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あってほしいもの:クラフト・エヴィング商會『ないもの、あります』

他愛のないと言ってしまえばそれまでだけど、"自分を上げる棚"(サイズ:大・中・小、ただしいずれも予備用)はすぐほしい。

誰でも身のうちにかならずあるトンカチ(金槌、うすらトンカチ、相槌)のうち、特に打つのが苦手な人向きに用意された3種類の相槌は既に持っている人は多いけれど、意外に使いどころが難しい。

大・中・小で、それぞれ「まったくそのとおり」「そうですね」「まぁね」だけど、使い道を誤ると「バカヤロウ!」と声にならない声で怒られる。

でも、本当に一番ほしいのは《おかんむり》。うん、《堪忍袋の緒》の予備じゃなくて、絶対《おかんむり》はすぐ欲しい。

 ちょいと、「あたまにくる」ことが発生いたしましたら、本品をうやうやしく取り出し、あなたの頭頂に載せていただくだけでOK。あとはただ黙っていればよいのです。大きく構えていればよいのです。大きな声などださない。暴れたりしない。ただ、冷静に。堂々と!
 周囲の人々は、貴方の頭に燦然と輝く本品を見ながら、「・・・今日は、あの人、おかんむりだよ」「なるほど、相当な、おかんむりだ」と、ささやき合い、静かにそとしておいてくれるはずです。
 そうして、ただひたすら静かに<おかんむり>を頭に載せているうち、しだいに心が穏やかになり、不思議にも、貴方の「怒り」はどこかへと消失してゆくのであります。

『ないもの、あります』「おかんむり」より

久しぶりの再読。『ないもの、あります』。いま必要なのはこういう《ないもの》なのかも。商品No. 001~026。ほしいものがたくさんある。番外品の《ぶっきら棒》なんかも渋くていい。記述がいい。

駄目系商品の《一筋縄》もいい。

<ぶっきら棒>は、一見、無骨で素っ気ない商品なのですが、使い込んでみると、なかなか味わい深いものなのです。

『ないもの、あります』「ぶっきらぼう」より

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