2022年「金利」の "Conundrum" (謎)。ー 株高を支援する「イールドスプレッド」。
標題添付の「米国債FF~30年」のイールドカーブを見て頂きたい。2021年7月がこれ ↓ だから、いかに金利が動いているか、お判り頂けよう。その中でも特筆すべきなのがイールドカーブの「形状」の変化。
通常、期間の長い金利が短いものを上回る「順イールド」が形成されるが、この1年のように「利上げ」サイクル初期では短期金利の上昇が大きくなるため、イールドカーブは平坦化=「フラットニング」する。
ところが今回、「フラットニング」を超えて将来の「利下げ」を見据えた「逆イールド」=期間の長い金利が短いものを "下回る" が進行。
どういうことか。具体的に説明してみよう。
2年債@1.94%から計算されるFRBの政策金利は2022年内に@2.50%まで上昇を見込んでいる。仮にそのまま@2.50%で推移すると:
5年債は単利で@2.28%、複利で@2.38%、10年債は@2.50%程度が妥当。だが実際にはそれぞれ@2.14%、@2.15%に留まっている。
これはなぜか?
市場が2024年央に▼0.25%の「利下げ」を織り込んでいると解釈できる:
5yr - 5yr(5年先の5年国債金利)が@2.16%であることから推定すると、5~10年には@2.0%までの「利下げ」を織り込んでいることになる。いかに先読みするとは言え、随分 ”気の早い話” だ。
筆者が今回問題視しているのが、この ”気の早い話” が十分な根拠に基づかないこと。まさに* "Conundrum" (謎)である。
今回は日・中の「大規模ドル買介入」などないので、金利低下には大きく2つ要因が考えられる:
1.過剰流動性
「利上げ」が始まったので「金融引締」が始まったと ”勘違い” しがちだが、実はまだFRBもECBも「お金」の蛇口を閉めてはいない。国債等「資産購入オペ」は続いており、市場の流動性は増加中。いわゆる**「テーパリング」は5月以降であり、それでもようやく蛇口を少しずつ閉めるだけ。本来「金融引締」では市場から「お金」を吸収しなければならないが、それは2022年年央以降になる。つまり本番はこれから。
2.銀行、投資家の都合
ウォール街を中心に「株上がれ!」は共通の願いであり、そのための最大の敵は「金利上昇」。 "2024年央以降「利下げ」" は都合の良い理屈であり、今は流行りの言葉を使えば「金融プロパガンダ」。
米国債トレーダーにとっても3/16FOMC通過後5/4まで「利上げ」はないわけで、その間46日間は絶好の「儲け時」。
例えば5年債@2.14%を5,000億円買ってレポ@0.32%で回せば:
5,000億円×(@2.14% ー @0.32%)÷365日 ≓ 1日+25百万円
46日間で+11億円。
「5年後、10年後には株価は戻る」なんて ”ガチホ” 派の多い日本人には考えにくいかもしれないが、「首」がかかっている投資銀行やファンドのトレーダーは必死。1日1日が勝負で5年後などと悠長な事は言ってられない。
この「上がらない金利」の恩恵を受けているのが株式市場だ。S&Pの「イールドスプレッド」は@▼3~▼4%のレンジで推移 ↓ しており、3/18時点では@▼3.8%、つまり「買い」水準にある(▼@3%超は「売り」)。
今のところ「プロパガンダ」は功を奏しており、ここまでは目論見通り。「イールドスプレッド」に注目している投資家も多いはずで、当面はこれでいいかもしれない。
だが「過剰流動性」に修正が入る本当の「金融引締」はまだ先。
当然FRBもウォール街もこの点は十分熟知している。焦点は「インフレ」が収まるかどうかだが、ここからは「チキンレース」(崖に向かって車を走らせ、どちらが先にブレーキを踏むかの勝負)の様相を呈する。ただこのレース、「逃げるが勝ち」になるかもしれない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?