サカサクラゲ
クラゲが好きだ。
その中でも、好きなんだよなぁ、サカサクラゲ。温泉の地図マークそのままに、砂地の上で天から降ってくる餌を待つその姿勢。そういうものに私もなりたい。
しかも体の中には褐虫藻と呼ばれる藻類を共生させており、藻類が光合成によってつくりだす栄養分を利用して生きているらしい。そうなのか、サカサクラゲ。なんか、温泉三昧で生活が苦しくなってカーちゃんに内職させるみたいな。クラゲの人生もいろいろ。
そしてときに花びらのように舞い踊るらしい。
サカサクラゲの学名はCassiopea ornata。《飾られたカシオペア》《カシオペアの飾りもの》。いずれにせよ美しいイメージだ。「わーい、温泉マークだぁ!」というひねた人生観とは異なる美しい視線の人が世の中にはきちんと存在しているのだ。。
もっとも英語名はUpside-down Jellyfish(上下反転クラゲ)だから、サカサクラゲに負けず劣らず身も蓋もない。でも、ちょっと不思議の国のアリスっぽくもあるから、イギリス的といえばそうかもしれない。
それにしてもいつからクラゲが好きになったのだろう。クラゲたちの人生一般が無性生殖と有性生殖という二重生活を満喫する愉しいやつらだと知ったころだろうか。あるいはイソギンチャクとクラゲとが同じ仲間だったと知ったころだろうか。同じ仲間とすれば、クラゲとは自由を求めて旅立ったイソギンチャクなのか、クラゲが安定を求めて定着したのがイソギンチャクなのか。いずれにせよサカサクラゲはその端境にある。その曖昧さがよい。
曖昧といえば、カツオノエボシが群体というのもなんだか曖昧な話だ。彼らは一匹ではなく集まって生活し、「俺、餌捕まえる触手やるわ」とか「じゃ、俺、生殖担当」「うーん、俺、浮き袋でいいや」とか言って共同生活をしている、かもしれない。
うん。クラゲに思いを馳せるとき、人生はいろいろで愉しい。
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