E186:売るほどあったのに
【連続投稿: 107日目 ライランⅡ: 18日目】
子どもの頃はその「良さ」がわからなかった。
今思えば、もったいないことをした。
あの頃はこんなふうに思っていた。
べったべたのお揚げなんか(←言い方笑)酢飯に被せて何がいいんだろう
豆腐屋の孫なのに 笑
「いなり寿司」
子どもの頃は
祖母が揚げる厚揚げを一つ
今さっき、油から切ったばかりの
「揚げたて」をもらい
皿に載せて、生姜醤油で…
小学生の時からそうやって食べていたから、
なんだか、甘辛く煮た揚げが邪道のような気がして、
そんなに興味がなかったのである。
お手製いなり寿司
祖母もたくさん作ってくれたのに、
子ども時代の僕は興味を示さなかった。
ところが不思議なことに
お店もなくなり、
祖母もいなくなった後、
急に、ありとあらゆるいなり寿司が食べたくなった。自分でもその理由はよくわからない。
コンビニ、スーパーマーケット、個人商店に至るまで、いろんなお店のいなり寿司を、片っ端から買ってくるようになった。
うどんでもそうだ。
若い頃は、お揚げはお揚げでも
「きざみ」が好きだったのに
今ではたっぷりと甘辛いだしが「しゅんだ」
(=染みた)きつねを好むようになった。
最近知ったのだが、
どん兵衛の「お揚げだけ」が売っているらしい。
ちょっと買ってみようかしらと思っている。
でも、きっと、こんな私を見たら
向こうで祖母が
思いっきりずっこけてるだろうと思う。
あんた、今頃かい!
あの頃、売るほどあったのに!
おいなりのお揚げも
豆乳も
あの頃、お店に山ほどあったのに
今頃、お金を出して買いに走る私である。
どうしてリアルタイムでその良さに気づかないのだろう。祖母のいなり寿司が食いたい。もう遅いのだけれど…。
揚げたてを生姜醤油で食べてる小学生も、なかなかのものであるが…。それは、食べておいてよかったなぁと思う。でも、本音を言うなら、もっともっと食べておけばよかった、とも思う。