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E121: 目に映る景色が愛おしい
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先月、いつもより遅い満開の時期を迎えていた桜。
ふと思い立って、※ツレに声をかけた。
「桜、見に行かへん?」
「いいねー!」
思えば、10年以上2人で桜を見ていないような気がした。
小高い丘の上にある公園に
きれいな桜が咲いている。
4月上旬、ちょうど見頃を迎えているらしい。
珍しく2人でバスに乗り、
バスを降りたら、今度は2人でゆっくりと歩いた。
喘息気味の私は、それだけでちょっとぜいぜいする。
それでも、気分は悪くなかった。
その公園に向かうのは久しぶりだ。
歩きながら、2人の記憶をすり合わせていたら、この場所に2人で来るのが、なんと14年ぶりであることがわかった。
14年前は2人とも30代
もう少してくてく歩いていたような気もする。
公園には着いたけど、絶景のポイントまでは、
もう少し丘を登る必要がある。
2人でヒーヒー言いながら登った。
顔を見合わせながら、思わず笑ってしまう。
(あれ、昔、こんなにしんどかったっけ?)
丘に登って「せーの」で振り返ると
眼下に満開の桜が広がっていた……。
しばし、見惚れる…。
眺め終わって、ちょっと疲れたなぁ、なんて思っていたら、なんとも素晴らしきタイミングで、近くのベンチが空いた。穏やかな幸運は、こうして優しく私たちに降り注ぐ。
2人でお茶を飲みながら、
周りの家族連れを眺めていた。
遊具の周りでテンション高く走り回る男の子
かっこよく遊具を使いこなし、きれいに着地する女の子
遊具のそばで、いつ落下しても抱き止められるように、並走するお父さんたち
おしゃべりに花を咲かせながら、決して子どもたちから視線を外さないお母さんたち
一つ一つが心揺さぶられる。
何かの映像作品みたいだな、と思った。
桜も素晴らしいけど、それとはまた違う、とても愛しくて大切なものを眺めた気がした。
「なんか、いいね、こういうの」
どちらからともなく、そう呟いた。
きっと14年前も
同じような光景があったはず。
でも、私たちはまるでそれを覚えていない。
見てるドラマの感情移入が変わってくるように
見える景色の濃淡も変わってくるのかもしれない
次もし、14年後だとしたら…
60代やなぁ…
体力ある?
…うん、不安しかないなぁ
さっき登って下りてきた丘を眺めながら、
私たちはため息をついた後、ゲラゲラ笑った…。
【66日ライラン 36日目】
※note上での「ツレ」という呼称は、本人の希望によるものです。
当日、残念ながら曇っておりましたので
ヘッダーにはもっと素敵な桜写真を
みんなのギャラリーからお借りしました。