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2022年J2第27節横浜FC-ジェフユナイテッド千葉「浜乃学習」

好機に航基

スタッツだけを見たら、千葉が押していた試合の様にも見えるが、実はまるで逆で横浜が決定機にゴールを着実に重ねて大勝に終わったゲームとなった。前半5分、ハイネルの長いフリーキックを頭で合わせて先制点を挙げると、前半31分には和田からゼインにパスが渡ると、琉球戦の再現のようなグラウンダーのクロスを小川がスルーすると左に流れながら渡邉が放ったシュートが千葉ゴールに突き刺さり2-0とリード。

千葉としては、前半にあったサイドで起点を作り幅を作ったところを中央で仕留めるサッカーを展開したかったが、枠にも飛ばないシーンが多く決定力に欠けていた。横浜は前半ミスも多く、真ん中を使って食いつかせたところでサイドに展開しようとする意識が強く、そこをカットされ攻撃を受けた。ただ、アタッキングサードから先で千葉は精度を欠いた。横浜と千葉の決定的な違いは、好機にゴールを仕留められるかどうか。横浜にとって好機にFWが決めきる理想の展開だった。

カウンター

そう考えてみると千葉は前半2分にも鋭いシュートを放っていたチアゴ・デ・レオンソを残し、前線でほとんどゲームに関われなかったブワニカを下げてサウダーニャを入れてたが、この判断が結果的に裏目に。

後半16分、そのチアゴ・デ・レオンソが縦パスをトラップミスしてロストしたのを見逃さず、渡邉が素早くゼインに展開。ショートカウンターで駆け上がった彼は中央にいた小川にプレゼントパス。GKとの1対1を制した小川が追加点を挙げて3-0とリードを広げる。横浜に欠けていたのは、カウンターからのゴール。カウンターで持ち上がってもその先でディレイさせられてしまったり、ラストパスの相手を探しているうちにブロックを敷かれたりと数的優位のシーンをゴールに結びつけられないシーンは幾度となく見てきた。せめてシュートで終わってほしい思いもむなしく何度もため息が漏れた。
桐光学園のキャプテンと副キャプテンが見せたホットラインは、あうんの呼吸で出したいところと受けたいところがピタリと一致。4-1-5で攻めるのは、チームの形であっても、オープンな状況ではシステムに捕らわれる必要もない。

そして極めつけは、その3分後の長谷川の大きな弧を描くループシュート。これもチアゴ・デ・レオンソのトラップ際にプレッシャーをかけてボールを奪い、裏に抜けた長谷川がセンターライン付近から美しく流し込んだもの。これで4-0として千葉の心をへし折った。

地獄の番犬ケルベロス

千葉は2009年J2に降格してからもうかれこれ12シーズンJ1に縁がない。プレーオフ進出は2017年が最後。秋田犬のはずが、最近ではチワワ化しているなどと揶揄されているが、個人的には地獄の番犬ケルベロスだと思う。千葉より下は降格圏だぞと。冥府の入り口に鎮座するケルベロスは天界には出られぬままJ2の門番となってしまった。

千葉といえば、昔はとにかく苦手で仕方なかった。初対戦となったフクアリでのゲームは0-4と大敗。流れるようなパスワークで、試合後菅野と小村が怒鳴りあいしていた。その流れが変わり始めたのは、2016年イバと佐藤謙介のゴールで逆転勝ちしてからだ。

2017年4月に行われた試合で奇しくもこの日と同じ4-0で破ってからは1敗しかしてない。そして2017年はニッパツ三ツ沢球技場のバックスタンドの裏にあった古河電工の社宅が工事により撤去された年。千葉にすれば方位除けになっていた建物がなくなったことで横浜からの風当たりをモロに受けることになったのかもしれない。

ちなみに、ケルベロスは甘いものが大好きでそれを与えると、それを食べている間にその道を通ることができるとされている。それを転じて賄賂を渡すことを「ケルベロスにパンを与える」と言われているが、千葉にシーズンダブルを食らった新潟のサポーターは、この試合八百長だと叫んだとか。

その位千葉のパフォーマンスは低く、チアゴ・デ・レオンソが退いたのはゲーム終了8分前。代わって出てきた櫻川ソロモンは迫力があった。前回の対戦でも、櫻川とのマッチアップでガブリエウが後手を踏み苦戦した記憶があるだけに、シンプルに櫻川にボールを集めたサッカーの方が横浜は苦労しただろうし、戦前の見立てでは櫻川をどう抑えるかが焦点の一つだった。それを意図してかせずか、チアゴとブワニカとの2トップにしたが横浜の2点目のビルドアップでハイネルから和田に入ったような縦パスは遮断できないし、3点目4点目はチアゴのボールロストからと新潟にダブルをしたチームとは思えないクオリティだった。

そしてそのままゲームは4-0で横浜の勝利。前日の試合で勝利していた仙台を抜いて再び2位浮上である。

アキレス腱

横浜の今の問題はFWの消耗度にある。ここ数戦、小川はフル出場が続いている。渡邉も水戸戦こそ84分で退くもほぼフル出場に近い。秋田戦も本当は休ませたいがビハインドの中で出場せざるを得ず完全休養にはできなかった。
ヴィゼウが契約満了となり、サウロ・ミネイロ、伊藤、クレーベと内田CRO曰く「もう少し待って」という状態で、この2人だけのままでは勤続疲労も出てくる可能性がある。こうした大勝したゲームだからこそ、早めに下げておきたいがそうはいかない台所事情があるのだろう。水戸戦に出場した山谷もその後ベンチ入りもできず。リズムを変えたり、スタミナが落ちてきた時に運動量を補ったり、システムを維持することが中々厳しい状態にある。
シーズン当初は、FW過多と言われていたが今はむしろFWが足りない程に感じてしまうのは贅沢な悩みかもしれない。

守備陣はクリーンシート達成。GKブローダーセンのセーブもあり新潟戦以来の無失点だった。4-4-2にしてからはそれなりに安定感は出てきた。徐々に整備が進んでいると捉えてもよいだろう。

この日は、七十二侯の一つ「鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)」本来の意は、鷹の雛鳥が飛び立つ季節がやってきたことを示す。横浜がやっとショートカウンターを覚え、セットプレーでゴールを決めれば、琉球戦のような再現性のあるゴールを見せる。いくつかの不安要素はまだ消えていない。鷹の雛鳥も不安要素はあるにしても、巣から旅立ち始めるのである。横浜も残り15試合不安要素もある、長崎が知らぬ間にここ2か月負けなしでヒタヒタと迫る。新潟も仙台も負けない。それでもだ。飛び立たなければ空には辿り着けない。空を見上げているだけだなんて嫌だ。このキリキリする戦いを楽しみたい。「浜乃学習(はますなわちわざをならう)」高みを目指す。

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