
「ドル」の威力。 ー 「利上げ」の影響を「お金」の面から切り取ってみる。
さてここでFRBによる「利上げ」の影響を日米欧だけではなく、他国、特にデフォルトリスクが高まっている諸国から眺めてみよう。
まずは連日「ウクライナ危機」でメディアを賑わしている「ロシア」。国境付近に10万人を超える大部隊を展開し、軍事面だけを強調した記事を見るといかにも「ロシア有利」と捉えがちだが、「お金」の面から切り取ってみると実は ”逆” であることが透けて見える。
「ロシア」も実はアメリカの「利上げ」の影響が顕著。他の財務基盤の弱い国々同様、「通貨安」「インフレ」に苦しんでおり、この軍事行動の裏側には国内経済の疲弊と大統領の支持率低下が深く関係している。ドル/ルーブルは史上最高値(ルーブルは最安値)の@80.00に接近 ↓ しており、国内消費者の切迫感は高いと推察される。「お金」は正直である。

そこへ今回の「ウクライナ危機」で ”SWIFTからの排除” ≓ドル決済からの除外を宣告され、CDSのリスクプレミアムが急上昇(標題添付)。5年CDSではブラジルを上回り、トルコを追う状況に ↓ 。「お金」の面で追い込まれているのはアメリカでもNATOでもなく、実は「ロシア」である。

いくらガス資源を豊富に持っていても、「お金」の受け渡しが出来なければどうにもならない。アメリカがカタールや日中韓に欧州への天然ガスの融通を求めているのはその伏線だろう。さしづめ「ロシアの経済封鎖」だ。強気を装ってはいるが、プーチン大統領が半ば青ざめているのはそのせい。
”イラク戦争(2003~2011)以降、大規模な「戦争」が10年余り起きていない。アメリカの根幹を成す「軍需産業」は、ここらで ”在庫一掃セール” をしたくてうずうずしているはず”
”バイデンフレーション” の衝撃。|損切丸|note でこういう書き方をした。 ”陰謀論” を喧伝するつもりはないが(苦笑)、「軍需産業」がアメリカ経済、引いては大統領選挙に甚大な影響力を持つのは厳然たる事実。
物事には二面性があるが、「お金」は表に出ない "FACT" を写す "鏡" であり、そこに「真実」が潜んでいたりする。「真珠湾」の時の日本のようだが、*アメリカが「危機」を意図的に画策している可能性は否定できない。
*「Y2K= "2000年問題" の為のバーゲンセール」。「湾岸戦争」(1990~1991)後に聞いた "きな臭い噂" だ。Y2Kとは、西暦が2000年代に入る時に既存のコンピュータープログラムが誤作動を起こす問題。ミサイル等の軍備品も大量に使えなくなるため、わざわざ戦争を起こして「在庫一掃」を図ったという。真偽は確かめようもないが、 "ありそうな話" ではある。
さてその他の「高デフォルトリスク国」を見てみよう。まずはトルコ。
「インフレを低下させるために ”利下げ” を行う」
経済学者が聞いたらひっくり返りそうになる発言を平然と言ってのけるエルドアン大統領。これが本当ならFRBもロシア中銀もガンガン「利下げ」すればいいことになる。まさに「ノーベル経済学賞」級の大発見(笑)。ただ「トルコリラ安」も一度行くところまで行っているので "Made in Turkey" も増えている模様。これ以上の極端な通貨安は当面見通しにくい。

一方CDSプレミアムの高止まり ↓ が示すように、このままの政策運営だと事態が改善していく見通しも立ちにくい。ちなみに今日(2/3)発表になった12月CPIは何と+48.69%! 依然デフォルトリスクは高いままだ。

トルコとは対照的に政策運営が上手くいっているのがブラジル。昨日(2/2)ほぼ予想通り+1.5%「利上げ」(9.25% → 10.75%)を行ったが、出尽くし感もあり、10年国債金利は@11.08%に低下。CPIも+10.06%(←11月+10.74%)で落ち着いている。「実質金利」も相対的に高く、ブラジルレアルも安定推移に移行。5年CDSも遂にロシアを下回った。



ただ一つ気掛かりなのは「覇権国家」アメリカにかつてのような「力」が無いこと。現在もFRBメンバーの「 "利上げ" 急ぎません」発言の連発で株の買い戻し等表面的には安定しているが、これはまさに ”諸刃の剣” 。
言うまでも無くデフォルトに直面するベネズエラ、レバノン、トルコ、ロシア等の最大の問題は、「インフレ」。それなのに「 "利上げ" 急ぎません」≓「インフレ抑制急ぎません」であり、意地悪に言えば「インフレになっても知らん」という事。問題の解決は到底見通せない。
ただ、アメリカが「利上げ」を急ぐと今度は「通貨安」「ドル建債務」が火を噴く。願わくば Forward Looking (先見的)に最小限の「利上げ」で「インフレ」を抑えられれば良かったのだが、これだけ火事=「インフレ」が広がってしまうともう手遅れ。自国のことで精一杯のアメリカは、”消防隊” を他国に派遣する余力は無い。
と、まあ「利上げ」の周辺事態を総括してみたが、皆さんにはどう映っただろうか。「金利」やCDS等マーケットの "数値" を追ってみると案外「お金」の「真実」が見えてくる。メディアや政府の発表だけでなく、一度立ち止まってみるのも面白い。2022年はまだまだ紆余曲折ありそうだ。