誰も良くないし誰も悪くないんだって
金持ちが「だから貧乏人はバカなんだ」って揶揄する。貧乏人は「金持ちはカネのことしか」と言い返す。もちろん、不特定多数の間接的なやり取りにすぎないが、それでもクラスターの異なる抽象的な人間同士は傷つけ合おうとする。
金持ちにも、なんだかんだランクがある。億万長者、ヒルズ族、IT起業家、資産家、外資コンサル、日系大手、、、あらゆる金持ちが、年収を軸にしたり、別のポイントを引き合いに出したりして、蔑み合う。顕在的にも、潜在的にも。
金持ちにディスられた年収1000万サラリーマンは不安をひた隠しにして、年収600万ゾーンを嘲笑うし、600万ゾーンは400万前後を舐めているし、400万ゾーンは、非正規雇用やフリーターを蔑むし、さらにはニート、生活保護受給者、犯罪者へと。他者否定のインフレーション。妬み嫉妬社会の日本は、裏返すと蔑み嘲笑社会でもあるよな。地獄の閻魔様もびっくりするだろうなこの地獄具合に。
思うに、全ての人は分断された対岸にいるのではなく、自分の形状の延長線上にいる。発達障害でなくとも不注意や多動的な要素は誰しも持ち合わせているし、うつ病になる人は「自分が鬱になるなんて思いもしなかった」と言うし、殺人の動機はかなり複雑で衝動的で自分にありえないとも言えないことが多い。
問題を個人と個人を切り離しその中に原因を求めてはいけない。あらゆる複雑な要因と多くの人々、その感情の重なりと相互作用という膨大なシステムからにアウトプットが顕在化したものが、あらゆる問題の正体だ。誰か善しも、誰かの悪しも等閑にはできない。善しも悪しも、ぼくらの要素の延長線上に身を潜めている。いつ、どんなきっかけでそいつが顔を出すことになるかは、簡単にはわからない。誰も良くないし、誰も悪くないんだって。
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