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「関税」は「増税」? - 「小さ過ぎる政府」からの転換を図るアメリカ

 これも 「トランプ2.0」の衝撃|損切丸 の一環なのだろう。1月の米PPIが高め(年率+3.5%)だったがヘルスケア関連や航空運賃などサービス部門で価格低下が見られた事を材料に米国債は買われドルが売られた。もっともこれも ”為にする理屈” に過ぎず、当面の「利上げ」が遠のいた程度

 やはりマーケットの焦点は「関税」

 一気に▼4円も「円安」に飛んだ「ドル円」も今度は+2円「円高」。まさに "逆噴射" に次ぐ "逆噴射" 「ウォール街」やヘッジファンド(HF)など大手のトレーダーも 安易に 「円キャリートレード」への回帰? - 「オプションの売り」より安心・確実|損切丸 とはいかず、ここ数年のようにコアなポジションをべったり ”ガチホ” とはいかなくなっている。暫く "受難の時" が続きそうだ

  "受難の時" が続くのは「新NISA」など日本の個人投資家も同じ。さあどうする?「ドル建資産」 - 「金利」が上がれば通貨が買われるとは限らない|損切丸 せっかく米国株が反発しても今度は「ドル安(円高)」。2025年に入ってなかなか運用成績が上がらずジリジリしている人も多そう

 ここで一つ違った視点を「関税」に加えてみよう。これ、実は米国政府による「増税」ではないのか

 共和党は伝統的に「小さな政府」路線と言われ、基本的に経済は民間に任せるのが基本。だが「コロナ後」の極端な「人手不足」を端緒に「人件費」は上がり放題になっており「インフレ」がなかなか収まらない人材マーケットが流動化しているアメリカでは賃金を上げなければバンバン退職されてしまう。現状のような「人手不足」状態では「人件費」上昇は不可避。平たく言えば「インフレスパイラル」に陥っている

 まさに社会保険料を含む「大増税路線」の日本の "逆の極" だが、今のアメリカに本来必要なのは「利上げ」ではなく「増税」「関税」は米消費者に負担を強いるため「消費税増税」と同じ効果をもたらす。同時に政府の税収を増やし、4%超の米国債利払いに苦しむ財政にも寄与する

 今のところ「関税」は交渉のための "脅し" の道具と捉える向きが圧倒的だが、大統領を含め経済ブレーンは「小さ過ぎる政府」からの転換を図っている節もある「インフレ」に対する影響も「消費税増税」と捉えれば見方が違ってくる。1期目もそうだったがこと「お金」に対するセンスは鋭い所がある。それも含めて「関税は素晴らしい!」なら大したもの

 もっとも ”消費大国” アメリカで忌み嫌われるのが「増税」であり、ナスダックやS&Pの頭が重いのはそのせいだろう。ただ民間任せのままだと「インフレスパイラル」の収集がつかないので、ここで政府が関与するのは理にかなっている。おそらくあの国では「利上げ」より有効だろう

 一方「大き過ぎる政府」の日本毎年税▼80兆円+社会保険料▼80兆円≓▼160兆円も "お上" に召し上げられては堪らない。しかもその使い道が一部の既得権益に集中していることがばれてしまい、ついに「少数与党」という政治的状況が作り出された。「103万円の壁」や一部野党が言い出した*社会保険料減額、e.g., 年間▼6万円、はその流れの中で起きている

 *風邪薬や湿布薬など民間の薬屋で代替できるものは健康保険の対象から外す、とぶち上げたら早速I師会が反対の声。それにすがって生きている町医者が多いことの裏返しでもあろう。ただもうこの国の消費者は一部の既得権益の面倒を見る余裕などない

 実は日銀による「利上げ」もこの一環1,100兆円余もある「預金」に+1%の利息がつけばそれだけで+10兆円もの「お金」が預金者に渡る。これは「178万円の壁」より大きな一種の ”恒久減税” であり、その分「国」は国債の利払いが増えるばらまける「お金」が減る政治家の先生方(特に与党)が嫌がっているが、この流れに逆らえば次の選挙での落選が見えている

 アメリカの「関税」日本の「利上げ」もネットやSNSでは不満の声に満ちているが、「大きな政府」と「小さな政府」- どちらの ”ポリシーミックス” を選ぶのか|損切丸 的視点で見れば両国とも方向性は間違っていない政府のトップレベルでは我々が思うより合理的な決定がなされているということだろう。「円安」が大問題の日本で「利上げ」+「減税」のポリシーミックスは理にかなっている。あとはそれに伴う公共サービスの減少、特に医療の部分をどう説得・納得できるか

 一見 "逆噴射" ばかりに見える荒っぽいマーケットでも、実は合理性を持って進められている政策があることに目を向けるべき。**気がかりなのは不合理な「利下げ」に突っ走りそうな "身勝手" なヨーロッパだが、今後も予断を持たずマーケットに対峙していきたい

 **今年に入って絶好調なのが独DAX指数(年初来+13.6%)。これはECBが「利下げ」継続を謳っているからで、まさに「金融相場」EVで自動車産業がコケたドイツにしてみれば、対トヨタ戦略上も「ユーロ安」に誘導したいのだろう。しかしEVクリーンディーゼルもそうだったように、こういう自分勝手な戦略はまず上手くいかない

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