E6:せーの、ダーーン!!
「せーの、ダーーン!!」
電車の扉が開くと、
幼稚園くらいの男の子が、大きな声で乗り込んできた。
(あらま、元気な声だこと!)
電車内にいた人は、びっくり仰天した。
やや低いホームから、飛び上がって電車内に突入~、の
「せーの、ダーン!」だった。
さあ、慌てたのは
男の子のお母さん。
「ちょっと、おいで!!」
せっかく乗ったのに、電車から降ろされちゃった。
親子はホームで仕切り直し。
真剣な顔でお母さんは言った。
「あのね、ほかの人の迷惑になるでしょ、静かに乗りなさいね」
乗客みんな、こういうとき
聞いてないふりして、ちゃんと聞いてるんだよ。
「はーーい!」と男の子。
(あら、満点の良いお返事だね!)
(さ、もう1回だね、がんばろうね。
実はみんな、君を見てるよ…)
男の子はさっきよりも息を大きく吸い込んだ。
あれ?ひょっとして……。
おじさんは少し、「期待」した。
「せぇーーのぉ、ダアアアーーーン!!」
さっきよりも数倍「元気な声」で
飛び上がって乗ってきた。
ヤッタネ!
(おかえりなさい!!)
乗客はみんな爆笑
ああ、イヤホンしてなくて、よかった。
なんだか得した気分。
おじさんは、君に元気を分けてもらったよ。
ところで
おじさんもやってみたら、スッとするかなあ?
「せーの、ダーーーン!!」