列島考古学 旧石器時代における細石器の特徴とその製作上の効率性
(約800文字・購読時間1分00秒)
細石器とは、打製石器の一種で、小型かつ刃の特徴を持つ石器である。日本国内では一般的には旧石器時代後期に分類される。木や骨角の軸に数個はめこんで、ナイフ・槍・鎌として用いた。日本列島の旧石器時代の最終に現れたのが、この細石器を使った細石刃文化である。本州でこの文化のもっとも古い年代は静岡県休場遺跡の14,300年前で、終末は12,000年前にむかえた。北海道では約2万年前といわれている。この文化の存続期間は短かった。縄文時代の草創期まで存続した可能性が高い。この細石刃文化期の遺跡は、全国で500個所を超え、特に遺跡密度が高いのは北海道と九州で、近畿地方では遺跡数が極端に少ない。石材は黒曜石、砂岩、チャート、流紋岩、ガラス質安山岩、硬質頁岩など、その地域で利用できる岩石が用いられた。
この文化は、細石刃核の形態や製作技術に地域的な変化が顕著であり、それが特徴である。 北海道の細石刃核は、湧別技法として知られる白滝型・札骨型・峠下型・蘭越型、忍路子型、幌加型、射的山型、紅葉山型などに類別される。この湧別技法やその影響を受けた細石刃剥離技術は、津軽海峡を越えて山形県、新潟県、茨城県など東北地方の北半分まで拡がっている。 白滝型、札滑型と呼ばれる2種類の細石刃核は、原材料の黒曜石などの原石を半月形または木葉形にし、これを両面から加工し 10cmほどの大きさの両面加工の母体を作る。この長軸方向に剥離を加え、平行に平らな面を作り出し、細石刃を剥離するための打撃面を用意する。こうして調整した石核の端に打撃を加え細石刃を剥ぎ取っていく。
一方、西北九州を中心に、福井型と呼ばれる細石刃核が存在する。このほか南九州を中心に畦原型が知られる。 野岳・休場型細石刃核は、関東・中部地方から九州までの広い地域に広がっており、円錐形、半円錐形、角柱状などの形をしている。 また、船野型細石刃核も宮崎平野、大野川流域から近畿南部、東海を経て中部南半分、南関東まで広く分布している。これらは二面の作業面を形成しやすい技法である。
参考文献
・佐々木憲一ほか『はじめて学ぶ考古学』有斐閣、2011年
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?