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かんしゃく玉

すぐにカッとする人のことを癇癪持ちという。英語だとshort temperedというのだろうか。決して褒め言葉ではないし、大人の振るまいじゃない。でも、私はどちらかというとそのタイプだ。

かんしゃく玉という言葉を辞書で引いてみた。意外と面白かった。金剛砂ってなんだ? 「ざくろ石を粉末にしたもので、研磨剤に用いられる」って、いわれても、そもそもざくろ石ってなんだ? ああ、ガーネットのことか。確かに色はざくろだし、記憶の中の形状もちょっとざくろだ。でもガーネットって研磨剤なのか? 知っているようでしらないかんしゃく玉。自分の中のかんしゃくの玉もそんな感じのものなのだろうか。

かんしゃく‐だま【癇癪玉】
1 少量の火薬を金剛砂に混ぜ、紙に包んで小さな玉にしたもの。投げつけると破裂して大きな音を出す。
2 癇癪によって起こる怒り。「―が破裂する」

川崎の武蔵新城に住んでいた頃、近所に昔ながらの文房具屋があった。小さな構えの店で、いまどき近所の子どもたちはきっと文房具をイオンやスーパーで買うのだろうと思うとよく商売が成り立つものだと思っていた。それでも子どもと何回かその店に行った。

あるとき、子どもとノートを買いにその店に行き、子どもがノートを買っている間、棚のあたりをみていたら、”爆竹”と書いた箱が置いてあった。箱の中をみると、うん、確かに爆竹だ。

「こんなのまだ売っているんだ」

子どもの頃はよく爆竹やかんしゃく玉で遊んだ。

「爆竹、まだ売っているですねぇ。」
「ええ。近所の中学生とかが買っていくのよ。川の方でやってるんじゃないかしらねぇ」

店のおばさんがいう。

「じゃー、かんしゃく玉とかも置いてるんですか?」
「ええ。ほら、その手前の箱。それがそう。」
「本当だ。へー。」

子どもに、「買ってみるか?」と尋ねる。「うん、うん」とふたつ返事だ。まぁ、そりゃそうだよな。

おばさんに断って、店の前で地面に叩きつけた。パーンと思ったより大きな音がした。子どもはうまく鳴らせない。「だったらこうやって踏むんだよ。」と踏んでみせる。

パーンとまた大きな音。
「な。」
「わかった。じゃ、遊び行ってくるわ。」

彼はかんしゃく玉を持ってそのまま遊びにいった。なんとなく 懐かしい気持ちになった。

感情の癇癪玉は決して褒められたものではない。でも、記憶の中のかんしゃく玉は悪くない。イオンや近所のスーパーでは売られていない。

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