E214: 笑顔とは…?
写真が苦手だった…。
それを、より実感したのが中学校の卒業アルバム。
私はこのアルバムをめったに開かない。その理由は、無理矢理笑わされているから。
当時の編集の流行だったのかもしれない。一人ひとりの個人写真を笑顔で写す。
私にとって甚だ迷惑な編集方針だった。
私は笑顔が苦手。見つめるのが苦手。
アルバムなんてめったに開かないが、覚えている。このときの個人写真は、切ないほどひきつった笑顔である。
今、甥っ子たちを見ていると、実に楽しそうに笑う。
ギターを持つ時、食事をする時、いろんな出来事を話してくれる時…。
去り際も、なんだか自然な笑顔なのである。
「んじゃ、またね!」
私も歳を重ねて、やっとそれなりに柔和な笑顔ができるようになった気がするけれど、人からはどんなふうに見えているのだろう。
もう30年以上前、
20代前半の頃、みんなでキャンプに行った時、
友達の彼女が熱心にカメラを構え、たくさん写真を撮っていた。
彼女は集合写真があまり好きではないみたいで、
なんだか不思議なタイミングでシャッターを押していた。
数日後、その子から手紙が送られてきた。
身に覚えのない写真が入っていた。
「源ちゃんのこの写真、よく撮れたー」
のちに、撮影した本人も満足の出来だったと教えてくれた写真だった。
私が友達の方を向いて、
本当に自然に笑った横顔…。
いつ撮ったのか、全く気づかなかった。
(ああ、俺もこういう顔するんだ…)
自分のことなのに、初めて知る「笑顔」だった。
キャンプの時、彼女が言った言葉を思い出した。
「こっち向いて作った笑顔なんて、撮っても面白くないじゃん?」
【連続投稿: 135日目 ライランⅡ: 46日目】
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