⑥イベント出店をする
実店舗をもたないお菓子屋にとって次に考えられる販売方法は「イベント出店」ではないでしょうか。わたしは車の免許は持っていますが(しかもマニュアルで)教習所の適性検査で「判断力マイナスE」を叩き出し、卒業するとき教官に「二見さんにはほんとはあげたくないんだけど…(超小声)」と言わしめた実力の持ち主です。路上でも駐車場でも山奥でも事故を起こし運転免許は封印しました。だれかを怪我させたりという事故でなかったことは不幸中の幸いでした。そのような事情ですから出店者みずから什器を持ち込む必要があったり公共の交通機関ではアクセスしづらいような場所にあるイベントには参加することはできません。そんなとき住んでいる朝霞市でストリートテラスという大きなイベントが初開催されることが決まりました。本来なら実店舗があるわけでもなく知名度もないオカメサブレが出店することは難しかったでしょうがCHIENOWA BOOK STOREさんのご厚意でブースの半分をオカメサブレと共有してくださることになりました。はじめての対面販売の機会でしたが当時わたしは幼稚園で働いていたので朝早くから定時まで仕事をした後、朝方までかけてオカメサブレを100枚焼きました。当時の製造能力を考えるとそうとう頑張ったと思います。ほぼ徹夜で設営に向かうとき朝日が眩しくつぶつぶになってわたしの目のまわりをちらちら飛んでいるのが見えました。その場で調理するわけではないのですがいつものエプロンをしていきました。そのとき自分はお客さまにわくわくしてもらうための演出をわりと考えるタイプなのだと分かりました。信じられないことですがオカメサブレは飛ぶように売れていき最終的には完売しました。オンラインストアで購入したことがあるという方が会いに来てくれたり、はじめてお会いするお客さまがすごく気に入ってくれてその後もずっとお買い物してくれていたり、中学生のグループがオカメサブレかわいい!と喜んで買って食べてくれたりするのも地元のイベントらしく楽しかったです。コロナで対面イベントが壊滅状態になったあとようやく復活してきたころのことでしたから出店者にも来場者にも主催者にも同じ喜びがあったと思います。わたしは人見知りではないし、いつも同じように楽しく喋れる方なので対面販売はすごく楽しかったです。そしてオカメサブレを売るのがこんなに楽しいのはこれをわたしがほんとにいしょけんめい作っているからだということも気づいていました。わたしは異様なのめり込みかたをしていきながら、なにかすごく正常な道を歩いているなという気持ちがしていました。オカメサブレを売り切って、別の場所で出店されていたTalking Bookの片山さん、お誘いくださったCHIENOWA BOOK STOREの塩澤さんと打ち上げをして楽しい夜でした。お金が儲かって喜んでるのもあったけど、それだけじゃなくてもっと大事なことを私は喜びました。