日本人の祖霊信仰がもたらした大いなる遺産
靖国神社や全国にある護国神社には、国家のために戦ってお亡くなりになった英霊の御霊がお祀りされていることで知られていますが、神道では人は死後に、その家を守る神になると考えられています。
神道の祖霊信仰
もちろん、ごく普通の人がお亡くなりになった直後に、神社でお祀りされている神様のような偉大な力が発揮できる神様になる訳ではありません。神レベルに到達するには相当の時間を要します。
まずはこの世に残された家族が自宅の御霊舎で祀ることによって故人の御霊を鎮め慰めます。
亡くなったばかりの御霊は悲しみや苦しみ、反省や後悔といったこの世に執着を残していたり、マイナスな感情を抱えた状態となっている場合があるので、まずはその御霊の魂の状態を安定させるようにお供えをしたり、御霊が安らかであるよう祈りを捧げてお祀りします。
近畿地方では初盆に「荒棚(あらたな)」という特別な祭壇を設け、ご先祖とは別に祀る風習が今でも残っています。亡くなって年月が経たない御霊は荒々しい状態のため、家の外で祀り災禍が家内に及ばないように対策をしていたと考えられています。
さらに幽冥界という死者のゆく世界を主宰する大国主命。そして武蔵国、相模国といったその人の生まれた国土そのものを神格化した国魂の神であったり、国で一番格式の高い一宮の神、また生まれ育った地域を守る氏神、産土神。こういった神々の導きや手助けを受けて、徐々に神様としての力を増していくと考えられています。
子孫は先祖の御霊がより位の高いに付けるように先祖に祈ると共に、神徳の高い神々に対して、先祖の御霊を高い位へと引き上げてもらうように祈る。このように押し上げる祈りと、引き上げを願う祈りで、ご先祖の霊格が高まっていき、子孫繁栄へと繋がっていく。神道ではこのように考えられています。
仏教の先祖供養
一方、日本人の多くは仏式で先祖供養を行っています。日本の仏教で最大宗派とされるのが浄土真宗です。(浄土真宗本願寺派784万人、真宗大谷派735万人) 浄土真宗では一切の先祖供養を行わなくてよいとされています。
浄土真宗では「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」という思想があります。これは、自らの行いで成仏するという他の宗派の考え方とは異なり、人は亡くなると阿弥陀如来(あみだにょらい)の手によって即座に極楽浄土へ連れて行ってもらえるという考えです。
このため、浄土真宗では、先祖の成仏を祈るということを必要とせず、先祖供養という考え方そのものがないともいえます。よって仏壇や位牌も必要ありませんし、お墓も必要ないとされています。しかし実情はその教えとは違い、必ずといっていいほど、どの信徒の家庭でも仏壇を祀り、お盆やお彼岸にはお墓や納骨堂にお参りに行きます。
お寺側の見解では仏壇は阿弥陀仏を礼拝するためにあり、法要やお墓詣りを行う理由は、生前の故人を偲び、仏の教えに接する機会を得るきっかけ作りとなるからだそうです。このように浄土真宗では、人は亡くなると阿弥陀如来の手によって極楽浄土へと連れていかれ、仏になると言われていますが、これは神道とは全く異なる考え方です。
先祖は身近な場所に居るというのが神道の考えであり、日本人本来の感覚ですから、この世と隔絶された遠い世界へと先祖が旅立って行くとは考えにくい。そのため浄土真宗の教えではそうであっても、多くの人が仏壇に手を合わせ、お墓詣りに行くのだと考えられます。祖先は身近な存在であって、いつもそばで見守ってくれている。このような信仰心が日本文化には根付いているように思います。
神道の根底には祖霊信仰あると考えられています。ご先祖が神様となって自分たちを見守ってくれている。だから日本人は正直に生きようとします。ご先祖様が見ているから嘘をつかない。人を騙したり、卑怯なことはしない。仕事の手を抜かない。
日本人は何事にも我慢強く耐え、努力を惜しまない民族です。戦後の焼野原からわずか20年という月日で経済復興を果たし、新幹線を開通させ、オリンピックを開催しました。
その後驚異的なスピードで経済成長し世界第2位の経済大国となりました。度重なる地震、津波、水害などの自然災害に遭っても挫けることなく復興を遂げてきました。
この根底にあるのが、「人は一人で生きているのではない」という考えを持っているからだと思います。
日本人は全員が遠い親戚
日本人はお互いに助け合う民族です。人は3代遡ると14人もの親とご先祖がいます。10代遡ると2,000人、20代遡ると200万人、28代まで遡るとなんと1億人を超えるご先祖様がいることになります。28代といえば今から大体、600年ぐらいの昔なので室町時代です。
この1億を超えるご先祖様のうち、1人でも欠けると、現在の1人の人は存在しません。それどころか、昔の人が1人欠けていたとすると、多くの人が現在存在しないことになります。
1人1人の存在がどれだけ重要であるかが分かります。1人の人間にこれだけ多くのご先祖が必要となるということは、我々日本人のほとんどが遠い先祖を辿ると親戚同士であることになります。そう考えなければ計算が合いません。
島国の限られた土地で婚姻を繰り返し、ほぼ全員が親戚関係となったのが我々日本人なのです。古くから日本列島に暮らしてきた日本人に関しては、父方母方のご先祖を何代か辿っていくと皇室に繋がっているといいます。日本人の総本家が皇室にあたり、それが驚くことに今でも続いている。つまり我々は同族ということになります。
だから日本人はお互いに助け合って生きています。そしてこのあり方を世界に示し広めてきました。日本人は世界のありとあらゆる民族のDNAを引き継いでいる存在であり、世界の人々と親戚関係にあるという特殊な立場だからこそ、これが可能だったのです。
災害復興支援や経済援助、技術援助と世界が貧困や飢餓に苦しむことなく平和で豊かであるように、日本は戦後一貫して平和国家としての務めを国際社会で果たしてきました。
日本は世界に調和をもたらす民族であると私は確信しています。
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