物価 ≠ 株価 ≠ 金利上昇Ⅱ。 ー 一躍主役に躍り出た 「金利」。
おかしいのは株価ではない、金利だ!!|損切丸|note が持論の「損切丸」。FRBの利上げ開始で一躍マーケットの主役に躍り出た 「金利」だが、中でも 「株式投資」と「金利」の相関関係。|損切丸|note がクローズアップされている。
その代表格が「イールドスプレッド」(標題に算式を添付 ↑ )。ここで実例を挙げて説明を試みてみよう。
1.米S&Pの株価と「イールドスプレッド」の推移
2.米10年国債の金利推移(5年間)
2018年には米10年国債金利は@3.14%もあり、S&Pは@$3,000.-程度、「イールドスプレッド」は3%近辺。それが記憶にも新しい2020年3月のいわゆる「コロナ暴落」でS&Pは@$2,400.-に急落、「イールドスプレッド」も@6%台に ”急騰” した。
そこでFRBが「ゼロ金利」+米国債、社債の買取による「量的緩和」を打ち出し、米10年国債金利は@0.50%まで急低下。政府が給付金などで「お金」をばらまいたのと併せ、強烈な「信用緩和」状態になり、「米株最強ストーリー」が始まった。
株価や金利だけ見ていると激しいボラティリティー(変動率)に目がいきがちだが、「イールドスプレッド」に目を向けると違う風景も見えてくる。データを追っていて気が付いたのだが、3%を割り込むと殆どのケースで株価の下落や金利の低下で3%台に跳ね返されている。つまり、S&Pの「イールドスプレッド」で3%割れは「株価割高」のサインとも読み取れる。激しく株価が動く現在も同様で、@3%そこそこに ”戻っている” 。
「イールドスプレッド」の縮小(拡大)要因は:
①米国債金利の上昇(低下)→ 株価の下落(上昇)
②米株PERの低下(上昇)→ 株価の下落(上昇)
③米株価の上昇(下落)
この3つになる。一見 "投機的" な米市場も、実はかなり論理的に動いていることがわかる。AIやHFT(High Frequency Trade、高頻度取引)が主流の米株式市場なら当然と言えば当然で、これらのデータをリアルタイムで売買プログラムに組み込めば相場が動く。株価の母数が大きくなっているので動きが派手に見えるが、いわば*一種の「データサイエンス」だ。
ここまでは 株価 ≠ 金利の部分だが、開かれた「金利正常化」への道。ー FOMC@1/26/2021。|損切丸|note を経て ≠ が=になる日も近い。
そしてもう一つ残された「物価」について。実は "鍵" は原油等のエネルギー価格や日本にとっての「円安」ではなく「人件費」。「雇用」に関しては1/26 FOMC声明文でも言及されている ↓ (抜粋。原文まま)。
帝国データバンクが日本の「人手不足」について面白い資料を発表していたのでここで紹介しておこう:
まず「コロナ前」の2017~2019年に「人手不足」倒産が急増していたことが目を引く。確かに同時期にアルバイト時給も急騰していた ↓ 。
コロナ不況でとかく忘れがちだが、日本は労働力人口が激減しており、恒常的に人が足りていない。昨年末 "マンボー" 前の一時期、飲食店や小売業で「人手不足」が報じられていたが、今でも東京でアルバイトを時給1,000円以下で集めるのは困難。ビルの清掃員やマンション管理人、介護職などは常に求人が出ているが、今のような「低賃金」では割に合わない。
日本では「団塊」8百万人が抜ける穴が大きいが、いわゆる「べビーブーマー世代」が抜ける人口動態の変化は構造的なもの。世界中で「人が足りない」。日本より先に景気が立ち上がったアメリカでその影響が現出して「インフレ」を助長しており、FRBが目を付けた結果が「利上げ」開始だ。
↑ データを見ても日本は確実にアメリカを追っており、今後「人手不足」が企業の命運を握る。ここに来て「値上げ」が相次ぐのは「人件費」上昇に備えた ”原資確保” でもあり、「希望退職」が頻発するのも無駄に高い50代以上の「コスト」を入れ替えたいから。食糧やエネルギー価格を除く、恒常的「コアインフレ」は既に日本でも始まっている。
パンデミック後に待つのは「人手不足」を起点とした "淘汰" 。人件費抑制で赤字を埋めるような「デフレ型」企業はまず生き残れまい。外国人労働者も今の日本の「低賃金」では期待薄。結局「お給料」を上げるしかなく、それに見合う「付加価値」を生み出せる企業しか生き残れなくなる。
だから日本人にはもう少しの辛抱。政府や経済団体がどうこうしようと関係なく「人件費」には上昇プレッシャーが掛かり続ける。「お給料」も「金利」も日本の「正常化」はもうすぐやってくる。期待も込めて。
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