学びの数をKPIにしよう
技術士(化学部門)のなおきちです。
私は普段、「学びの数」をKPIとして業務を行っています。
1日1個以上の学びを作り出すことが目標です。
学びの数を重視することで、業務の進捗感を味わうことができます。
また、技術者が持っておくべき観察眼のトレーニングにもなり、おすすめの習慣です。
学びの数をKPIにするとはどういうことか
「学び」とは、業務経験で得られた知識です。
昨日までは知らなかったけど、今日新たに知った知識が「学び」です。
実験的には失敗だったとしても「学び」は存在します。
昨日までは成功すると考えていた方法で、今日の実験の結果、その方法では失敗するとわかれば、それは「学び」です。
また、自分にとっては「学び」としての効用は低かったとしても、チームに共有することでとで、知識として使ってもらえるのであれば、それも「学び」です。
意識さえしていれば、「学び」は毎日、見つけることができます。
新しい反応条件の実験の結果、希望の結果になる/ならないことがわかった。
文献調査の結果、課題に対する解決策となる方法を見つけた。
特定の顧客とのweb会議においては、結論から話すことが重視されるが、別の顧客では前提情報の共有から行うほうが好まれることが分かった。
私は明日の準備をしているときや、帰宅途中に、「今日の学びは何だっただろうか?」と問いかけています。
なぜ学びを重視するのか
研究開発において、業務の成功を重視すると、「進捗感」を得ることができません。
通常、ゴール達成まで時間がかかるためです。
仕事中に突然ひらめきが起きて、良い結果が得られる可能性は、ごくわずかです。
実際の仕事は、
方法Aでは上手くいかない
方法Bでは良い結果になる傾向がある
方法Bを軸に、少しずつ条件を変えてみよう
という風に、少しずつゴールに近づいていきます。
もちろん、研究開発のゴール設定をする際は、途中のマイルストーン設定も行います。
例えば以下のような内容です。
重要中間体への到達
重要反応の収率向上
作業簡略化
しかし、上記の検証だけでも1週間から1ヶ月程度要したりします。
実際には毎日実験をしているため、体感としてあまり進捗していないと(少なくとも私は)感じてしまいます。
そこで、業務を通して得られた知見を蓄えていくことを目標として、仕事を行います。
毎日、学びを削りだしていくことで、前進していることを実感できます。
学びを生み出す習慣
私は業務で得た学びを、仕事帰りに毎日記録しています。
記録するのは、テキストファイルでもExcelでも、紙のノートでも良いと思います。
当日の業務を振り返るための時間を確保することが重要です。
帰宅時間など、毎日発生する時間をきっかけにするのが良いと思います。
また、学びの内容は大きくて抽象的なノウハウよりも、細かくて良いので具体的に記述します。
例えば、有機化学の内容であれば、
後処理時に追加で反応を行うことで、精製が簡便になる
よりも、
Hantzch エステルによる還元の後処理で、加水分解することで、分液で試薬由来の副生成物を除くことができる
と具体的に表現する方が良いでしょう。
具体的で経験であれば、学びを発見することができます。
昨日と今日の差分を発見しようとすることは、実験結果や対人関係での小さな差異を見つけるための観察眼を鍛えるトレーニングにもなります。
「学び」を生み出す習慣は、技術者にとって非常に有用なのです。