科学的介護情報システムLIFEの改善点を考えてみた
こんにちは。
厚労省が提供する科学的介護情報システムLIFEのテスト環境を触ってみた感想と、改善した方がいいなと思う点を列挙していきます。
ザックリまとめ的な感想を一言で言うと、
「全体的な設計のせいですごくダメに見えるけど、個々のページは思ったより入力しやすかった」
「ユーザーが使うことをほとんど考えていない」
ってカンジです。
前半は全体的な設計について、後半は細かいことについて書いていきます。
介護業界やWebアプリが大好きな人として、そして納税者としてどうしても言いたいことを言わせていただきます。
(結構長くなってしまった…)
Webアプリに見せかけてそうじゃない…?
LIFEが使いづらくなっている原因は、個人情報がブラウザに保存されるというよく分からない仕様になってることです
せっかく入力画面が悪くないのに、ここの設計のせいで本当に使いにくい。
僕でも戸惑うことがたくさんあるので、慣れていない現場職員さんだともっと分からないと思う…
仕様自体を説明するのが難しいので、どういうことが起こるかと言うとこんなカンジ。
・LIFEを起動するのに専用ランチャーが必要
・パソコンやブラウザが変わるとLIFE上で利用者名が見えず、割り振られたIDしか見えないから誰が誰か分からない
・他のパソコンで利用するにはバックアップをエクスポートして、インポートする必要がある
・暗号化キーとか普段システムに接している自分でも難しいし、現場の人はほぼ理解できる人いないと思う…
・よく考えると匿名化したデータを元にフィードバック送られるが、それって誰のものか分からなくないか…?データを送ったパソコンからしか判別できないし、印刷しても名前の表記がないと思う
・IEかEdgeどちらかしか使えない
・というかIEのサポートは2022年の6月に切れるけど、推奨ブラウザにしていいのか?今IE使ってる人がこのタイミングでEdgeに変える時どうするんだろう?
・おかげで基本的にMacからは使えない(裏技的にChromeで使えたり、Pararellsを購入すれば使えなくはない)
・WebアプリらしくAPI実装してほしい!CSV連携はエラーをユーザーが確認しないといけないのでたいへん
・これはWebアプリと呼んでいいのか…クラウドとは。
「なんでこんな仕様になったんですか…?セキュリティで懸念していることがあるのでしょうか?」と、厚労省の老健局に電話で確認をしてみました。
「セキュリティの話ではなく、厚労省が個人情報を持つことがいかがなものかという観点から、CHASEの時点でこのような仕様になっています。ベンダーが決めたことでなく、こちらからこの仕様で発注しました。」とのことでした。
んー、これに限らず厚労省が個人情報をすでに持っているやろし、なんだかソリューションがイマイチだと思います。
「厚労省はもし情報が漏れた時の責任を負いたくない」みたいな捉え方をされても仕方ない…
そもそも現時点で利用規約やプライバシーポリシーがあるのか?とか介護事業者は統計のためにデータを提供することを利用者と合意しているのか?とか気になりはじめました。
LIFEと連携しているベンダーも合意を取っているのだろうか…?
ここのWebアプリっぽいけどちょっと違うような仕様のせいで、本当に使いづらいです。
個人情報保護を担保した上で、使い勝手を向上させる方法はもう少し考えてもいい気がします。
というかここの設計ってもはや改善レベルじゃなく、イチから作り直さないとムリかも知れない…
権限付与がイマイチ
LIFEのユーザーには2種類の権限があります。
もし自分が管理ユーザーと登録職員なら、作業内容によってログイン・ログアウトが必要になります。
ログインは一本化して、権限によって表示される画面を変える方が使いやすい。
あと記録職員はLIFEにログインできません。つまり登録職員が記録職員のものを代わりに入力する…?
記録職員の存在意義とは…それなら最初から操作職員で登録すれば…と思うけど…
もはや登録用のパソコンとログイン情報を使いまわした方が入力しやすそうです。
重複項目が多い
これまでは全体的な設計について書いてきましたが、ここからはそんなに時間をかけずに対応できそうなことを書いていきます。
まずは入力画面の重複項目が多い。ホントにここは早く対応した方がいい。
例えば身長や体重ですが、複数入力箇所があります。
しかし連動されていないので、何度も入力しないといけない。
めんどくさいのはともかく、違う数値を入力してもデータの保存ができてしまいます。
基本情報では180cm、80kg、他のアセスメントでは150cm、45kgみたいなことができます。
これではいくら統計を取ろうとしても、入力が違うせいでおかしなフィードバックが返ってくる可能性があります。
手間とデータ保全の観点からソッコーで直してほしいところです。
未来日が登録できる
ここまでのところさえ改善すれば、「LIFEの使い勝手ええやん!」って言ってます。
これからは細かいけど気になっちゃったところ。
例えば評価した日付や生年月日が、未来の日付でもエラーが出ずに保存されてしまいます。
やろうと思えば「めんどくさいから3ヶ月後の評価今入れちゃえ!」みたいなのができます。
こちらも正しいデータが届かない恐れがあるので、バリデーションかけた方がいいですね。
あと日付選択するライブラリが使いづらい…プルダウンの方が入力しやすいと思う。
今だとずーっと昔まで選択肢が出ちゃうので、1000年1月1日まで登録できます。
誕生日や評価日が平安時代ってまずないやろ…笑
ここも別にいいけど気になるところ。
バリデーションエラーがあとから出てくる
例えば「パスワードは8〜16文字の英数字」みたいな制限があります。
これが最初から表示されておらず、入力後にエラーみたいにメッセージが出てきます。
こまかいけどイラッとするやつです。条件がある場合は最初から表示してほしい。
アクセスしづらい時間帯があるらしい
ログイン画面に
9:00~11:00、16:00~18:00の時間帯はアクセスが集中し、ログインに数分かかる場合がございます。
と表示されます。
…どういう仕様なんや…
ログインIDを変更できない
事業所番号と8ケタの数字を組み合わせたIDが付与されますが、覚えにくい…
ここは自由に変更できるようにしてほしいですね。
外部システム管理番号がだいぶ意味不明
LIFEへの利用者登録時とアセスメントの登録時に外部システム管理番号が付与されます。
LIFE側で採番されるのではなく、連携するシステムを付与する必要がありますが、かなりイマイチな設計です。
これだけで記事が書けちゃうので、詳細は割愛させていただきます。(困るベンダーさんいると思うからまとめ記事書くかも)
404の画面表示がなんか違和感
https://life.mhlw.go.jp/404の表示がコレモンです。
【アプリケーション障害が発生中です】は、いらんと思う…ユーザーからしたらエラーが起きたように見えてしまう。
細かいけどやさしさが足りていません。
ヘルプデスクからの回答が遅い
僕が問い合わせをした時は、3日間返信がなかったので電話で催促しました。
そしたら次の日に返答が返ってきました。
最近は返答が早くはなっていますが、一次回答が「ちゃんとこのへんのドキュメント読んでますか?もし載ってないなら再質問してね」といったテンプレが返ってくるので、ストレスが溜まります。
ヘルプデスクに質問がめっちゃ飛んでるのは想像できますが、仕様がややこしいせいだと思います。
いくらヘルプデスクを増員してもキリがないような…
個人的な哲学ですが、UIやUXで問題解決するのがソフトウェアなので、ヘルプデスクはないことがイチバンだと考えています。
そもそも質問が来ない設計を目指すべきです。
入力画面が悪くないからこそ!
LIFEを実際に触ってみましたが、本当に各入力画面は割と使いやすいです。
細かいところはさておき、重複項目さえ連携してくれたら、介護ソフトへの入力よりも直接入力する方が早いとさえ思います。
だからこそ、ナゾなWebアプリっぽいよく分からない仕様をなんとかしてほしい!
そのせいでログインという最初のステップでつまづくから文句言われてしまうし、LIFEが全体的にダメアプリに見えてしまうし…
ホントそこだけなんとかならないかな…マジでもったいなすぎる。
今回はこういう記事を書くということを、老健局の方にも電話で伝えておきました。
作った以上は使った方がいいと思うし、まだ分からないけど科学的介護がすごく役に立つかも知れない。
だからこそLIFEがもっと使いやすくなればいいし、何か協力できることがあればしたいなーとは思います。
検討のプロジェクトとかに呼んでもらえないかなー?と思う今日このごろです。
(でもリモートじゃなかったらイヤなので、叶うことはないと思う…)