「卵」も生めなくなった香港。
(参照) 中国にとって「金の卵」香港 - 貿易編。|損切丸|note
ハンセン指数と人民元急落が告げる事。- マーケットからの ”メッセージ” 。 |損切丸|note
香港が酷いことになっている。3四半期連続のマイナス成長で「コロナ暴落」直後と同等の落ち込み。ハンセン指数は遂に15,000bps を割り込み、本格的に 逃げ出す「お金」。向かう先は...。|損切丸|note。かつては名目株価で日経平均を上回っていたのに… ↓ 。
筆者は「香港」にはどちらかというと良い思い出がない(邦銀を叩き出された。苦笑)が、1994~1995年に1年ほど住んでいたので思い入れもある。特に*「飲茶」など中華料理の味は最高と言っていい程で、東京でもシンガポールでも同レベルの味を探すのはかなり難しい。本物の「広東料理」、特に「ガルーパ」(ハタ科の高級魚、日本ではクエなどが該当)の "清蒸" は絶品だった。帰国した1995年以来、一度は戻ろうと思いながら、遂に行けずに現在に至った(もう危なくて行けない)。
今年も何度かニュースになったが「ドルペグ制度」の上限ドル・香港ドル=@7.8500が何度も攻撃を受けた。かつては**「香港ドル売り」殺到で市場から香港ドルが "蒸発" し、O/N金利が@100%を超えた時が何度かあった。その都度ハンセン指数も急落したが、毎回 ”不死鳥” のように蘇っていて妙に感心したモノだ。「香港はしぶとい」。
今回はO/N@100%なんて派手な出来事は起きていないが、その分「お金」の流出が "リアル" でかえって不気味。株価同様「しぶとい」不動産価格まで下げている。筆者の知る限り、これだけ明確なダウントレンドは記憶に無い。「世界一高い家賃・不動産」だっただけに底が見えてこない。明らかに「お金」は「香港」を脱出している。
では「逃げたお金」はどこへ向かったのか?
最近の相場動向を見ると、「ドル高」「インフレ」という傾向からグロース株中心のNYダウに向かったと考えるのが妥当だろう。@4%を超えた米国債もそれなりに人気のようだ。地理的に近い日本の「割安」な不動産に向かった可能性もある。やはり ”国内” は不良債権問題が深刻で経済が縮小しているのだろう。直近テスラが▼9%も「値下げ」したのがその証拠でもある。
そして何よりも深刻なのが「信用」の喪失
「ゼロ・コロナ」でまた iPhone の工場を閉鎖したようだが、これでは契約や計画が意味を成さなくなる。「中国から iPhone の工場を移すには8年以上かかる」とアップルも言っていたが、そんな悠長なことは言っていられまい。政治体制を見ても「経済無視路線」が続く蓋然性が高く、インドやベトナムなどへの移行が急速に進む事になる。本邦企業も同じ立場のはずだが、果たして素早い決断が出来るかどうか(正直ちょっと不安)。
かつて「三角貿易」で「金の卵」を生んだ「香港」はもう無く、「卵」も生まないただの地方都市になり下がった。「お金」の流出と共に5,000億ドルの「外貨準備」を「ドル売り」で使い果たせば「香港ドル」自体も保持する価値がなくなる。今の流れだと「人民元」に吸収されるのではないか。
AI時代の今、時の流れは凄まじく速くなっている。「10年一昔」というが3年、5年先も見通すのが難しい。2008年「リーマンショック」直後、時価総額が10兆ドル程度まで縮小した米株式市場もGAFAMの台頭により2021年には3.5倍の35兆ドルまで膨らんだ。そのスピードたるや...。
逆に言えば「失われた30年」の日本にとって今の「円安」は大チャンス。Z世代も含め、虎視眈々と逆襲を狙っている日本の経営者もいるはず。5年もすれば形勢は一気に逆転、なんてことも不可能では無い時代だ。
幸いこの国は400兆円以上の「剰余金」、1,000兆円以上の「預金」を抱え、「お金」の面からはアメリカ、中国、ヨーロッパより基礎条件は良い。あとは ”自信を取り戻す事” 。幸い世代交代も進み、ようやく「バラマキ」に批判的な国民も増えつつある。そう、いずれ「回収」される「お金」など貰ってもうれしくも何ともない。やっとそういう正論が語られるようになったこの国の ”芽” は出つつある。少なくとも「香港」よりはかなりマシだ。