たくさんの涙を流した人は、やっぱり優しい。
今日は、本当に”ただの女将の戯言”です。
ある夜のこと。
時短営業期間なので、20時に店内飲食を閉め、21時半にテイクアウトのラストオーダーを受け、そして22時前に完全閉店。
そのあと、まかないゴハンを作って、それぞれが各テーブルについて(コロナ禍のため、みんな離れてまかないゴハンを食べるという状況になってもう1年以上だが・・・)、そして、食べ始めようとしたときのこと。
ガラガラ
と、店の入り口が開いた。
びっくりして、ドアのほうを見た。すると、裏のおばちゃんが。
ーこれさ、もしよかったら、まかないゴハンでたべてくれない?
薄紫色の袋に入った、練り物だ。
ーうぁーい! おばちゃん、これいただいていいの?
つい、小さな子供みたいに喜んでしまった。練り物が大好きな私。軽くあぶってしょうが醤油でいただくのが、一番好きだ。
ーいいよ、いいよ。食べてよ!。あたしの田舎から送ってきた練り物だから、口に合うかどうか・・・
ーえ?? おばちゃんの田舎から送ってもらったものなのに、もらっちゃっていいの?
一度受け取ったその薄紫の袋を、お返ししようとした私だったが、おばちゃんは、こう言った。
ーいつもいつもさ、閉店後も厨房の灯かりがついててさ、ちょっとのぞくとさ、頑張ってんじゃん。だからさ、これ、食べてよ。
って。
嬉しくて、ついつい、
ーありがとう。それじゃ、みんなで、今からいただくね!!
そう言って、受け取った。裏のおばちゃんは、自分の部屋に戻って行った。
まかないゴハンで食べようと、いったん厨房へもっていき、軽くあぶろうとして、袋をよく見たら・・・・
紫の袋に書いてある文字にドキッとした。目に入ってきた文字。
石巻・・・って。
そう書いてある。
裏のおばちゃんの実家は、あの、石巻だったんだ。
確かあの日。まだおばちゃん、裏に引っ越してきてない。
つまり、あの日のあと、引っ越してきたのか・・・
そこのところは、詳しくは聞いていない。聞くつもりもない。
でも、いっぱいいっぱい涙を流したんだと思う。だから、優しんだ。
裏のおばちゃんにもらったのは、今回の練り物だけじゃない。
店先のお花の一部もそう。
コロナ禍になる前は、友達3人でよくご飯を食べに来てくれてたっけ。
今は、こんな状況だから、来られないのはわかってるのに、帰り際に一言。
ー来たいのに来れないから、ごめんね。
裏のおばちゃん、ずーとずーと、ここで営業してるから、何年も後になってもずーとずーと、ここで営業してるから、だから、その時になるまで元気でいて。
そう伝えようと思ったけど、うまく言葉が出なかった。
ー大丈夫。おばちゃんが来れる日まで、頑張ってるから大丈夫だよ。
それだけ伝えられたから、ま、いっか。
このコロナ禍での飲食店営業。世の中からは、悪人扱いにされてるみたいだけど、少なくとも、私の周りやお客様は、みーんなみーんな味方。
きっと、みんなが優しいのは、みんなたくさんの涙を流してきたからなんだろうな。
最近、優しい人にであると、泣けてきます。
たわいのない女将の戯言でした。