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告白しよう。狼だぬきはこれまでの人生において、重大な勘違いをしていた。その勘違いによって、彼は自らを生きづらくさせたし、世界をつまらないものにさせた。 その勘違いとは、「人々は閉じている」という偏屈な認識である。人々は閉じていて、冷たくて、やさしくない。 そのため、彼は有事の際には自分の内側の深いところまで逃げなければならなかった。誰も入れないであろう暗部に身を潜めて、重厚な壁をもって繊細な自分を守らなければならなかった。それが信念だった。 しかし、いま気づいた。