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日本神話解説10 人間の寿命が短くなった理由

地上に降り立ったニニギは笠沙の岬というところで木花佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)という美しい女性の神様と出会い、一目惚れした様子でさっそく求婚します。

その父である大山津見神(オオヤマツミノカミ)はそのことに喜び、姉である石長比売(イワナガヒメ)も一緒に嫁がせようとするのですが、お姉さんは何といいますか、あまり容姿的に好ましくなかったようでして、ひどい話ですが、ニニギはあろうことか、お姉さんだけを送り返してしまいます。

オオヤマツミはニニギの命が石のように長らえるように誓(うけい)をしてイワナガヒメを送ったので、「今後天つ神の御子といえども、寿命は木の花のように儚いものとなるだろう」と言ったそうです。この時から人の寿命は短くなったということです。ルッキズム=外見至上主義によって、様々な弊害をもたらすという神の教えが実は日本神話の中にもあったのです。

人間には何故寿命があるのかについては、寿命が遺伝子にプログラムされているという説があります。体細胞はその種類によって細胞分裂の限界がると考えられていますが、染色体にあるテロメアは細胞分裂ごとに短くなることから、細胞分裂の限界回数を決定していると言われています、そして老化の原因についてもテロメアによって細胞死がプログラムされているからだと考えられています。

さらに長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子が存在していることが確認されています。遺伝子を操作し、テロメアをオフにしたり、サーチュイン遺伝子をオンにする技術が確立すれば、我々人間は千年程の寿命を得ることが出来ると考えられています。

旧約聖書に登場する人物は数百年の寿命を持つ人はざらにいますし、初期の歴代天皇は全て100歳を超える長寿でした。そんなに長生きするはずがないので誤った記述であると、歴史家たちに片付けられてきましたが、本来人間の寿命は今よりもずっと長かった可能性は否定できません。

このニニギとコノハナサクヤヒメと結婚するエピソードは、何らかのきっかけである時人間の遺伝子に変化が起こり、人間の寿命が短くなったということを示唆する話ではないかと考えられるのではないでしょうか。

その後ニニギはコノハナサクヤビメと一夜の契りにて懐妊します。これはおめでたい‼と、言いたいところですがニニギはコノハナサクヤビメを疑って「自分の子じゃないだろう、国つ神の子だろう」と疑います。

するとコノハナサクヤビメは「ニニギの子でなければ無事産まれまい」と言い、産屋に火を放ち、火が燃えさかる中で出産しました。この時に生まれた子が火照命(ホデリノミコト)、火須勢理命(ホスセリノミト)、火遠理命(ホオリノミコト)という三柱の神様でした。

コノハナサクヤビメは天孫の血統がこの地上に正しく受け継がれたことを命がけで証明しました。「女は度胸」という言葉がありますが、正にそのことを、身をもって示されました。コノハナサクヤビメの「この花」とは日本を象徴する「桜」であり、日本を象徴する富士山の神霊としても知られています。

その後、コノハナサクヤビメは富士山の噴火を鎮めるために自身が守り神となり、富士山の頂上から花の種を巻いて、日本中の国中に桜を咲かせたという話が残されています。まさに日本文化の象徴である桜と富士山信仰の生みの親とも呼べる神様です。

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