E13:地下鉄・絶望物語
世間には「初めての人」にとても冷たい人がいる。
(そんなこともわからないの?)みたいな顔を
平気でこちらに向けてくる、そんな人が一定数いる。
僕は、『地下鉄絶望物語』を経験しているから
できるだけ、優しくしたい、と思っている。
至らない点は、多々あるけれど…。
上京当時、東京の知りあいは「皆無」だった。
今は「メトロ」なんて横文字になっているけれど
昔は「帝都高速度交通営団」とか「大阪市交通局」
なんていう、固い団体名だった。
関西の地下鉄に慣れていた僕も、上京して
いろいろ戸惑うことが多かった。
ちなみに(東)「PASMO」「Suica」
(西)「PiTaPa」「ICOCA」
なんていうものはおろか、上京当時
まだ (東)「パスネット」
(西)「スルッとKANSAI」
ですら、まだ「導入直前」だった。
当然インターネットもない。
つまり「券売機で切符を買う」のが当たり前だった。
①こんど、つぎ
今でも忘れない。
上京して初めて「丸ノ内線」に乗った日、
ホームの行き先表示を見て、僕は首をかしげた。
こんど「新宿」つぎ「荻窪」
(はあ?)
関西には、この表現がない。
まあ、ホームでずっと待っていれば、
こんど=先発 であることは理解できたけど
何でこんなややこしい書き方をするのか
関西人にはよくわからなかった。
今は、あまり見かけなくなったな……。
②それはトエイです
「あの、どうしてこの運賃表に、
『曙橋駅』が載ってないんですか」
僕がそう聞くと、駅員さんはぽかーんとして、
こう言った。
駅「あ、それはトエイですからね」
僕「あ、そうですか」
あんた、バカじゃない?
と言わんばかりの、対応だった。
だから、わからなかったけど、
それ以上聞くのをやめた。
今だったら(なんだチミ、その態度は?!)
と「思う」だろう。
さすがに、この令和にそんな態度の駅員さんは
もういないし、
いたとしても、僕はそれを声に出しては言わない。。。
…なんて教えてくれる人もなく、
そもそも「大阪市交通局」しか知らない僕にとって
一口に「東京の地下鉄」と言っても「二つの組織」が混在している、
ということを理解するまでに、3日かかった。
だから、人に、自分は何を混乱しているか、という説明もできなかった。
「大阪の地下鉄」を乗りこなしていると、
余計に難しい。
③改札を一旦出て?
大阪の地下鉄は「どの路線も改札内」
(……だったと思う)
あの、(一つの駅にするには無理がありすぎるだろ)の
「(大阪)本町駅」も
改札は出なくて良かった。
東京の大手町駅で東西線→半蔵門線
パターンで呆然とする僕。
駅「お客さん、一旦改札をでてください」
僕「はい? なんで?」
駅【苦笑して】「じゃないと、乗り換えられないんです」
(この人は、何を言っておるのだ?)
きっと、お互いがそう思っていたと思う。
ちなみに、「なんで?」の質問意図は
(出たら、切符が取り上げられるやん!)
と思ったからだ。
…なんて教えてくれる人もなく、オロオロした。
駅員さんは「オレンジ色の改札」のことは教えてくれても、
大阪のように一律ではなく、
駅や路線によって、状況が様々違うのだ、
ということ(=前提)は
自分で理解しないといけなかった。
④「つながってます」
そもそも、なぜ僕が混乱したのかというと
上京当日に、(不幸にも?)
「赤坂見附駅」と「永田町駅」の関係を
先に理解してしまったからだ。
…ということを、先に学んでしまったからだ。
駅も路線も違うのに「改札内・同一駅」
同じ駅なのに「お乗り換えは改札を一旦出て」
なんで?
「誰も教えてくれない……」
大したことじゃないかもしれないけれど
こんなちょっとしたことで、ヘコんだ。
今は笑い話だけど、友人も、知りあいも誰もいない東京で
地下鉄さえまともに乗れない自分が
学生生活なんてしてゆけるのか、不安になった。
さて、令和…。
今、上に書いたことは、ぜーんぶ
丁寧に丁寧に、ネットに載っている。
そもそも、今はICカードやモバイルSuicaで、
ピッとやれば、
オレンジ色の改札なんて、通らなくてもいい。
いい時代になったな、と思う。
みなさん、安心して、東京に行ってください。
新生活、楽しんでくださいね。