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深読み 米津玄師の『さよーならまたいつか!(『虎に翼』主題歌)』第27話


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2024年3月中旬
東京都渋谷区神南
NHK放送センター



秘密の地下空間
ミラノ・ドゥオーモ広場
Basilica cattedrale metropolitana di Santa Maria Nascente




こ、こらっ!

大司教さまの挨拶は「どーも」ではなく「どぅおーも」だ!


どぅおーも?

これはまた変な挨拶だな…


変なのはお前の頭の方だメリーアン!

いいから御挨拶しろ!


はいはい…

どぅおーも!


どぅおーも!


それにしても大司教様、どこかで見たことある気がするなあ…

以前お会いしたことありましたっけ?


どぅおーも?


でもやっぱり違うかな…

俺が見た大司教様に似ている人は、もっと歯がギザギザしていたような気がする…


どぅお… も…


大司教は前歯がありませんけど、いったいどうしたんですか?


・・・・・


こ、こらっメリーアン!

大司教さまにリンゴの話はタブーだと言っただろう!


林檎の話なんて聞いてませんよ、灰色ウサギさん。

俺が聞いたのは、欠けている前歯のことです。


それがリンゴの話だと言っているのだ!

欠けている前歯の話は、すなわちリンゴの話なのだからな!


え?


・・・・・


大司教さまは若かりし頃、修行の旅に出られておられた。

かつてイエス・キリストが試練を受けた荒野で修行しておられたのだ。


サタンの誘惑、三つの試練に打ち勝った試練でしたっけ?


サタンの誘惑と左端の誘惑はなぜ似てる?


は?


何でも無い。気にするな。


あ、はい…


若かりし頃の大司教さまは荒野を四十日間さまよっておられた。

食いしん坊なのに40日間も何も食べず、壮絶な空腹と戦いながら。

それはそれは、ものすごい試練だったという。


四十日間も… それは食いしん坊でなくても辛いですね…

というか、普通なら餓死するレベルだ…


すると、意識が朦朧としてきた大司教さまの目の前に、森と泉が現れた。


森と泉が現れた?


違う!「森泉が現れた」ではない!



ガオー!


俺は「森泉が現れた」なんて言ってませんけど…

森と泉は荒野の中の楽園、オアシスのことでしょう?


オアシスではなくオエイシス!

オ・エ・イ・シ・ス!


はい?


モーニンググローリのそのグローリだ!

Casual observer! Superficial traveler!


モーニンググローリー?

OASISの話ですか?



なぜイギリスのバンドの話をする!?

私が言ってるのは、森の緑に囲まれた泉、荒野の中のオエイシスだ!


灰色ウサギさん、あなたが訳のわからないことを言うから…

それじゃあ、その荒野の楽園オエイシスに林檎が実っていたんですね?


だからお前はパプリカ頭、馬と鹿だというのだメリーアン!

リンゴは冷涼な気候の地域の果物。なぜ砂漠のオアシスにリンゴの木がある?


あ、そうですね…

ではリンゴはどこに?


林檎といえば森の泉の美しき乙女に決まっているだろ!


森の泉の美しき乙女?

夏目漱石の小説『三四郎』の美禰子ですか?



ええい!お前と話をしていると脱線ばかりして困る!


では、森の泉の美しき乙女とは?


大司教さまは森の泉の前で祈りを捧げた!

どうかこの死にも匹敵する空腹を取り去ってくださいと!

すると泉の中から美しき乙女が現れた!


い、泉の中からですか?


森の泉の美しき乙女は両手に何か持っていた!

そして大司教さまにこう言った!


「あなたが欲しいのは左のリンゴ?それとも右のゴーヤ?」



ちょっと待ってください…

今「ゴーヤ」って言いました?


そうだ!

左のリンゴか、右のゴーヤか!


そんなの左のリンゴ一択でしょう…

ゴーヤは生で食べた方が栄養価が高いと言いますけど、さすがに苦すぎて生で食べようとは思わない…


その通りだメリーアン!

しかも右のゴーヤは色艶がなく、まるで石で出来ているようだった!

そして左のリンゴは瑞々しい赤い色をしていて、いかにも美味しそうだった!

だから大司教さまも左のリンゴを選んだ!

まさか、あんなことになるとは思わずに!



あんなこと?


大司教さまがリンゴを手に取り、ガブリと囓ったその瞬間、大司教さまの手とリンゴの上にポタポタと真っ赤なものが落ちてきた!

なんと大司教さまの口から血が滴り落ちていたのだ!


リンゴを囓ったら、口から血が?


もちろん歯槽膿漏ではない!

前歯が折れて出血していたのだ!


ええっ!?


すると目の前にいたはずの美しき乙女は姿を消し、森と泉も煙のように消え去った!

そして大司教さまが握っていたリンゴを見ると、それは丸い石コロだったのだ!


美味しそうな赤い色をしていたリンゴが石ころだった?

つまり答えを間違ったということですか?

本当は石のように見えたゴーヤを選ぶべきだった?


そういうことだメリーアン!

この不可思議な出来事をすぐさま誘惑の試練だとお悟りになった賢明なる大司教さまは、こうおつぶやきになった!


どぉーも、どぉーもどぉーも…


ちょっと、ちょっとちょっと?


脱線するなと言っただろう!

なぜそこで星屑ロンリネスの話になる!

「お願い そこにタッチ」の「そこ」とはいったいどこのことなのだ!


灰色ウサギさんの方が話を飛躍させてますけど…


「どぉーも、どぉーもどぉーも」は謝罪の言葉!

罪を誤魔化すのではなく、目の前の罪を受け止め直視する言葉だ!

訳すとこうなる!


「われは我が咎を知る。我が罪は常に我が前にあり」


どぅおーも…


「我が咎、我が罪」は旧約聖書の『詩篇』第51篇3節、ダビデ王の「懺悔の歌」の一節…

大司教様は、入浴中のバト・シェバに欲情して罪を犯したダビデのように、見た目の美しさに誘惑されて石のリンゴを囓り、それを悟ったのですね…


しかしその代償に前歯を失った!

それ以降大司教さまは己を戒めるためにリンゴを断ったのだ!

リンゴを食べることだけでなく、リンゴを目にしたり、リンゴという言葉を聞いたりすることも!

そういうわけだから、なんぴとたりとも大司教さまの前でリンゴの話をしてはならぬ!


だいぶ、しましたよね…


私はリンゴの話をしたのではない!

リンゴの話をしてはいけない、という話をしたのだ!


どぅおーも!




NHK理事会室



まだか! まだ米津は見つからんのか!


落ち着いてください会長…

財前放送総局長が必ずや米津玄師を…

きっと、もうすぐ…


もうすぐもうすぐと言って、どれだけ待たせるのかね矢口君!

もう何日間も、いや、何ヶ月も待たされている気分だぞ!


数十分のことを何ヶ月とは、さすがに大袈裟かと…


それくらいの感覚だと言っているのだ!

もう『虎に翼』が終わってしまう秋まで待たされたような感覚だと!


秋って、半年も先のことですが…


だからそうではなく…

グウ…


会長… 今の「グウ」というのは?


腹だ!私の腹が鳴ったのだ!

秋といえば食欲の秋!

春ドラ『虎に翼』の次は、秋ドラ『おむすび』だからな!



それでしたら、おむすびをお持ちしましょうか?


うむ!そうしてくれ!

あと、飲み物も!喉が渇いた!


お飲み物は、お茶で?


いや!ジュースだ!ジュースが飲みたい!


ジュースですか?

ではオレンジジュースをただちに…


や、矢口!お前って奴は!


え?


オレンジなんか飲めるか!

わしを誰だと思ってる!


誰って、NHK会長ですが…


そうではない!

愛媛県人じゃあるまいしオレンジなんぞ飲めるかと言ってるんだ!


あ、オレンジジュースはお嫌いでしたか…

ではリンゴジュースを…


馬鹿にしとるのか!わしは徳島県人だ!

徳島県人が飲むジュースといったら決まっとるだろ!


ポカリスエット?


あれはスポーツ飲料!

わしはジュースの話をしている!果汁100%のジュース!


果物と言っても様々あります。

どんな果物でしょうか?


丸くて、小さくて、緑色の果実だ!


丸くて、小さくて、緑色の果実…

カボス?



違う!


では、シークヮーサー?



違う、違う、違う!

徳島県人の果物と言えばスダチ!

すだちジュースが飲みたいと言ってるのだ!



ああ、なるほど…

しかしここNHKにスダチのジュースがあるかどうか…


無かったら取り寄せればいい!

バイク便でもUBERでも何でもいいから持ってこさせろ!


かしこまりました…

それでは、おむすびとスダチのジュースを大至急…


あの男はどうしておる!

いったいいつまで時間がかかるというのだ!


あの男と言いますと?


ろくに仕事もせずに青果店の店先で道行く女を眺めながら油を売ってるあの男だ!


ああ、神南恭一郎のことですか?


そう!神南恭一郎!

いつになったら『さよーならまたいつか!』の解析が終わるのだ!




NHK総合リスク管理室
情報解析センター



神南恭一郎、そろそろ時間の方が…


うむ、田木君。

お偉方も相当イライラしているだろう。


あの歌とミュージックビデオには、いったいどういう意味が隠されているのですか?


呉羽君、もう一度よく見てみるんだ。

この作品には、いろいろ奇妙な点があるだろう?




つづく



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