米国市場の最新動向:マイクロンの決算、米消費者動向に注目
9月25日の米国株式市場では、S&P500指数が0.2%下落し、特にバイオテクノロジー企業アムジェンの株価が5.4%急落しました。アムジェンの株価下落の背景には、2つの新薬の臨床試験で期待外れの結果が出たことが影響しています。この結果、アムジェンの株価は50日移動平均線を下回り、ダウ平均にも影響を与えました。ダウ平均はこれまで4日間続けて上昇していましたが、今回のアムジェンの急落で0.7%の下落を記録し、上昇の勢いが止まりました。
さらに、S&P400中型株指数も1.3%下落し、9月6日以来の大幅な下げを記録しました。これは米国市場全体の低迷を象徴する動きであり、特にエナジー、ヘルスケア、ファイナンシャルセクターが大幅な下げを見せています。一方で、NVIDIAを中心とする半導体セクターは唯一の上昇セクターとなり、好調を維持しています。これにより、S&P500とダウ平均が過去最高値を前に足踏みしている一方で、ナスダックは1万8000の水準を維持しています。これについて、IBDは9月6日以降の市場の急上昇後、正常かつ健全な状態であると分析しています。
原油・金価格の動向と米国債利回りの上昇
コモディティ市場では、金先物価格が2680ドル付近で推移し、過去最高値付近での小幅な上昇を見せています。これに対し、米原油価格は2.6%下落し、1バレル69ドルに戻りました。前日の上昇分を帳消しにする形となった原油価格の下落は、エネルギーセクター全体の低迷を象徴するものとなっています。
一方、米国10年債利回りは4.5ベーシスポイント上昇し、3.718%となりました。これは市場全体の金利上昇圧力を示しており、インフレや連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に対する市場の懸念が引き続き存在することを示しています。
9月の市場動向と年末に向けた見通し
9月は歴史的にS&P500指数が平均0.7%下落する月として知られていますが、今年は今のところ1.3%の上昇を見せています。ナスダックも2.1%の上昇を維持しており、市場全体のパフォーマンスは強いままです。LPLファイナンシャルのアダム氏は、2024年の残りの期間も市場の勢いが続くと予想しています。彼のレポートによると、過去75年間においてS&P500指数が最初の3四半期で勢いがあった年は、年末までの3ヶ月間で下落することが非常に稀であり、下落したのはわずか8回に過ぎないと述べています。特に、最初の9ヶ月間で16.4%を超えるリターンが達成された場合、第4四半期のS&P500指数が80%の確率で上昇しているとのことです。
また、S&P500指数が9月に最高値を更新した場合、91.3%の確率で第4四半期も上昇するというデータがあり、10月から12月の平均リターンは4.8%に達しています。このように、現在の市場の勢いが年末まで続く可能性が高いことが予想されています。
個別銘柄の動向:NVIDIAとメタの成長、スマートグラスの展望
注目の個別銘柄では、NVIDIAが2.2%上昇し、メタも0.99%上昇しました。メタは新たなスマートグラス「レイバンメタ」を発表し、そのスマートグラスに搭載予定のAI機能をCEOのマーク・ザッカーバーグが披露しました。このAI機能は、外国語を話す相手と会話をする際に自動的に翻訳を行う機能や、駐車場の番号を記憶させることができるといったもので、非常に革新的なものです。
しかし、ザッカーバーグはこれまでもAI機能を強調していましたが、実際の製品でその機能が期待通りに動作するかどうかは未知数です。また、メタは499ドルの「クエスト3」に加え、299ドルの「クエスト3S」を発表し、これまでのゲーム用デバイスとしてのイメージを刷新し、仮想ワークプレイスとしての利用を強調しています。
自動車業界と発電事業者の動向
自動車業界では、モルガン・スタンレーのアナリストによる弱気な見解を受け、GMとフォードの株価がそれぞれ4.9%、4.1%下落しました。アナリストは、中国市場での競争が激化していることを理由に挙げており、中国の自動車生産能力が欧米市場に大きな影響を与えると警告しています。
一方、発電事業者であるビストラは5.9%の上昇を見せ、ジェフリーズとモルガン・スタンレーが目標株価を引き上げたことが背景にあります。ビストラは、NVIDIAを含むS&P500指数銘柄の中で最も株価が上昇している企業であり、今後もエネルギー業界の動向に注目が集まります。
マイクロンの好決算とチップ業界全体への影響
半導体業界では、メモリチップ大手のマイクロンが好決算を発表し、市場全体に好影響を与えました。マイクロンの第4四半期の売上高は予想を上回る7.75ビリオンドル、EPSも予想の1.12ドルを超える1.18ドルを記録しました。また、メモリチップの需要が引き続き好調であることを受け、第一四半期のガイダンスも上方修正しました。これにより、マイクロンの株価は取引終了後に14%以上の急上昇を見せ、半導体関連銘柄全体にもプラスの影響を与えました。
特にメモリ関連銘柄のウェスタンデジタルは時間外取引で6%、アプライドマテリアルズやラムリサーチも4%以上上昇しています。マイクロンは、PC、データセンター、スマートフォンなど幅広い業界にメモリチップを供給しており、同社の業績は半導体業界全体の指標と見なされています。マイクロンの好決算により、業界全体にポジティブなムードが広がっています。
消費者動向:インフレと負債が消費に与える影響
米国の消費者動向を見ると、依然としてインフレが大きな問題となっており、特に食料品やエネルギー価格の上昇が家計に影響を与えています。2022年にはインフレ率が9.1%に達し、旅行費用や住宅ローンの負担が増えたことで、消費者の生活が圧迫されています。マクドナルドやスターバックスは、価格に敏感な消費者に対応するため、割引メニューを提供するなど、消費者の節約志向が強まっていることがうかがえます。
さらに、アメリカ人の負債総額は17兆ドルを超え、住宅ローン、クレジットカード、学生ローンなどの支払いが滞り始めていることが報告されています。オンラインでの後払いサービス「バイ・ナウ・ペイ・レイター」も普及し、これによる消費者の借金が増加傾向にあります。この負債の増加は、アメリカ経済全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
アメリカ経済は消費に大きく依存しており、GDPの約70%を消費が占めています。今後、労働市場の鈍化や景気後退が懸念される中で、消費者動向を注視することが重要です。