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PTAにおける「ボラの原点」:「任意団体」には”義務”というものはありません。ギビングという”気持ち”が全てです。

 3年前、PTA会長2年目だった頃の「会長エッセイ」です。

 9月終わりから10月は、次年度の「役員」を選ぶ選考委員会(役選委員会などと呼ばれている地域もあります)が起動するタイミングですし、秋の様々な行事が、新学期と共に本格化し始めます。

 同時に、未だにPTAを「学校や教育委員会(行政)の下部組織」だと、ぼんやりと思っている人がまだたくさんいて、切ないぐらいに真摯に、真面目に、家庭を犠牲にして「やらねば」と頑張ってしまいそうです。

 地域の友人たちとの楽しい活動は、驚くほどグッドセンスとパワーで運営しているのに、「学校PTA」になると萎縮と気張りのスイッチが入って、半分苦役となって、次に「あの人は私ほど苦しんでいないではないか?」という、本筋とかけ離れた「一人一役」という悪平等メンタルになってしまいます。

 会長だったあの頃、「頑張らなくていいですよ。家庭を優先ですよ」と呼びかけたエッセイを、ここに掲載して参考にしていただきたく思います。

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会長エッセイ

 秋の新学期が始まりました。10月は、色々と行事が計画されていて、PTAには慌ただしい空気が流れ始めています。遊び場祭りや年末にはボロ市などもあり、会長としては保護者の皆さんの献身的なご協力に、毎年感謝することばかりです。

 皆さんはPTAのポイントを色々とらえていて、「大変な仕事だけどポイント分はちゃんと貢献しなければ」と、お子さんの卒業までの期間を考えながら計画を立てられていると思います。この時、垣間見られるのが、少なからずの皆さんが「ボランティア」と「義務」との違いを混同なさっていることです。

 無理もありません。日本の社会では、「義務」という言葉の意味が非常に広くとらえられているからです。私たちが「PTAをちゃんとやらないといけない」と考える時、この気持ちの中心は「みんなに迷惑をかけてはいけない」というものです。

 ですから、役員や正副委員長や係を引き受けた方は、生活の事情が変化して、当初想定していた通りには活動できなくなっても、「一度引き受けたものを止めるわけにはいかない(迷惑はかけられない)」と考え、相当の無理をしてしまうのです。チーム仕事の多いPTAでは「やり遂げるのが義務」という考え方は広く浸透しており、そこをはずすと「顔向けができない」となります。

 しかし、「義務」とは必ず「権限や責任」とセットになって出てくる考え方です。権限と責任を背負う組織の上位者(会社の上司など)には、それゆえ事態をちゃんと管理するための努力「義務」があるとなるわけです。

 でも、私たちのやっているPTAは任意の(好きで勝手に作っている)団体ですから、一定の決まりごと(お金の管理や選考委員会の独立を守るなど)はありますが、もともとは「やってあげたい」「子どもや地域のための力になりたい」という「ギビングという気持ち」でなされているボランティア団体であって、本来的に「義務」という考え方とは異なるものです。

 はっきり言ってしまえば、PTAのワークには「義務」はありません。「(ありがたいことに)こんな子育てや仕事で大変なのに、やってくれたんだ!」という「感謝の気持ち」だけを受ける活動です。そして、それこそを「ボランティア」と呼ぶのです。

 PTAワークを「やって、やって、やりきって、迷惑をかけないのが義務」という、その気持ちは、やっていただいている側からはありがたいのですが、こうした「義務感」は多くの人たちに伝染します。「ちゃんとやらなきゃダメでしょ?」という言葉に「え?ちゃんとやらなくていいよ」とはなかなか言えないからです(私はたまに言いますが)。

 そうすると、気がつくと「与える活動」、「ありがたい活動」のはずだったPTA活動が、「労働」「労役」になってしまいます。そういう強い力が働いてしまうのが、私たちの使う「義務」という言葉なのです。もし、PTAの活動が苦しかったり、いつのまにか「やらなきゃならない仕事」になってしまっていたりしたら、それは「義務」という強い言葉に縛られてしまっているからなのかもしれません。

 こんなことを言うと「それじゃいい加減でいいの?」と言われそうですが、そうではありません。私が言いたいのは、「もし生活上、うまくいかないことになったら、家庭の事情を優先してください」ということです。家庭の事情で活動を休んでも、何かがマイナスになるわけではありません。そして、事情が許し、またギビングしていただければ、「ありがとう」とお伝えしたいだけです。

 活動が多忙になると、時としてこういう原点を置き忘れることがあるものです。是非とも、今後の活動やお手伝いに際し、過剰な「義務感」に縛られることなく、無理なくご活躍いただきたいなと思います。

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