ず苦労している
つまり世界全体では「過剰流動性」でも「お金」、特に「ドル」は足りない所は足りない。BTCに流れている「お金」の一部でも回ればいいのだが…そうは問屋が卸さないのが「お金」の難しさ。「お金の大移動」が起きている2024年は要注意。意外な ”落とし穴” があるかもしれない
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