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私の足を繋ぎ止める見えない足枷。

3月にパリへ行ってから9か月。
ずっと旅に出ていない。

猫の体調が心配で動けなかったのが一番の理由だけど、その猫は先月天国へ行った。
もう何も心配の種はない…と思いきや、今度は残された高齢猫の体調が気になり、またどこへも行けなくなってしまった。

一緒に暮らす両親に「猫をお願い」と頼んで旅に出てしまえばそれでいいんだろうけど、毎朝毎晩の採血と注射は高齢の両親には難しいみたいだし、なんとなく「私が見ないといけない」と思ってしまう癖がある。

でも思い返すと、猫が元気だった時も、なんやかんや理由をつけて出られなかった私がいた。

いや、旅だけじゃない。

本当は早いうちに家を出たかった。
なんなら海外に行ってしまいたかった。
でもできなかった。


大学時代にほぼ無理やり一人暮らしをしたものの、変な占い師の助言で家に戻され、社会人になってからも家を出たけれど、父の会社を手伝うことになって戻ることになった。

そして4年前も関東で一人暮らしをしたけれど、「半年だけ」という条件で結局1年足らずで戻ることになった。

20代の頃に母から「出ないでほしいな」とやんわり言われたことや、出るたびに「いつ戻ってくるんだ」と父から言われたことや、自分の中にある「ひとりっこだから親の面倒を見ないと」という妙に生真面目な部分が相まって、私は家から出られないまま大人になってしまった。

結婚していれば、するっとさらっと出られたと思うんだけど、それもできなかったから「出る理由」がなくて、そのまま実家に住んでいる。

本当は出たい。
ずっとそう思ってるのに。


そんな自分を思う時、昔聞いた「サーカスのゾウ」の話を思い出す。

サーカスのゾウは、子供の時に足枷をされ、鎖で杭に繋がれる。
だから、大きくなって鎖をちぎれる力を持ったとしても「自分は力がないから逃げられない」と思い込んで逃げない。本当は逃げられるのに。

まるで自分みたいだなって思う。

その気になれば断ち切れる鎖だろうに、それができずにここにいる。
ずっと心の隅で、いや割と真ん中に近い部分で「離れたい」「どこかへ行きたい」と思っているのに動けない。

この見えない足枷は、一体いつまで私をここに縛りつけるんだろう。
もうこのまま、逃げることはできないのだろうか。

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オカダトモコ 旅が好きなライター / カメラマン
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