「大緩和」のあとしまつ。
注目の日銀政策決定会合(1/17~18)はほぼ予想通り何も無し。しいて言えば「5年物共通担保オペ」が導入される ↓ ぐらい。おそらく@0.20~0.25%で資金供給して金利の上昇を抑えようという事なのだろう。5年JGBの「無制限買取オペ」よりは幾分ましで、1/4歩前進といったところ。
確かにここで「YCC上限金利@0.75%」を決定してしまえば「日銀は押せば動く」とマーケットに勘違いされてしまう懸念もあり、今回は見送らざるを得なかったのかもしれない。ただ、今後マーケットを本当に「正常化」する気があるなら、市場とのコミュニケーションを改善して ”味方” につける努力が必要になろう。
少し話は変るが大阪湾に突然現れたクジラの「淀ちゃん」。残念ながら助けることが出来なかったが、その顛末が映画「大怪獣のあとしまつ」と一緒だと話題になっている。双方ともポイントになったのが "死体の腐乱臭" 。結局「淀ちゃん」は沖合に沈めることになったそうだ。
「ゴジラ」ファンの筆者も一時「お金」を払って見に行こうと思った。たまたま今XXXXプライムで無料放映されており全編通してみたが、いやぁ、わざわざ映画館に見に行かなくて良かった。封切り当時も「世紀の駄作」と話題になったがこりゃ駄目だ(ごめんなさい)。
あれだけ良い役者をたくさん使い、CGにも相当お金を使っているはずなのに最初から最後まで全く噛み合わない。観光資源にしてインバウンドでいくら儲かるとか、 "死体" にミサイルを打ち込むとか、政府が混乱する様など明らかに「シン・ゴジラ」のパロディなのだが、シリアスなのかコメディなのかどっちつかず。見ている方があっけにとられるシーンが続き、"死体" から出る "腐乱臭" を人間が浴びると正体不明のキノコが体に生えるという件など全く意味不明(苦笑)。意識的に作ったならまさに画期的な映画だ。
何でこんな話を持ち出したかというと「XXXミクス」「XXバズーカ」「異次元緩和」「国債無制限買取オペ」などが「大怪獣」とイメージが被るから。8年前「大怪獣」を登場させて街中=マーケットを蹂躙したが、「大怪獣」が死んだ後の事=出口戦略など誰も想定していなかった。
"腐乱臭" ≓「円安」「インフレ」が立ち込め多くの人が困っているのに、 "死体" を埋めるのか、海に沈めるのか、ミサイルを撃ち込んで破壊するのか、そしてそれにいくら「お金」がかかるのか、「無責任男」(植木等主演)状態。大ボスは3年前にとっくに逃げ、大番頭もこの4月に現場を去る。
思い起こせば「失われた30年」の間、日本はこういう "後始末" ばかりに追われた。「バブル崩壊」による不良債権処理に端を発し、東北大震災の時の「原発事故」、最近なら「コロナ危機」対策もそう。
その間ずっと行われてきた「大緩和」こそが「大怪獣」そのもの。今度こそ原因と結果、社会的コスト等々しっかり検証して頂きたい。そうでないと何をどう "後始末" するのかわからず、見ている者があっけにとられたまままた「失われる」だけ。とにかくこの "腐乱臭" はどうにかして欲しい。
映画にこう言う件が出て来るが、霞ヶ関で、会社組織で、毎日のように繰り返されている。これこそ "無駄" で日本の低い生産性の元凶。
筆者も邦銀を辞める前に香港であった事例が ↓
こんな事を延々何日もやり取りしていた。当時はそれを「火の玉の投げ合い」と呼んでいたが、下手に受け取ると課長がご立腹。「仕事持ってくんなよ!!」。これこそ「X(バッテン)主義」人事の弊害で、出世するためには「なるべく仕事をしない」が常道。この辺の理屈は霞ヶ関も同じであり、自分の「X」は絶対認めない。この点を理解していると現日銀総裁の言動も少し分かり易い。あれ程のエリートが「失敗」を認めるはずがない。
” T.I.J.(This is Japan)”
この手の話を英銀の同僚に説明すると半ばジョークと受け取られてしまい、円金利相場はやはり「不思議の国・Japan」。12月に前触れも無くYCCの上限引き上げを実行したかと思えば、マーケットが織込みに行った再引上げは完全無視。これでは取引を手掛けようがない。
要は「面子」の問題。マーケットに押し切られたのが「X」で支配したのが「〇」ということになる。日本人だけが相手ならそれでもいいが、FXなど世界に対峙する場合は上手くいかなくなる。
もし日銀がマーケットとの「対話路線」に転換するのなら、次期総裁にはBIS(国際決済銀行)で部会長を務め海外に知己の多い中曽氏が適任だと個人的には思う。逆に「日本流」に固執するなら「大緩和」は噛み合わず "腐乱臭" はまき散らしたままになる。日本にとっては大きな岐路だろう。