二見さわや歌

KIBI'S BAKE SHOP/株式会社キビズ 代表 オカメサブレという鳥の形をした焼き菓子を作って売ることがわたしの仕事です オンラインストア : kibisbakeshop.com

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マガジン

  • オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記 2

    株式会社キビズの第4期だよ

  • オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記

    人生においてなにかがうまくいったことのひとつもないわたしが自分で作ったものを自分で売って生きていくと決めるまでと、はじめてからほんとうに考えたことだけを書きました。全50話と特別編を書けたので連載は終了しました。

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ごあいさつ

 はじめましてKIBI'S BAKE SHOP(キビズベイクショップと読みます)の二見さわや歌と申します。  オカメインコの形をした焼き菓子「オカメサブレ」専門店として2020年4月にネットショップを始めました。実店舗ではなくネットショップから始めた理由は当時就業中であったこと(今は違います)とコロナウィルスの影響です。  新型コロナウィルスが現れてから私たちの生活はいろいろなことが変わりました。会いたい人に会いに行くこともためらうようになりました。そんな中、オンラインショッ

    • ⑦お墓がほしい

       ひと月くらいまえからお墓が欲しいと思うようになり、海の見える墓地を見学に行きました。雨のなか東京から3時間かけて車で出かけました。早く死にたい訳ではないのですが家はずいぶんまえに買ったし次はお墓かなとふと思いついてそれが消えずどうもそうらしいなと思うようになったからです。車で到着すると社員さんが出迎えてくれてゴルフカートに乗せて広い墓地を案内してくれます。トクトクに乗ってアンコール・ワットに行ったときみたいだ、と思いました。食事するときトクトクドライバーを待たせておくのがど

      • ⑥さんとななかいき

         私の両親はすでに亡くなっていて父は私がお菓子屋になったことを知らず母は店ができたことを知りません。とうぜん実家ももうありません。家が安心できる場所であったという経験は私にはないです。驚かれそうですが私にとってはそうでないことの方が驚きです。それが私の現実で、それを私がどう忘れようと自由です。自分にはどこにも帰る場所がないということはよく思います。母の死は、次は自分の番だという消えない思いを私に植え付けました。何をしていてもどこかでそのことを意識しています。死にたいと思ったこ

        • ⑤ 恢復期

           帰り道、酔芙蓉がやわらかな花弁をうすピンクに染めて咲いています。少しすぼんだ花たちが風に吹かれてひらひら揺れ、夜空には満月より少し欠けた月が光っています。私は半月休んでいた仕事を少しずつ再開しているところです。頸椎椎間板ヘルニアになり首から右腕にかけて激痛があるためしばらく休みます、と周りの人には伝えていました。それは間違いではありませんでしたが激痛に耐えながらどこかで仕事をしなくて良い正当な理由があることに安堵もしていました。働きすぎの結果ボロボロになったのは体だけではな

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        マガジン

        • オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記 2
          7本
        • オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記
          53本
        • 寄稿
          1本

        記事

          ④栗の季節

          ひとつのスケッチブックにすべてを書き残しています。メモ帳だと捨ててしまうしパソコンのなかもぐちゃぐちゃだからです。手書きで自分以外の人には何が書いてあるかわからない文字や図を書き記していますが秩序があるとしたら時間の経過とともにページが進んでいくことです。めくっていくと季節が移ろいゆきます。レモン、杏、オレンジ、ブルーベリー、りんご、そして栗。今年も飯田さんから栗を仕入れてきました。さてどうしたものかと思うところですが2023年のノートを見ると「冷凍できる。出しっぱなしがいち

          ③痛みをとる

          椎間板ヘルニアの痛みをとりたくてペインクリニックに行きました。痛みを取ってくれる専門の病院です。麻酔科の先生に首のところに注射を打ってもらい30分安静が必要なのでベッドに横になります。うとうとしてると先生が看護士さんに「うちは注射針の発注数が他の病院とは桁が違うからね」と言っているのが聞こえました。針や薬の品不足で仕入れが大変なようでした。仕入れ、原価、客単価、そういう考えでここも経営してるのかもしれない。痛みで忘れていたが急に店のことが気になりました。注射の後は瞼が重くなり

          ②ボロボロのひとへ

           株式会社キビズの第4期は店の臨時休業から始まりました。9月半ばから頚椎椎間板ヘルニアの激痛が続いているからです。痛いことにはもうほんとうに飽き飽きしているのですが、まだ良くなりません。背中に私のことを心底憎んでいる小人が住んでいてぐさりと刃物を突き刺しているような痛みがずっとあります。首のヘルニアは神経の関係で片方の上肢にきます。右腕が使えないというのはお菓子屋にとって結構な致命傷です。仕込みは2週間ストップ、オカメサブレもいつもの4分の1くらいしか焼けませんでした。「腕が

          ②ボロボロのひとへ

          ①オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記 Season2

           2024年10月1日で株式会社キビズは第4期をむかえました。いつもお菓子を買ってくださるみなさまがいなかったらここまで続けることはできませんでした。本当にありがとうございます。今期の目標は「職人さんを育てる」「フードロスゼロ」「売上20%増」です。心も身体もボロボロだった第3期の終わり「じゅうぶんがんばったからもうやめてもいいよ」と自分に言いかけました。辞めるということはもう自分でお菓子を作らなくなるということ、それなら職人さんを育てることを試してみてからで良いんじゃないか

          ①オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記 Season2

          特別編 「2023年の夏休み」

           「2023年の夏休み」という文章が「オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記」を書いてる途中で出来ました。もし読んでみたい方かいらっしゃいましたら下記のリンクより100円でご購入いただきますとPDFファイルがダウンロードできます。(ここで終わりで購入しなくても大丈夫です)「㉛きえたもの」のあと「㊻ひとつき休む」にあるように、ひと月店を休みました。そのときの話がもとになっていはいますが自分の話なのかというとそうではない気もします。マガジン外の「寄稿」という記事にある

          特別編 「2023年の夏休み」

          ㊿ゴーイング・オカメサブレ

           ここまでお読みいただいて本当にありがとうございます。特別編がありますが、あとがきは書きませんのでこれが最終話です。ゴーイング・コンサーンといって会社というのはずっと続いていくのが大前提という考え方があるそうです。であるからこそ資金も調達できるし赤字の年度があってもいいということなのでしょうか。株式会社キビズがはたしてそうなのかどうか分かりません。わたしのために作った仕事ですから、これを誰かに引き継いでも意味があるといまのところ思えず、それよりはその人にとってのオカメサブレを

          ㊿ゴーイング・オカメサブレ

          ㊾「オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記」の効果

           日記自身がみずからの効果を語りだすのもおかしなことですが、これを書き始めてから数日でお店に来るお客様やお問い合わせの内容に変化を感じるようになりました。SNSのスピード感が苦手になってきたこともありとくに宣伝などもしないで書き始めましたが2日で10話書くほどのハイペースでした。もともと私には自分の考えを人に知ってほしいという気持ちがあまりというかほとんどありません。ですので今回は完全に自分のためにやりました。コメントを受付けない設定にするためだけにnote有料版を使いました

          ㊾「オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記」の効果

          ㊽孤独と自由

           このふたつが関係してるという話ではないです。「オカメサブレをみんなが知ってるお菓子にするまで日記」は50話で終わると途中で決めたのですが㊾と㊿はもう書いてあるのでこれが最後に書く章です。書き残した気がしたものを並べただけです。  先日ある農家さんから「仕事をしていて孤独だと思うことが多い」という話を聞きました。私もけっこうひとりで黙々となにかしてる時間が長いかもなと思いました。でもずっとそうだった気もするから今がとくべつ孤独だとは思ってないと言う話をしました。じっさい、ひ

          ㊼ひさしぶりのイベント出店

           店舗がない頃は月に2〜3回イベント出店をしていました(「㉑売上のためにその2」参照)が、店舗ができてからは忙しすぎて余裕がなくなりどのイベントにも出店することがなくなりました。もうイベント参加は難しいだろうなと思っていたとき機械書房の岸波龍さん主催のスピードスターブックフェスにキッチン担当としてお誘いいただきました。すこし自信がなく迷いましたが参加することにしたのが2024年5月でした。岸波さんに「8月か9月どちらがいいですか?」と聞かれて「8月が夏!って感じで良いと思いま

          ㊼ひさしぶりのイベント出店

          ㊻ひとつき休む

           「㉛きえたもの」のころに時間が遡りますが季節が夏になり8月に入ったところでお客様から「夏休みはいつですか?」と聞かれることが増えました。夏休みどころか休みという考えが消え去っていたのではじめはきょとんとしてしまいましたがだんだんそうか休んでも良いのかと思いました。作ったお菓子がたくさん売れて仕事がほんとうに楽しかったころですが毎週のように終電を逃し自転車で1時間かけて帰っていたのでヘトヘトではありましたし、お店を開けているときは全力をだしてしまうので適度にやるということがで

          ㊻ひとつき休む

          ㊹休みたくない理由

           2023年11月ごろからいままでにない体調の変化を感じるようになってきました。頭の中でやらないといけないことが次から次へと湯水のように浮かんでくるのですがどれからやったらいいのかさっぱりわからなくなり体が止まってしまうようになりました。ほんとうにわからなくて、たったひとつのこと(バターを発注するとか)をするのにも、ものすごく時間がかかるといった感じでした。そしてこんなに忙しいのになんでさぼってしまうんだろうと余計自分を追い込んでたと思います。2023年10月7日以降SNSを

          ㊹休みたくない理由

          ㊺作るものをしぼる

           10種類のお菓子を10個ずつつくるのと1種類のお菓子を100個作るのとどちらがいいでしょうか。どちらの場合も全部売れるとして売上は変わらない場合、ちがうものは材料費と労働力だと思います。10種類分の原材料を揃える費用のほか仕込みも製造も片付けも10回必要だからです。ということは粗利が変わります。そして製造する人が疲れを感じるのは断然前者です。単純に考えるとそうなのですが、どんな楽しみを提供したいのかに関わってくるので利益だけ見るのも違うかなとはもちろん思います。いろいろなお

          ㊺作るものをしぼる