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#1 2/2(日)彼女できるかな

「今日はデートやったねん。」

夕飯の準備をしていると、息子がぽつりと報告した。

「あら!そうやったん⁈」

驚きを隠しながらも、できるだけ自然に返事をする。こちらが興奮しすぎると、話してくれなくなる可能性がある。長年の経験で学んだ大事なルールだ。

「ランチして、買い物行って、楽しかった。」

そう言う息子の顔が、なんとも晴れやかだった。

「いいねぇ、どんな子?」

「それは、まだナイショ。」

ちょっと得意げな顔をして、クスッと笑う。

「名前は?」

「彼女になったら教えてあげる。」


少し照れたように言いながら、冷蔵庫のルイボスティーを手に取る。

名前を聞かれるのが恥ずかしいのか、まだ確信が持てない関係なのか。
どちらにせよ、大切に思っている気持ちは伝わってくる。

「そっか。」

それ以上は聞かないでおく。

こうしてデートの報告をしてくれるだけで十分だ。
思えば、小さい頃から彼はなんでも話してくれる子だった。
今日あったこと、学校での出来事、好きなゲームの話。
大人になってもこうして話してくれることが、私にはとても嬉しい。

「楽しかったなら、それが一番だね。」

そう言うと、息子は「うん」と頷いて、浴室へ向かった。

彼の背中を見送りながら、ふと考える。

——いつか、本当に「彼女になったよ」と教えてくれる日が来るのだろうか。

その日が来るのを、楽しみに待つことにしよう。

* * *

23年間、息子との会話を欠かしたことはありませんでした。
小さな日常の積み重ねが、今の関係を作ってくれたのだと思います。

これからも「話す・聞く・育てる」を大切にしながら、子育てのエピソードを書いていきます。
次回もお楽しみに!



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