「考える」ための2つの動作 素材集めと並び替え
「知的生産の技術」は、考えるための「行動」を示しているという点で重要な古典です。
多くの人が影響を受けていると思いますが、私もその1人。
その他の知的生産系の本も読んでいますが、本質は「知的生産の技術」に書かれている2つの動作だと思います。
その2つとは、「素材を集める」ことと、「並び替える」ことです。
「素材を集める」とはどういうことか
「知的生産の技術」では、情報や発見をカードに文章で書き記します。
情報とは、たとえば以下のようなものです。
記事における短い文章
科学実験におけるデータ
美術展覧会における作品
音楽ライブにおける楽曲
技術士論文における業務の棚卸
重要なのは、カード形式であることです。
カード単位で情報が存在するため、後から並び替えることができます。
ノートだと後から並び替えることができないため、「知的生産の技術」の文脈での知的生産には向きません。
もちろん時系列で理解できるなど、ノートにもメリットがあるので、状況次第で使い分けることが重要です。
とにかく、「知的生産の技術」の実践という観点では、小さな単位の情報であることが重要です。
なお文字情報の場合は、単語ではなく文章の方が適しています。
単語では、情報の構成単位としては情報量が少なすぎる。
段落としては少なすぎるけど、意味として伝わる最低限の文章量が必要だと思います。
カードの実態は何でも良い
「知的生産の技術」が書かれた時点では紙のカードが利用されていましたが、現在では何を使っても良いし、いろんな選択肢があります。
デジタルツールを使っても良いし、物理的なカードや付箋を使っても良い。
芸術作品であれば、作品そのものを情報単位としても良いと思います。
とにかく、後から並べ替えることができる情報単位であれば何でも良い。
「並び替える」とは、どういうことか
文章で作成したカードであれば、作った順に並んでいることが普通でしょう。
知的生産においては、このカードを並び替える操作を行います。
記事であれば編集
実験であればデータから相関関係を見出したり、ロジックが通る仮説を立てる
美術展覧会ならキュレーション
音楽ライブならセトリを作る
技術士論文なら骨子作成
並び替えることで、意味が立ち上がる
情報を組み替えることで、新たな意味を見出すことができます。
逆に、情報の並び方がいつも一定だと、新しい発想にたどり着けないと言えるかもしれません。
なので、積極的にカードの順番を変えてみることが重要なのです。
どのように並び替えれば良いのか
情報を並び替える指針はあるのでしょうか。
究極的には、どんな並び方でも良いと言えるでしょう。
情報が並んでいると、そこから論理構造や物語構造を勝手に理解してしまう性質が人間にはあります。
本来意味などない星の並びを、勝手に動物や物の形と理解してしまうのが人間です。
どんな並び方であっても良いのです。
研究論文の型の順
時系列
ランダム
論理構造を意識
問いに対応する形
物語形式
千葉雅也さんの「センスの哲学」では、「センスとは並べること」であると言及しています。
並べ方は自由ですが、並べ方に「こだわり」を持つことは個性だと言えそうです。