マーケットでは必ず「逆」をする奴が出て来る － 結局この世は「ゼロサムゲーム」
「は～…。」
思わず溜息が漏れる。やっと日経平均が＠39,000円台を回復したと思ったのも束の間、ドル円が153.60台に売られるのに連れて38,600円台まで急落。最近ずっとマーケットを見ているが、おそらくアジア時間限定でドル円と日経平均先物を連動させたAIトレードが動いている。そこにPERとか投資尺度の介入余地はない。それだけ東京市場の ”リアルマネー” の壁｜損切丸 が薄い証拠でもあるが、今のところHFT（高頻度取引）を走らせれば儲かるということなのだろう
だがマーケットでは必ず「逆」をする奴が出て来る
そもそも日本が「輸出立国」から「内需主導型経済」に移行したことで「円安」→「日経平均高」の法則は崩れている。だから「ドル円」と「日経平均先物」の売買が連動するのは必ずしも正しくない。「通貨価値」の観点から見ればむしろ「円高」→「日本株高」の方が合理的。ただこれは過去の経験則から市場参加者に染みついた慣習が抜けないだけ。その内 ”法則” は崩れてくるだろう
「AI」が支配するマーケットではそれが「全能」と思われがちだが筆者はそうは思わない。 続・AI vs 生身の人間 － 「風が吹けば桶屋が儲かる」がAIの弱点？｜損切丸 で書いたことがあるが、過去の膨大なデータを処理する能力では「人」を遙かに凌駕する「AI」だが、一見関係なさそうに思える事柄を新たに結びつける能力はない。つまり「ドル円」と「日経平均」は過去のデータを元に「AI」が連関づけているだけで、今後起る「変化」には対応出来ない。その点はプログラマーの腕 ≓「人」の力による
欧米では定着している「インフレの株買い」が "壁" になりうるが、未だに「現預金」に固執する日本人は ”株の戻り売り” が "壁" になっている。確かに3度も＠40,000円を試して抜ききれなかったために売り圧力は強い。現状では「新NISA」等の買いを上回っていそうだ
こういう状況だからこそ「ドル円」「日経平均（先物）」の連動プログラムが機能する訳だが、逆に一定量の「売り」を捌けばその後 "壁" はなくなる≓「変化」が訪れる。ポイントは「インフレ」が定着するかどうか
鍵はやはり「円金利」≓日銀による「利上げ」になるだろう
CPIが＠2％台の今、＠2％以下の政策金利では「インフレ」抑制効果は薄い。つまり物価上昇に合わせた株価上昇 ≓ 通貨価値の下落基調は続くことになる。JGB（日本国債）市場を見ると向こう2年間日銀の政策金利は＠1％さえ超えない。これで「またデフレに戻る」という主張は合理的でない
更に「低金利」はFXで過剰な「円キャリートレード」を生んでおり、現状の「円安」は ”かなり膨らんでいる” 。そんな異常値の「ドル円」を基準に「日経平均」を取引するAIプログラムはいずれ機能しなくなる。 ”金の切れ目が縁の切れ目” 。儲からなくなれば淘汰されるのはマーケットの常だ
”H興行のドル円売りだ！！！”
筆者がディーリングルームに入りたての頃、良くFXエリアからこういう怒号が飛んできた。当時ドル円で連戦連勝していた ”H興行” は大きな金額で仕掛けてくるので、みんな儲けようと同じ方向に傾く。マーケット創生期でいわゆる「パワーディール」が有効だった時代の話だ
だがそういう＊「相乗り」トレードは長くは続かない。10人の内8～9人が一斉に「ドル円」売り（あるいは買い）に傾けば、後は逆取引するトレーダーばかり。 ”猿まねトレード” は損するケースが増え、徐々に ”H興行” は「逆指標」化、彼らが買えば売り、売れば買いが市場の定石に「変化」する
＊Bank of England（英国中銀）を打ち負かしたソロスファンドも、その後不調が伝えられると「逆指標」となり、段々手口を隠すようになった。1998年に破綻したLTCM（ロングターム・マネージメント）の時は「ドル円」を買う「円キャリートレード」を模したコピーファンドを投資銀行が争って創ったが、ロシアのデフォルトに端を発した破綻で大火傷を負った
SNSが隆盛の今、情報の伝達速度は格段に上がっており「変化」も速い。「相乗り」もいいが下手に乗りそびれるとただ「損切り」して終わり、になりかねない。結局「先を読む力」が勝敗を左右することになり、それは「AI」が苦手とする分野でもある。特に「経験則」が崩れる「変化」は「人」が読むしかない。「AI」はデータを蓄積して分析する非常に有用な ”道具” だが、割り切って”使う”ようにしないと肝心な場面で見誤る
結局マーケットは「ゼロサムゲーム」。ジャングルの "縄張り争い" と根本的には同じだ。今話題の「103万円の壁」も庶民と財務省の "縄張り争い" と捉えれば分かり易かろう。要は毟られる側にならない事。それに尽きる