E248:ヤクルト晩酌
子供というのは、とんでもない行動をすることがある。
それが、命に関わることだったら体を張って止めなければいけないけれど、
状況によってはその発想を一緒になって笑って欲しい…私はそう思うのである。
母が真面目すぎるのか…
はたまた
私がアホすぎるのか…
まだ小学校低学年だったと思うので、
8歳くらいか…。
その頃から1人でお風呂に入るようになった私は、どういうわけか「あること」を実行したくて機会をうかがっていた。
棚から小さなお盆をこっそり取り出して、
冷蔵庫からヤクルトをこっそり取り出して、
それをお風呂に持っていく。
手ぬぐい代わりのタオルも持っていって、
頭に載せて
湯船にお盆を浮かべて、そこにヤクルトを置き
ぷはー、なんて言いながら楽しんでいた。
多分体に悪いと思うので、今はあんなことやらない大人が増えたけれど、昭和の頃は、おっちゃんが頭の上に手ぬぐいを置いて、お風呂で晩酌をしている姿をテレビでよく見かけた。
それが、なんだか子供心に幸せそうに思えて
(ボクも真似したい!)と思ったのである。
…ヘンな子である。
とっくりとかおちょことか、そういうものは持ち出せないので、1番それに近いものはなんだろうと考えたあげく、お風呂にヤクルトを持っていくというアイディアだった。
自分ではすごくいいことを考えたように思ったけれど、さすがに堂々とはできなかった。
こっそりやるつもりだったのに、母には妙な勘が働くのである。
まぁ、大人になって考えてみればわかるのだが、
いつもの動きと全く違って、息子が台所でこそこそしていれば、不思議に思うのも無理はない。バレバレである。
かくして
不審に思った母が、風呂場のドアをがらりと開けた。
「あんた、何してるの?!」
当然、そこには、頭の上にタオルを乗せ
湯船に浮かべたお盆の上のヤクルトで「晩酌」する、母にとっては理解不能な息子の姿があった…
「え、ちょっと一杯…」
このセリフも真似したかったのだ…。
(この瞬間が写真に撮ってあったら最高だったのに…笑)
何してるの?
と言われたので素直に答えたつもりだったが、それが余計にいけなかった。私が使ったお盆が、小さいけれど「結構いいお盆」だったのは、もっといけなかった…。
「あんたはアホなの? もうちょっとマシなことを覚えなさい!!」
私はめちゃくちゃ怒られて
「楽しい晩酌」は1分もしないうちに終わってしまった。
母にその記憶はないようだが
私はめちゃくちゃ怒られた記憶がある。
「小学生からこんなことやってるようじゃ、先が思いやられるわね…」とショックを受けたようであった。
残念ながら、私に子供はいないが
もし息子がいて、同じことをやったら、きっと大笑いすると思う。そして
一緒になって「ヤクルト晩酌」をするかもしれない。もちろん「本物のお酒」だったら叱るけれど。
こういう父親はダメだろうか?
「この子は、大酒飲みになるのではないか?」
そんな周りの大人の心配は、見事に外れ、
私は、体質的にほとんどお酒が飲めない。
なんとも皮肉なものである…
もし、お子さんが
「ヤクルト晩酌」していたら
どうか笑ってあげてほしい…
子どもの発想を
どうか笑ってあげてほしい…
あれ?思い出話をするつもりが、
最後は願望になってしまった。
着地点はどうしたかったのだろう…
えっと…
【連投169日目】