【25杯目】オカンにインタビュー
大阪府豊中市で、「シンママ応援団」として支援を続けてきた上野敏子さん(ごはん処おかえり店主)にコロナ禍で深刻化する支援現場の声を聞いた。
(編集部・村上/おかえりボランティア・黒河内)
オカンの訴え
今、一番必要な支援は、貸付ではなく現金給付です。煩雑な申請なしの一律給付です。返すあてのない借金は、借り手を精神的に追い込みます。また、安心してごはんを食べたり、話ができる居場所は、学校にも家にも居場所のない障がい児や、生活困窮度の高い子どもたちの命を守ることにつながりますが、休止せざるをえない現状です。
シングルマザーの現状も深刻です。相談に行っても解決につながらない経験から、行政に拒否感があったり、前夫に住所を知られたくないために支援が届きづらいのです。孤立したシングルマザーからの相談が増えています。本人の親も困窮世帯で頼ることができず、他人の方が話しやすい場合もあります。「おかえり」には、食料や日用品などの現物があり、かつて同じ立場だった女性からの支援もあります。私は13年間シングルマザーの時期がありました。その時の経験が今の活動に繋がっています。ただ当時は正社員があたりまえの時代でしたが……。
また家の中しか知らない子どもは、「大人の愛情」を求めて「おかえり」に来ます。コロナ禍の前によく利用していた小学五年生は「ここにはいろんなおっちゃんやオカンがいていつも笑っている。自分は生きててもいいんやって思う」と話していました。「おかえり」を開くことで、子どもたちの自己肯定感が少しづつ上がっているのだと思います。
豊中は高級住宅地のイメージがある一方で経済的に苦しい貧困状態にある人たちがいます。子ども自身も「しんどい」ということが言えず、周囲も「みなかったことにしよう」といった空気が流れています。市はハコモノ政策をやめて、人々の生活や福祉の充実に力を注ぐべきだと思います。
コロナ禍の影響により、学校は休校となり給食がなくなりました。さらに子ども食堂や朝ごはん会などの地域の取り組みも休止状態です。学校給食やそうした地域の取り組みが貴重な食事の機会だった子どもたちは、大変な現状です。政府の早急な支援が必要です。自粛を求めるなら、食べることが困難な子どもたちがいるというリアリティをもって、補償すべきです。
疲弊する公務員支援の手届かず
今回の休校措置で、教育格差は大きくなるでしょう。お金がある家庭は、家庭教師を雇ったり、オンライン授業もできます。一方、貧困層の子どもは家庭学習の環境がありません。親は仕事が忙しく、子どもの学習を手伝える環境がない家庭も多いからです。DV状況で、勉強できる机すらない子どもたちもいます。たとえ大学に進学しても高い学費のために、奨学金という借金を背負ってしまう格差もあります。
貧困問題には、情報格差も関係しています。支援学級在籍の子どもには、就学奨励金が出ますが、その申請用紙を子どもが親に渡すことは、まずありません。先生から電話がかかってきて、子どもに確認したら「何かもらった気がする」と言って、ぐちゃぐちゃになった用紙が期限直前に出てきたこともありました。
また、支援を拒否する親に情報は届きません。給食費減免措置も、学校と信頼関係がない家庭は制度の存在を知らず、学校も深追いする余裕がありません。「教師の怠慢」として、現場を追い込むのではなく、仕組みを変えるべきです。
生活支援専属の自治体職員が必要です。公務員を増やすことで現場が守られます。疲れ切った教員が休職に追い込まれている現状もあります。現場を知らない上層部や政治家は、公務員削減を進めてきました。現場は大混乱です。そのしわ寄せが子どもにいっています。現場が疲れ切ってしまえば、「見なかったことにしよう」という諦めはさらに進んでしまいます。
一人の子どもを支援しようと思ったら、さまざまな人たちの協力が必要です。しかし政府は、ケースワーカーの人数も足りていないにもかかわらず、地域で貧困問題の解決のために働く公務員を減らし続けてきました。役所の予算を黒字にするために、現場の公務員は疲弊させられているのです。