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我が家が遠かった日。

電車が止まった。
ぼんやりと見ていたスマホから顔を上げると、扉の向こうには見慣れない景色があった。

ここはどこだ。

焦りながら地図アプリを立ち上げて、現在地を確認する。
なんと、降りるはずの駅を3つも通り過ぎていた。

とりあえず降りる。
もう少しで、県外まで行くところだった。あぶないあぶない。

折り返しの電車は、ホームの反対側にすでに停まっていた。

発車まで7分。
やれやれと乗り込む。

誰もいない。

このままどこか、知らない世界に連れて行かれるんじゃないかと、若干不安になる。
きさらぎ駅に着いたらどうしよう。

もちろんそんなことはなく、我が家最寄りの駅へ無事到着した。

駅を降りると吐く息が白い。今夜は冷える。

「やっと帰れる」そう思いながら、愛車が待つコインパーキングへ向かった。

精算機に番号を打ち込む。
「600円」の文字が表示される。
財布を開ける。

5千円札と1万円札しかない。

絶望である。

コインパーキングは大体、千円札しか使えない。
最新型なら電子マネーが使えるけど、ここは古めの現金オンリー。

白いため息を吐いて、駅に戻ることにした。
駅前のコンビニでお茶でも買って、小銭を作ろう。

トボトボと夜道を歩くこと3分。
コンビニがあるはずの角が見えてきた。

が、おかしい。
どう見ても暗い。
煌々と輝いているはずの緑色のライトが見えない。

なんと閉店していた。
駅前のコンビニでも、潰れることってあるんだね。

仕方なく駅の中にある売店まで歩く。
ペットボトルのお茶を買う。
ぬるい。もうちょい温めておいて欲しかった。

5千円札を払い、お釣りを握り締め、再びコインパーキングに戻る。

番号を入力する。
600円支払い、車に乗り込む。

「ううう寒いよー」ひとりで呟いてエンジンをかける。
窓が凍っていて前が見えない。
しばらく待ち、発車する。

0時前。やっと家に着いた。
ああ、今日は家が遠い日だったなぁ。

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オカダトモコ 旅が好きなライター / カメラマン
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