ツルでもガキでもわかる!全米映画興行収入ランキング7/7-9編『パキスタンからやって来たオタク青年、シリコンバレー&ハリウッドを席巻!』の巻
まいど!ワイは鶴や!ツルヤナンボクや!
ええじゃろうだよ!
おかえもんです。
前回は『ベイビー・ドライバー』で盛り上がっちゃったね。
うん!
エドガー・ライトさんの、オタク成り上がりストーリーには感動しちゃった!
おいら、すっかりファンになっちゃったよ!
せやな。
エドガーは、ジョン・ランディスとクエンティン・タランティーノから生まれたハイブリッドみたいなもんや。
結構いい年やけどな。
僕と同じ団塊ジュニア世代だね。こっから楽しみな監督だ。
さて、さっそく7月7~9日の全米映画興行収入ランキングをいってみようか。
先週末も、夏の超大作が飛び込んできたよ。
① SPIDER-MAN: HOMECOMING
$117.0M 初登場
② DESPICABLE ME 3
$34.0M($149.2M)2週目
③ BABY DRIVER
$12.8M($56.9M)2週目
④ WONDER WOMAN
$10.1M($368.8M)6週目
⑤ TRANSFORMERS: THE LAST KNIGHT
$6.3M($118.9M)3週目
⑥ CARS 3
$5.6M($133.7M)4週目
⑦ THE HOUSE
$4.8M($18.6M)2週目
⑧ THE BIG SICK
$3.7M($6.9M)3週目
⑨ 47 METERS DOWN
$2.8M($38.5M)4週目
⑩ THE BEGUILED (2017)
$2.1M($7.4M)3週目
やっぱりドカンと来たね、『スパイダーマン:ホームカミング』。
2017年サマーシーズンの興行収入チャンピオン争いは、コレと『ワンダーウーマン』の勝負やな。
若き日の蜘蛛男と、若き日の女族姫の一騎打ちや。
主演のトム・ホランドはこれですっかり大スタアの仲間入りだね。
苗字が「オランダさん」っちゅうイギリス人なのにアメリカンヒーローやっとるなんて、ホンマややこしいやっちゃ。
前フランス大統領も「オランダさん」だったよ。フランス語ではオランドって読むけど。
日本にはニックネームが「蘭とむ」ってお姉さんがいるよ。
苗字に「オランダ」が入ってて、名前が「とむ」なんだ。
宝塚の元トップスターだね。史上最高の倍率の年に合格し、最後まで首席の座を守り通した伝説のタカラジェンヌだ。
ちなみにトム・ホランドも厳しいオーディションを勝ちぬいて、舞台『ビリー・エリオット』の主演を務め世界的に注目されたんだ。
それなりに!それなりに!それなりにフォエ―バー!
ははは。そう聞こえるよね。
ちなみに日本版『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』では、その部分の歌詞が「団結だ!団結だ!団結永遠に!」となっている。
ちょっと残念だね…
当たり前や。生活とプライドを賭けたストライキの歌なのに「それなりに」はマズいやろ。
でも、なんでビリーは標準語なのに、お父さんは博多弁なの?
基になった映画の舞台がイギリスの超田舎の炭鉱の町で、「訛りと階級差別」や「労働争議」が物語のベースになってるから、日本版は舞台を福岡にしたんだろうね。
三井三池争議か。
だね。いよいよ7月19日から公演開始だ。(詳しくはこの公式サイトで)
”ビリー・エリオット”ファンとしては、ホント楽しみなんだよ。男の子版『アニー』みたいになるといいね。
せやな。なぜか『ピーターパン』も女やし。
いつかトム・ホランドみたいに世界的スターが誕生するとええな。
ランキングに戻るよ~!
2位は『怪盗グルー3』だね。
そんでもって3位に、おかえもんイチオシの『ベイビー・ドライバー』か。
超メジャー作品に負けんと、よう頑張っとる。
アメリカでの大ヒットを受けて、やっと日本版公式サイトが立ち上がったね。
日本での公開は8月19日だ。
8/19「バイクの日」
って覚えておこう。
乗っとる車はスバルやし、バイク全然関係無いやろ。
4位は『ワンダーウーマン』!
世界グロスで、ついに7億5千万ドルを突破したね!
あと未公開の国は日本くらいかな。日本でもヒットを飛ばして、ぜひ10億ドルまでいってほしいね。
5位が『トランスフォーマー/最後の騎士王』で、6位が『カーズ3』やな。
そんで7位が『THE HOUSE』、8位が『THE BIG SICK』。
アメリカの映画興行収入史上”歴代2位”の記録保持者ヨハネス・ロバーツさんの『海底47m』は、まだ9位で頑張ってる!
前々回で紹介したけど、まだランクインしてるとはね!
彼はアメリカ映画史に名を刻んだよね。
「72ドルだった男」が「4000万ドルの男」になったんだ。
これをアメリカンドリームと言わずして何と言おうか。
そして10位が、ソフィア・コッポラ姐さんの『THE BEGUILED』だ。
4館での上映から600以上になって、先週末はついに900以上の劇場で公開されたんだってね。
そうだね。
そして8位に初登場した『THE BIG SICK』も似たような流れでランクインしたんだよ。
第1週目が5館、第2週目が71館、そして第3週目に突入した先週末から326館に拡大された。
他のメジャー作品は軒並み4000館前後の公開だから、マイナー配給会社の作品でランクインするのは凄いことなんだ。
なんやねん、このヒゲオヤジとマユゲのコンビは?
しかもこれアマゾン配給作品やんけ。
ホントだ。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』みたいだね。
(公式サイトはこちら)
そうだね。去年の『MANCHESTER BY THE SEA』も少ない劇場数からスタートして、じわじわと人気が上がり、最終的に1000館以上まで拡大されたんだ。
そして4千万ドルの興行成績を上げ、アカデミー賞の主演男優賞(ケイシー・アフレック)と脚本賞(ケネス・ロナーガン)をW受賞したんだよね。
アマゾンが2016年のサンダンス映画祭で、1000万ドルでこの映画の配給権を落札したって当時ニュースになったよね。
でもって2017年のサンダンスでアマゾンが落札したのが『THE BIG SICK』ってわけだ。1200万ドルだったらしい。
マンチェより高値で落札か。
このむさ苦しいオッサン二人のどこにそんな価値があるんや?
7位『THE HOUSE』のウィル・フェレル&エイミー・ポーラーみたいに、アメリカでは大スターやけど日本では超マイナーってパターンか?
この二人は大スターではないよ。
でも、ウィル・フェレル&エイミー・ポーラーはこの先も日本でブレイクはしないだろうけど、こっちのマユゲのほうは要注目だ。日本でも有名になるかもしれない。
ちなみに、でかいヒゲのおじさんはレイ・ロマーノ。『アイス・エイジ』のマンモスの声で有名な人だ。
ああ、もふもふマニーか!
そしてマユゲのほうが、クメイル・ナンジアニ(Kumail Nanjiani)。
今回のツルガキで紹介するのは、この男だ。
『パキスタンからやって来たオタク青年、シリコンバレー&ハリウッドを席巻!』っちゅうのは、こいつやったんか。
そうだよ。この映画『THE BIG SICK』は、現在アメリカで注目されつつある彼の自伝的映画でもあるんだ。
世界展開するアマゾンにとって、1200万ドルは安い買い物だったかもしれないね。
どうゆう意味?
なんで注目されてるの?
クメイル・ナンジアニは18歳でアメリカに渡って来た。それまで彼はパキスタンのカラチに暮らしていた。ちょっとリッチな家庭だけど、ごくごく普通のパキスタン人だったんだ。
アメリカに来てからはアイオワで大学生活を送ったんだけど、彼のネタ「女性との人生初めての握手@アイオワ」が面白いから動画を貼っておくね。ちなみに彼はコメディアンなんだ。
あと、NETFLIXの人気番組Chelseaでのトークも。
パキスタンやイスラム文化を噛み砕いてアメリカのお茶の間に伝える役目なんやな。「全然怖くありませんよ。普通の人間なんです」っちゅう感じで。
そうだね。去年あたりから彼はアメリカ社会において重要な役目を負うようになってきた。
トランプさんのお陰だね…
その通り。
クメイルは白人女性のエミリーと結婚したんだよね。その時の両家のゴタゴタをドラマ化したのが『THE BIG SICK』なんだ。
エミリーが突然昏睡状態になるっていう”病気”のおかげで、両家は互いの理解を深めるんだけどね。
タイトルのBIG SICKとは、その病気のことであり、同時にイスラムとアメリカの文化摩擦のことでもあるんだ。
そのエミリー役はゾーイ・カザンか。
エリア・カザンの孫やんけ。
ほんとのエミリーさんは、どんな人なの?
こんな人だよ。映画とは違って、かなり面白キャラだね。
彼女はこの映画の脚本を夫であるクメイルと共同執筆した。彼女も放送作家でありコメディアンなんだ。二人ともキャリアの始まりは、ポッドキャストの人気ホストだったんだよね。
プロデューサーは、あのジャド・アパトーなんか!
誰?
米国コメディ界の大物やで!
インタビューの最後にもチラッと出てくる伝説のコメディドラマ『フリークス学園(原題:Freaks and Geeks)』で多くの逸材を世に送り出したんや。
オープニングが超カッコいい!
ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの「Bad Reputation」!
こっから、ジェームズ・フランコ、セス・ローゲン、ジェイソン・シーゲルが巣立ったんやで。
アパトーはその後数々の名作B級コメディを世に出した。
『40歳の童貞男』
そして『スーパーバッド 童貞ウォーズ』
童貞映画界のゴッドファーザーや。
そして、おバカ映画の金字塔『スモーキング・ハイ』を世に送り出した。
一日中マリファナやってる”どうしようもない”ダメおやじコンビを、セス・ローゲンとジェームズ・フランコが見事に演じ、ゴールデングローブ賞にもノミネートされたB級映画の傑作中の傑作だ。
そしてこの映画のヒットで勢いに乗ったダメおやじコンビ&SONYピクチャーズは、あの『ザ・インタビュー』を製作する…
これ、いろんな意味で話題になったやつ…
だったね。
そしてHBOのドラマ『girls』で大ヒットを飛ばしたアパトーは、クメイル・ナンジアニに何かを感じた。
「今アメリカに必要な”笑い”はこれだ!」ってね。
童貞映画界の巨匠だけに、18歳まで女の子の手すら握ったことなかったクメイルに目を付けたわけやな。
社会の中での文化摩擦ってのは、結局のところ、性に関することがほとんどを占めているからね。
クメイルさんは、どうやってコメディアンとして頭角を現したの?
アメリカってコメディアンの層が厚いよね。いっぱい番組あるし、街でもたくさんライブやってるし。
それに移民だらけで日本と違って「外タレ枠」とか無いから、ちょっと見た目やキャラが「変わってる」ってだけでは人気なんか出ないよね?
そうだね。
さっきもちょこっと言及したけど、最初にクメイル・ナンジアニはポッドキャストでゲーム実況番組を始めたんだ。彼は超ゲーム好きだったからね。それがそこそこの人気を得て、ポッドキャストの有名番組に抜擢注目されたんだ。
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のゲーム実況音声番組『ハーモンタウン』にね。
ゲーム実況?
しかも音声のみって!?
「ダンジョンズ&ドラゴンズ(通称:D&D)」ってのはテーブルトークゲーム、つまり会話で進めるボードゲームみたいなものなんだ。
RPGゲームの元祖みたいな存在で、ここから「ウルティマ」「ウィザードリィ」など世界的ブームになった名作RPGや、日本で社会現象にまでなった「ドラクエ」なんかが生まれた。
へえ!
クメイルが人気者になった「ハーモンタウン」は、今では映像付きのゴージャスなコメディ番組になってるよ。
面白そう~!
会話とロールプレイ、つまりアクティングがこのゲームのキモなんで日本ではイマイチ人気が無いんだけど、世界中で愛されているゲームなんだ。
ハリウッドスターの中で最もゲームマニアで知られる『ワイルドスピード』のヴィン・ディーゼルなんか、自身でD&Dの実況番組をやってるくらいだ。
そうだったんだ!
しかしなんでおかえもんはそんなに詳しいんだ?
実を言うとね、僕は中学生の頃、このD&Dにハマっていたんだ。
放課後や休みの日になると友達の家に集まって、みんなでワイワイしながらプレイしてたんだよ。あの頃は今みたいに発売されているRPGゲームが多くなかったから、自分たちで作って楽しんでたんだ。
ゲームの司会進行を務める人をダンジョンマスターって言うんだけど、僕はこの役が大好きでね。
自分で世界地図を作って、町を作って、迷宮を作って、ストーリーを書いて、プレイヤーたちを冒険させて、みんなをハラハラドキドキさせて楽しませる役割なんだ。
オッサンはずっとバーのマスターやっとったって聞いたけど、その前はダンジョンのマスターをやっとったんか。
そんなマスターより、ちゃんと勉強して学問のマスターでも取ればよかったのにね。
ふふふ。そしたら今頃こんなこと書いてなかっただろうね。つまり君たちも存在しなかったかも。
それは困る!中退してくれて、ありがとう!
初めて感謝されたね。
さて、このD&D実況番組で人気者になったクメイル・ナンジアニは、コメディアンや俳優として活動の幅を広げることになる。
日本でもお馴染みのアニメ『アドベンチャー・タイム』もこのD&D実況番組から生まれた作品なんだけど、クメイルも声優として参加した。
時空を超越する不思議な存在プリズモ(Prismo)の役だ。
オイラの大好きなアドベンチャータイムに出てたんだ!
しかもプリズモちょー好きだった!
ちなみにアドベンチャータイムっちゅうたら、湯浅政明が担当した回『食物連鎖』が有名やな。
むかし観たけど、気がつかなかった!
だけど言われてみれば「クレヨンしんちゃん」っぽい!
役名とセリフが付いた映画デビュー作は、『キングコング:髑髏島の巨神』でメジャーになった監督ジョーダン・ヴォート=ロバーツの長編デビュー作『キングス・オブ・サマー』だった。
『ジュラシック・ワールド』のお兄ちゃんニック・ロビンソン主演作だ!
でもクメイルさん、予告編に出てなかった…
そうだね。こっちの動画では映ってるよ。
実質的な映画デビュー作なんで、実に初々しい。
ほんまやな。
着々とキャリアを重ねたクメイル・ナンジアニは、HBOのドラマ『シリコンバレー』のメインキャストに抜擢された。一癖も二癖もある若者たちがシリコンバレーでの成功を夢見て共同生活を送る物語だ。
そこで本人同様のパキスタン移民であるDineshを演じて、オタク世界や夜の世界だけじゃなく、お茶の間にも知名度が浸透し始める。
2014年に始まって、まだ続いてる人気ドラマだ。2018年にはシーズン5に突入することも発表された。
超オモロイんだけど、日本ではHuluでしか観ることが出来ないんだ。
こんな傑作ドラマを残念だよね。
(Huluの「シリコンバレー」ページはこちら)
なんでこんな話題のドラマを日本では放送せんのやろか?
たぶん人種・宗教・セックスネタが多いからじゃないかな。
そういう清濁併せ呑むダイナミズムこそがイノベーションの原動力なのに。
パキスタン移民ディネッシュ役のクメイル・ナンジアニと、悪魔崇拝主義者ギルフォイ役のマーティン・スターの掛け合いなんて最高に面白いよ。
下の動画は、これまでのシーズンのハイライトだ。
確かに日本では難しそう…(笑)
おい、ちょっと待てい!
ヒゲ&メガネでキモいカルトオタクのギルフォイを演じとるマーティン・スターって、『フリークス学園』にも出とったやんけ!
さっきのジェーン・ジェットのオープニング動画で最後に出てくるインパクトたっぷりのキモ系少年が、20年前の奴や!
立派に成長したよね。ナードを演じてるけど、実は隠れイケメンでもある。
あれがここに繋がるのか…
B級おバカの世間は狭いんだね…
今回の映画でクメイル・ナンジアニがブレイクしたら、シーズン5は注目されるだろうね。今まで日本では話題にすらならなかったドラマだけど、これで知名度が上がるかもしれない。
ちなみに彼の次回作は、9月に公開されるLEGOムービーの『NINJAGO』への声の出演だ。
ジョークの達人、青忍者のJayを演じている。
わお!レゴ好きには堪らない!
彼はニンジャを演じることが夢だったらしい。
なんでやねん?
だって、
彼の姓「NANJIANI」を並べ替えると…
「IN A NINJA」ってなるからね。
ぎゃふん!
『THE BIG SICK』(’17米)
製作:ジャド・アパトー
監督:マイケル・ショウアルター
脚本:クメイル・ナンジアニ、エミリー・V・ゴードン
出演:クメイル・ナンジアニ、ゾーイ・カザン、ホリー・ハンター、レイ・ロマーノほか
(日本での公開は未定)
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