ゲームクリエイティブについて考える3 セッション 好きを仕事に 宮脇修一×天野喜孝 全3部
(約1700文字・購読時間2分30秒)
第3部 セッション 好きを仕事に 宮脇修一×天野喜孝
宮脇
天野絵を三次元にするプロジェクト。タカラ社がなくなったのでお蔵入り。誰か売ってくれる人はいないか探している(笑)
竹谷隆之という造形師が担当している。彼は3Dアーティストなので、見えないところは膨大な他の天野絵を見て昇華してつくる。
M.I
自身の絵を立体にするときは、それをどう見るか
天野
絵が出来た時に完成なので、立体化する人のセンスにまかせる。竹谷さんは打ち合わせする必要はない。
宮脇
ライセンサーは造形師の作家性を認めずに口を出してくる。
M.I
クライアントのいる仕事と自由にやる仕事について
宮脇
はじめから喧嘩をする気はないが、監修がうるさいと喧嘩をしてプロジェクト自体がなくなることもある。長年フィギュアを物造りメーカーとしてやってきた自信と誇りがあるので、やむを得ない。
仕事をするときは社名と作家名を入れるのが条件。名前を出すフィギュアメーカーは海洋堂ぐらいしかない。作家性を尊重しているからこそ、そうしている。
天野
装丁の依頼は自分のイメージと作家のイメージが少し違うほうが面白い。
宮脇
物をつくる人は謙遜して自分を評価しないが、天野さんは自分では絵を描き説明できる。これは重要なこと。
M.I
現在の活動について
天野
現在の労力は9割が自分のやりたいこと。やっておかないとなあという気持ち。自分の好きなものだからこだわれる。世に出なくてもいい。
普段は物語から絵が生まれるが、逆があっても面白い。
宮脇
フィギュアも造形師の作家力で何かを生み出す突破力がある。自分はこれが良いと思うが、あんたはどうだ!という提案型の仕事をしている。
天野
年齢を重ねても創作意欲が衰えない。常にやりきっていない感じがある。まだ足掻いている。他に趣味はなく、食べることぐらい。仕事は好きではないが絵を描くのが好き。
宮脇
仕事フィギュアの疲れは趣味フュギュアでとる(笑)
宮脇
海洋堂は自分の独裁主義。自分の好きなことをやる。
M.I
日本の産業はアジアなどに押されてはいないか
宮脇
そんなことはない。日本以外のアジアにまともなオリジナルコンテンツは無い。世界に日本のクリエイターが出て行くには、国が後押ししてもなにも生まれない。常に蔑まれてきたのに今さら何だと。
良い物を作る人はごまんといる。その人たちをどうやってビジネスにするかが課題。プロデューサー的な人がやってくれるか、マネジメントしてくれる人が出てきいて欲しい。
M.I
若手のクリエイターへ
天野
ヨーロッパにいったことがあるが自分をつきつめていくことに関して国境を感じない。なにも変わらない。自分の世界を追求してほしい。
むしろ今は情報がたくさんあり、翻弄されてしまうので気をつけて。普通に生活して、そこから生まれたものが自分の作品なのだから。
宮脇
まだまだオタクの業界はきわどい。社会地位は低い。まだまだ戦い続けなければならない。
都の条例 に反対すると漫画家ふぜいがなどといわれる。フィギュアを30年やってきてやっとテレビや美術館などで話せるようになってきた。プラモはなくなったが50年後に残れるようにしないといけない。
M.H所感
喋りたくてしょうがない宮脇氏と芸術的な発言をする天野氏の二人が交互に話して、さらにカオスに。内容は、恐らく誰もが暗に感じていることをズバッと宮脇氏が言ってくれたというところ。天野氏は60を過ぎて創作意欲が衰えないのはすごい。若手に対しては、周りにとらわれずに自らの創作をしてほしい、と。
個性をできるだけ出して描いてもらって、ゲーム内にイラストレーターの名前を出しています。常に得意分野の絵を依頼することにより、ユーザーに認知され、自分はこのイラストレーターが好きだ。自分はこの絵が好きだというふうに、全く無名だったイラストレーターにも一人ひとり違うファンがつくようになりました。宮脇氏の言うように良いものを作る人はたくさんいて、表に出る機会があれば、きちんと評価されるのだと思います。
この産業がさらに発展できるのか、衰退するのかは、二人のようなエネルギーのある若手達がどのくらい出てくるかにかかっていると思います。
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