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多様性の分類
直接仕事をしたことはなかったけれど、会社の先輩にあたる小川さんとビールを飲みながら、自然教育園の矢野さんが、「自分の経験から教科書に書いてある実験で同じような結果が出たことは、これまでいろいろやってみたけれどたった一度しかなかった。自然観察の基本は、自分でもやってみること。うまく行かなかったり、違う結果が出たりする。そこでいろいろと考えると本当のことがわかってくる」と言っていたという話をした。
技術畑出身の小川さんは、その話をよくわかってくれた。その上で、こんなことを言われた。
「環境に対する多様性に加えて、相対的な関係が加わるとさらに複雑になるよね。たとえば、教育は人とのかかわりがあるから、本来スタティックな話だけど動的になる。これが企業と企業の関係、あるいはその中での技術の位置づけという話になると、相対的な関係に加え、双方の変化がお互いに影響しあうからさらに複雑になる。向かう方向自体もムービングターゲットで、それも企業間の関係や技術の位置づけに影響するよね。」
本当にそうだと思う。小川さんは「多様性というものも大体そんな感じに分類できるかな」とつけ加えた。
そんな話をしたのはもうずいぶん前の話で、現在の文脈でいえば多様性は《Diversity》という観点で語られることが多いし、上記の話は《複雑性の生成》という文脈なのかもしれない。
それでも、小川さんがいっていた「本来スタティックな話だけど動的になる」という言葉の重要性は今も変わらない。《Diversity》という言葉はスタティックに語られることが多いし、あえて動的な面を強調しすぎればデメリットも大きくなる。けれど、時間軸を10年~30年といった世代が変化するレンジで取れば、スタティックな現象よりも動的な現象という様相が強くなるだろう。
私たちは教科書に書いてあれば信じてしまうし、現在の状況が固定化したように感じやすい。しかし、教科書は書かれるものであり、あえて書く側の視点にたてば、あるスコープの中で書くというのは自然なことだ。だから教科書からは揺らぎや例外の記述は削らざるをえず、AはBだというような記述が自然と増える。読む側も「そういうものか」と思った方が理解しやすい。
だから、いつだって、どんな多様性や変化が存在しえるか、相互の関係が動的にどう影響するのかを踏まえた分類や視点は大切だと思うのだ。