ラインの黄金
読書会で『ニーベルングの指環』が取りあげられることになった。4部作を2ヶ月に1回ずつ観ていくので、長編読書会の一種になる。
長編読書会の良さは、何ヶ月にもわたって、普段は読み切れなかったり、観きれない作品と付き合うことになる。これまでにも『アンナ・カレーニナ』『平家物語』『聖書』『源氏物語』『カラマーゾフの兄弟』などいろいろと参加してきた。終わってみるといつも「参加して良かった」と思う。
ワーグナーの『ニーベルングの指環』は、若い頃にレコードを聴いたし、映像も何度か観た気がする。でも、どこかピンと来なかった。「トールキンの『指環物語』の方がずっと面白いのに」と思っていた。観るといっても眺めるレベルだったからかもしれない。
今回、長編読書会に参加するにあたって、メトロポリタンでのジェイムズ・レヴァイン版(演出:オットー・シェンク)とバイロイト祝祭劇場でのバレンボイム版(演出:ハリー・クプファー)を観た。
私は残念ながら、レヴァイン版はやっぱりちょっとピンと来なかった。私の方の受容力や感度の問題だとは思うけれど、おとぎ話っぽく見えてしまったのだ。ただ、先に観たレヴァイン版で全体の予習ができたおかげかバレンボイム版は面白かった。ものすごく現代的な演出というわけではないのだけれど、物語が自分の中にすっと入ってきたのだ。「トールキンの『指環物語』の方が面白い」というかつての意見は修正しなくちゃいけない。だってそう思っていたのは、たぶん、映像や台詞をぼんやりとしか受け止めていなかったからだから。
映像・台詞に加えて音楽も含めて受け止めるとなると、私にはまだちょっと難しい。でも映像は読書会の後にもう一度観てみたいなと思う。そういうことをゆっくりと時間をかけてすることも長編読書会の良さだし、作品との付き合い方だろうから。