日本国債(JGB)入札の異変。ー ”禍転じて福と成す” 精神が肝要。
「損切丸」が現場から引退して7年。note. を書きながら専門だった日本国債(JGB)の金利動向をずっと追って来たが、最近 ”変化” に気付いた。
国内の銀行・証券は「日本相互証券」が提供する取引端末(通称BB端末)を使ってJGB売買を行うが、これを忠実に現すのが Bloomberg 。一方海外の "意向" を示す取引画面として筆者は Investing.com を参照。これまで常に海外>国内の状況が続いてきたが、今回逆転するのを初めて見た。
国内主導のBBスクリーンには "ラスボス" としての日銀・財務省に対する巨大な忖度が反映する。いわば "日本金融村” の総本山。
一方ファンドやウォール街など海外勢が示すJGBの金利水準はいつも高め。理論値に照らせば国内の円金利は不当に低いからだ。
だから筆者が現役中も海外トレーダーの関心は常に「いつJGBを売るか」。だがその試みは日本勢の分厚い「お金」の壁に跳ね返され、円金利市場で "売り" (金利上昇)で勝った場面をほとんど見た事が無い。まあそれだけ「お金余り」が激しかった訳で、極め付けは「XXバズーカ」だろう。
そんな中、最近の日本国債(JGB)入札には異変が起きつつある。
標題グラフ ↑ にも貼ったが、2年債入札と言えば ”キャッシュ潰し” の奪い合いが常。2010年代には応札倍率が10倍を超えていたが、4倍を割り込んで3倍そこそこに下がってくるとは*「お金余り」も終了に向かいつつある証。一時100倍を超えていた3、6ヶ月の短期国債(TB)も同様だ。
(参照)遂に始まる「実質マイナス金利預金」。|損切丸 (note.com)
もっとショッキングだったのが8/17の20年国債入。テールが96銭と1987年12月以来の水準に拡大して需要の弱さを露呈した。
一体何が起きているのか。
20~40年の超長期債は生損保の主戦場。銀行・証券のマーケットメイカーはその辺の需要を計りながら金利提示をするが腰が引けている=金利提示が高い。おそらく生損保の買い意欲が極端に引っ込んでいるためだろう。
推定できる展開としては:
これでは腰が引けるのも当然。ただ根っこには「生損保不信」による保険契約の減少があり、長期運用資金の枯渇が起きている。
バブル期の自らの運用失敗を顧客に転嫁するため平成に行った「予定利率引下げ」が発端で、2022年にも再度「引下げ」。金融庁の定義では「顧客保護」を謳っているが、裏を返せば経営破綻のリスクがあるという事。
一般企業や投資ファンドならこのように「損切り」コストを顧客に転嫁など出来ない。一種の「モラルハザード」であり、生損保に「お金」を預ける事が大きなリスクになってしまった。最近のBM問題も根っこは同じ。
だからかつてのようにJGB市場を主導するだけの「お金の余裕」がない。これはJGB市場にも今後冷や酒のようにジワジワと効いてくるだろう。JGBの保有残高を減らしたい日銀にとっても頭の痛い問題だ。
一方「インフレ」で「お金」を削り取られている我々小市民も余計な保険を掛ける余裕はない。このままでは「80歳からの保険」をいくら集めても保険業界はじり貧必至。まずは「信用」を取り戻す事が先決だろう。
ただ日本全体に ”光” がないわけでもない。
悲観論大好きのメディアは「景気後退」の件にしたいようだが、筆者の見方は真逆。米雇用統計等でも良く見られる数字のマジックで、求職者が増えると見た目の数字が悪化する「前向きな雇用統計の悪化」。中味を見ると企業からの新規求人数は依然前月比+0.9パーセントと伸びているが、求職者数が+2.9%も増えている。これは「お給料」等より良い条件の職場を求める人が増えている証で、「インフレ」初期には良くある現象でもある。
「円安」や今起きている海産物の禁輸措置もそうだが、やたらと「大変だ、大変だ」と騒ぐのではなく「どう利用するか」の視点が大事。お隣の大国が勝手にコケてくれているのだから、工場や企業を誘致するとか、ホタテを国内消費に回して価格をお手頃にするとか、どんなピンチにも必ず "抜け道" がある。 ”禍転じて福と成す” 精神が肝要。
それにしてもあれだけ「JGBの金利は低過ぎる!」と吠えていたファンド等海外勢はどうするか、見物である。自分達の理論値より値が下がっている(=金利が高い)JGBを売るのは気が引けるだろうか…。さすが「不思議の国・日本」。彼らにとっては最後まで「謎」のままだ。
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