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年を重ねるほど、昔話をしたくなるけれど。

インスタグラムでフォローしている切り絵作家「切り絵の時間」さん。

切り絵も美しいのだけど、いつもシュールな切り口で語られる言葉が面白い方。

先日、その切り絵作家さんがこんな投稿をされていた。

内容は「年寄りは、新しい経験がないから昔話するしかないんだよね」という若者の言葉からはじまり、切り絵作家さんのお知り合いの男性の話に。

その男性はもう現役を引退された高齢の方だったのだけど、昔話を一切されなかったそう。

地域活動で知り合った後、仲良くなったニャカ島さん。
どうも高学歴、有名企業勤務だった気配がするのだが、これまでの肩書きや経験は一切語らず。

地元でたくさんのボランティアを引き受けて、新しい仲間や友人をつくっていらっしゃった。私もその一人。

現役時代の話はもちろん、ご家族のこともほとんど口になさらず、今ここで起きていることや、ご自身の考えを話される方だった。
奥様が作動の師範でご自宅に茶室があること、すでにそれぞれご家庭のあるお子様方がいらっしゃることは、亡くなられた後で知ったこと。

確かに高齢の(私の偏見かもだけど)特に男性は、過去の栄光話を何度も延々とするイメージがある。

いや、高齢じゃなくても40代かそこらでも「俺、昔は結構ワルでさ」とか言って「警察をまいた」とか「消防署員と喧嘩した」とかワル自慢をするおじさんに遭遇したりする。(全然かっこよくない自慢だよね)
しかも酔うと、毎回同じ自慢を繰り出したりする。

あと愛知県ゆえかもだけど、合コンで遭遇した男性たちから「知ってる?イチローって昔ピッチャーだったんだよ。俺、イチローの球、打ったことあるんだぜ」という自慢を幾度となく聞いてきた。

出たー。イチローの球打った自慢出たー。
たった一球打ったからなんなんだ。
今や彼は世界で活躍しているんだぞ(米国野球殿堂入りおめでとうございます)。
それにひきかえ、キミはどうなんだ。
せめて「あいつはすごいよな〜」とか言ってくれたらかっこいいけど、なぜ上から目線なんだ。まったく意味がわからない。
と内心思いながら、毎度「へーすごいですねー」とか言ってた。

80歳手前の父と話していても、過去の話はよく出てくる。
父はまだ社会に出ているので現在の話もするけれど、何かきっかけがあれば「ワシが子供の頃はさぁ」「若い頃は」と昔話が繰り出される。


じゃあ、自分はどうなんだろう…って考えると、間違いなく昔話しちゃってる。
つい過去に遡って「そういえば前の職場で…」とか言っちゃう。ああおそろしい。

最初の若者の言葉「新しい経験がないから、昔話をするしかない」が、心にぐっさりと刺さる。

どうしても、年齢とともに新しい経験って減っていくし、新しい知り合いを作る機会も減る。
わざわざそういう場を作らないと、新しい「何か」とは出会えない。

そうすると、新しい記憶は増えないから、ついつい「昔話」にすがってしまう。

うう、悲しい。


昔話や思い出話が全て悪いことだとは思わないけど、新しい人やものや経験と出会う機会を意識的に増やしていかなきゃなあと思った。

ただ、心の片隅でそれを億劫だと思うあたりが、年を取ったのかな…とも思う。

新しい世界に飛び込むって、気力も体力もいるんだよなあ。

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オカダトモコ 旅が好きなライター / カメラマン
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