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ドルはどこへ行った?
急転直下のUBSによるクレディスイス買収劇。買収金額の30億スイスフラン ≓ 4,600億円は同行の株価・時価総額で計ると安過ぎる印象もあるが、潰れる会社の価値というのはわからないもの。スイス政府もUBSも精査はしただろうが、後からとんでもない債務が出て来る可能性もある。
スイス3大銀行:UBS、SBC、クレディスイス
こう言われた時代を生きてきた筆者としては隔世の感がある。日本で言えば興銀、富士銀行、第一勧銀が合併してみずほ銀行になった時はひっくりかえりそうになったが、スイスは遂にUBS1行になってしまう。スイスといえば言わずと知れた「金融立国」であり、その立ち位置が大きく変わる。
主要国中央銀行の対応も速かった。リーマンショックの反省もあるのだろう。まず手を付けたのが「ドルの流動性供給」。銀行の「資金繰り」破綻連鎖を防ぐためには妥当な対応だ。「コロナ危機」直後にスワップラインの枠組みは出来上がっており( 「Temporary Dollar Liquidity-Swap Lines」- FRB、新たに9中銀とドル・スワップライン設置。「流動性融通」を拡充。|損切丸|note ご参照)、これを復活させることになる。
米国債市場の反応を見ると、さすがに明後日(3/22)の+0.25%「利上げ」は見送り予想に確定。「ドル資金供給」で一種の緩和策をとっている時に正反対の政策は出来ない。
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その後6月には+0.25%「利上げ」再開と読んでいるが、状況が状況だけにまだマーケットはフラフラ。今暫く予断を許さない。
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漫画「ゴルゴ13」などで有名な ”スイスの銀行” だが、テロ組織などのアングラマネー(Underground Money)にアラブ王族やオルガルヒの隠し財産など、表に出せない有象無象の「お金」をタダ同然で受け入れてきた。それが「金融立国」の力の源泉だったが、近年急速に状況が変化。
まずはリーマンショック後、金融界が本格的に「コンプライアンス」の時代に突入し、マネーロンダリングのチェックが厳格化。この点はアメリカ vs スイスの暗闘が繰り広げられ、徐々にスイスの得意領域が侵されてきた。
そこへ「脱炭素」→「戦争」の流れになり、事態は一気に流動化。アメリカと産油国の対立は激化し、ヨーロッパにおけるスイスの立ち位置はかなり微妙になっていた。特に*「金融制裁」による資産凍結でがスイスからアングラマネーが逃げ出し、今回の買収劇に大きな影響を及ぼした。
*そう考えると、ビットコイン(BTC)の暴騰も説明が付く。「制裁」をかいくぐってアングラマネーを確保するには「暗号資産」という選択肢は有力。シリコンバレー銀行やシグニチャーバンクの破綻とは別の「お金」の流れが出来ていたことになる。相場としてそれを利用する手もあるが...。何だか悪事に荷担するようで気も進まないし、アメリカが「制裁」の輪を広げてくるリスクも高い。まさに「こわれもの」(Fragile)。|損切丸|note。
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ドルはどこへ行った?
危機、危機、と騒ぐが、「お金」が消えて無くなるわけではない。 ”偏り” が酷くなるだけである。いわゆる「質への逃避」(Flight to Quality)だが、鉄則は「より安全で期間の短いもの」。それを補完するための「ドル資金供給」であり、平常に戻るまでの時限措置だ。
大半の「お金」は短期米国債へ一時避難していると想定され、それを受け取ったFRBが世界中にドルを分配するのが今回の対応だ。過去の危機時に学んだノウハウが詰まった、極めて合理的対応といえる。
大枠で見ると、3京円もの「大借金」のツケは一体誰が払うのか?。ー 急浮上した銀行の「信用問題」。|損切丸|note の中で、クレディスイスの株主や劣後債の保有者が兆単位の "ツケ" を払わされたと考えられる。現状でもエネルギー価格の高騰などで日米欧を中心に消費者が膨大な「インフレ税」を払わされているが、次は誰か。一時避難したはずの短期米国債やBTCも逃げ時を誤れば巻き込まれることになる。
逆説的になるが、銀行が潰れようが景気が悪化しようが「インフレ」が続く限り世界規模での "ツケ" の付け回しは続く。そう言う意味では「利上げ」は不可避であり、日本も例外ではない。WTI(NY原油先物)が@70ドルを割り込んだのは産油国にも請求書が回った証拠で、「お金」を巡って「別の戦争」が繰り広げられている。
ここはウォール街のように見当違いの「利下げ」を期待するのではなく、あくまで「インフレ」対策を徹底するのが正解。その結果としての株価でありFXでもある。その点は銀行主導の国債相場に惑わされないようにしたい。