続・「ドル高」「円安」の終焉(?)。ー 「経常収支」「貿易収支」の黒字転換の意味する事。
「ドル高」「円安」の終焉(?)。ー 「GDPギャップ」プラス転換が示唆する事。|損切丸 (note.com) の続編。
突っ走る「円安」とは対照的に、この国の貿易収支ないし経常収支が黒字転換。後者に至っては単月として過去最大の黒字額だという。本来「円高」要因となるはずがドル円が逆に動いている。どうしてか。
ここは どうする?「外貨投資」。ー 「イールドカーブ」の形状が変わる米国債。|損切丸 (note.com) も参照して「投資」の観点から考えて見よう。経常収支はいわば国の「決算書」。 ↑ 標題グラフで俯瞰すれば「貿易立国」どころか日本は「外貨投資」で喰っている様が明らかになる。
「個人投資」に例えれば、企業も含め国全体が米国債やNYダウに投資してその利子、配当金収入で喰っている事になる。
ポイントは受け取った「ドル」を「円」に戻すかどうか。
企業財務に関わった方はCMS(Cash Management Service)という言葉をご存知と思うが、本社・子会社を含め「資金繰り」を統括管理する事だ。例えばアメリカに子会社を持つ場合、受け取った「ドル」の配当金をどうするか。選択肢は2つ:
「円高」信仰の篤かった「昭和」ではほとんどが①「円転」。儲かれば儲かるほど「円高」が進行するというジレンマに陥った。ところが1970~1990年代の「円高不況」を機に企業はCMSを変更。②「ドル」のまま現地で再投資を続ける金額を増やした。
相場とは面白いもので、こうやって「円高」でも困らない体制が構築されると ”逆” に動き出す。
(参照)「行って欲しくない方に動く」相場の原理Ⅱ。ー 「何もしない」を許さないマーケット。|損切丸 (note.com)
巨額の経常収支黒字を見てFXマーケットは何を感じるだろうか。
直感的に思うのは巷で騒がれているほど日本、特に国際企業は「円安」で困っていないという事。保有している「ドル」(あるいは他の外貨)の価値が上がる=経常収支が黒字になるのだからむしろ歓迎。
同じ様な状況にあるのが財務省による125兆円もの外貨準備 ↓ 。*世界最大の「円キャリートレード」と言っていい。
つまり「国」も企業も「投資」の観点からは「円安」では困っていない。これを何とか個人レベルでも活用できないものか?
FXでも株でも「外貨投資」で儲けている人は実感としてわかるだろうが、難しいのは「どこで利食うのか」。マーケットは「儲け」に飢えているので財務省の「円キャリートレード」同様、ドルー円の金利差を享受したい。だから「円安」の限界を試しにいっている。
一時ドル円の急落を起こした財務相の発言も「投資」の利食いと考えるとトレーダー達には一定の恐怖となる。海外に投融資している企業も500兆円もの剰余金の内、動かせる「ドル」がいかほどあるか。だが今の@150円近い水準を「利食い時」と定めてくるなら「国」と歩調を合わせてくる可能性が高い。「あらゆる選択肢」の中にはこの事も含まれる。「介入は効かない」などとたかをくくっていると手痛いしっぺ返しを喰うだろう。
それもこれも「需給ギャップ」がプラス転換 ↓ したり、莫大な経常収支黒字があるから。ある大手企業の社長が「170円」と口にしたようだが、今のところそこまで極端な事になる蓋然性は低い。まずは為替介入だろうが、日銀の「利上げ」とともに切迫していないのは「投資」で儲かっているから。キャピタルフライト(資本流出)を伴う「通貨安」に悩む中国やロシア、トルコとは若干事情が異なり、まだ余裕がある。
さはさりとて「円安」で3,500兆円はあろうかという「国富」が失われるのも事実。特に輸入物価上昇で生活が圧迫されている個人消費はもう限界に近い。日銀による「マイナス金利解除」や「利上げ」は、政治的にも選挙と絡めたタイミングの問題。+2%程度までの「利上げ」なら財政的にも経済的にも大きな負担にはならないだろう。
(参照) 「金利負担」が問題になるのは@3%を超えてから。ー 「円安」vs JGBの激しい綱引き。|損切丸 (note.com)
とは言え、日々FXに張り付いているトレーダーにとっては「ドル売介入」がいつ入るかは死活問題。今から「外貨投資」を始めたいと考えている人達にとっても同様だ。売りか買いかの二択しか無い「投資」もトレードも詰まるところ「いつ」「どの水準で」が鍵。「損切丸」もそうだが、目まぐるしく変化する市場の中で ”検証作業” を進めながらチャンスを窺いたい。