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サマソニの苦悩と挑戦、SUPERSONICヘッドライナー解説

4月上旬、SUPERSONICの第一弾ラインナップが発表されました!!!
今年は東京オリンピックの影響で毎年夏に開催されてるSUMMER SONIC(通称サマソニ)が開催されないため、代わりに秋に少々規模を縮小したSUPERSONICが東京/大阪で開催される!
サマソニ以外もオリンピックの影響で開催されないフェスがたくさんある中、新しくフェスを開いてくれる運営会社のクリエイティブマンには本当に感謝の気持ちで一杯である。そしてやっぱりラインナップ発表で盛り上がる音楽好き達のツイートを眺めるのが凄く楽しい!!!
今年はThe 1975、Skrillex,、Post Maloneと本当に豪華なヘッドライナーを呼んでくれて、マジで今から開催が待ち遠しい(正直コロナの影響で本当に開催されるか見通しはつかないけど…)

とはいえ僕は普段から熱心に海外の音楽を聴き、毎年サマソニに足を運んでいるからこそ、このラインナップで興奮している訳だが、正直熱心に音楽を聴いていない人や、邦楽ロックフェスには行くけどサマソニやその他洋楽フェスに行ったことない人からすると、あまりピンとこないラインナップではないだろうか。
近年の海外の音楽事情やサマソニの歴史などを知らないと、このラインナップで盛り上がるのは難しいのではないだろうか。
ということで、2014年から毎年サマソニに参加している僕が、その辺の事情も含め今年のSUPERSONICのヘッドライナー達を簡単に紹介したいと思う!

サマソニの苦悩

音楽にあまり興味ない人でも名前ぐらい聞いたことのある音楽フェスの1つ、SUMMER SONIC(通称サマソニ)
去年で開催20回を重ねた老舗フェスで、開催規模も日本有数。FUJI ROCK FESTIVAL、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ROCK IN JAPAN FESTIVALと並べられ、日本4大フェスとも呼ばれている。
毎年8月に東京/大阪の2会場で同時開催され、2日間のラインナップが東京/大阪で入れ替わるのが特徴のフェスだ。
東京は幕張、大阪は舞洲と両会場とも都市部からのアクセスがよく、気軽に軽装で行ける"都市型フェス"と呼ばれている。
開催初期はバンド中心のラインナップで、ヘッドライナーは海外の大物ロックバンドっという形が多かった。
ただ近年はかなりジャンルレスなラインナップで行われており、EDM系のDJからHipHop、女性ポップシンガーからK-Popグループ、日本のアイドルと様々なアーティストが並ぶ。
1日はロックの日、もう1日はポップの日みたいに、日ごとでジャンルが大きく分かれるのも近年の特徴だ。
20年の歴史の中で世のトレンドや時代の変化をラインナップに反映させており、"サマソニに行けば世界の流行が分かる"といったフェスである。

とまぁざっくりとサマソニを説明してみたが、ただ参加してる身として感じる印象として、近年なかなか苦戦している。
昨年は20周年ということもあり全日程Sold Outだったが、それ以前の年ではチケットは前日でも普通に買えていた、当日行ってみたら人いなくてガラガラ、なんて年もあったり。
1997年にFUJI ROCK FESTIVALが誕生して以降、日本では新しい音楽フェスがどんどん増え、特に近年はブームを経て”娯楽の定番"になりつつあるが、そんな世の流れの波に乗り切れなかったフェスでもあるのだ。
その理由を僕なりに考えてみたいと思う。

ブランド化できなかったサマソニ

上の記事に書かれているように、サマソニの動員はラインナップ、特にヘッドライナーに非常に左右されている。
都市型フェスの宿命とはいえ、体感的にも参加を決める多くの人がラインナップによって決めている印象が非常に強い。
音楽フェスが乱立する昨今、各フェスが音楽だけじゃないプラスαの"特別な体験”で差別化を行っている中、サマソニはなかなかそこを生み出せず、苦しんできた。
"大自然の中での特別な音楽体験"としてFUJI ROCK FESTIVAL、都市部に生み出す”圧倒的非日常感”が売りのULTRA JAPANなどが動員を安定させてきた中で、サマソニの特別な体験は、あくまで"音楽"であり続けた。世界的なトレンドを反映したラインナップが一番の醍醐味であり、それらアーティストが一同に集いライブを行うことが何よりも"特別な体験"であった。
ただ、それは世の人達にとって”行きたい"という動機にはならなかった。

そんな中でもなんとか動員を保てたのはヘッドライナーのおかげであった。
多くの人が”見たい”と思うヘッドライナーを保てたからこそ、サマソニは続いてきた。
ただ、ヘッドライナーに関しては、世界的なトレンドを反映しているとは言い切れないラインナップであった。

取り残された日本

日本は洋楽が人気がない。
黄色いCDショップは邦楽コーナーは若い人で賑わっているのに対し、洋楽コーナーはガラガラ。各種音楽ストリーミングサービスの日本チャートに並ぶ楽曲も、ほぼほぼ邦楽アーティストで埋め尽くされている。
とはいえ数は少ないけれども、サマソニに足を運ぶような洋楽リスナーも日本にいるのだが、ただ彼達にとっての洋楽と世界のトレンドは異なっていた。

世界の音楽のトレンドは頻繁に変化する。
2010年代だけを見ても、女性ポップシンガー→EDM→Rap/HipHopと大きく移り変わってきた。
ただ日本の洋楽リスナー達のトレンドはほとんど変わらない。いつまでも彼らにとっての主役はロックであり、バンドであった。
ただ世界的にみると、ロックはジャンルとしては人気に陰りが出てきており、新しいバンドも出てきてはいるものの、世界的な人気を得ている新しいバンドがほとんどいない。
そのため、今日本でヘッドライナーが出来る程の人気と知名度を持っているバンドというのが、90年代に全盛期を迎えたバンドばかりとなってしまっているだ。
実際サマソニも彼らの為に、今でも1日は必ずロックバンドがヘッドライナーとしてラインナップされている。ただそのメンツを見てみると、近年で若くしてヘッドライナーを行ったバンドは2007のArctic Monkeys(当時21歳)ぐらいで、それ以外はほとんどがおっさんばかりだ。
ただ、流石にそこに陰りが見えてきた。
20年前の名曲が売りの50を過ぎたおっさん達では、スタジアムを埋めつくすのが厳しくなった。
とはいえ彼らに代わって、スタジアムを埋め尽くせるアーティストがいない…
なので近年は日本の人気バンドをたくさん入れ、なんとか動員を確保し区切りの20周年まで耐え続けてきたわけだが、このままでは次の10年を迎えるのはかなり険しくなる。
今年はオリンピックで1年休むけど、今何か策を打たなければ大変なことになる…

とまぁ、一部僕の想像ではあるものの、そういった事情を踏まえて今回のSUPERSONICのヘッドライナーを見てみると、クリエイティブマンが次の10年を見据えて非常に大きな”挑戦”を行ったと見える。
ということで次は各ヘッドライナーを紹介しつつ、その"挑戦"を見ていきたいと思う 

The 1975

サマソニファンからすると"やっとヘッドライナーとして帰ってきた!"と思った人も少なくないだろう。2013年の初出演か毎年のようにサマソニに出演、どんどんと大きなステージへと成長し、遂にヘッドライナーとして帰ってきてくれたバンド、THE1975。
イギリス、マンチェスター出身の4人組ロックバンドで、2016年に2dnアルバム『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful yet So Unaware of It』でUS/UK両チャートで1位を記録した2010年代を代表するバンドの1つである。
今や海外ではヘッドライナー常連で、昨年トリのB'z前にラインナップされたときは、”なんでトリじゃないんだ!B'zと逆だろ!”って声も一部では上がっていたりと、日本でも人気のある彼ら。
サウンド的には甘くポップでオシャレにキメた感じだが、歌詞や言動はシリアスなメッセージや政治的な主張も込められることも少なくない。
特にボーカルのマシューのカリスマ性、壊れてしまいそうな危うさの中にある強さには、多くの人が魅了されているのではないだろうか。
バンドというフォーマットがグローバルな音楽シーンで存在感を示せない今に、バンドというスタイルを維持したまま、確かな地位を確立した本当に稀有な存在である。
次のヘッドライナーを探し続けていたSUPERSONIC/サマソニとしても、ようやく見つけたバンドであり、しかもサマソニで育ってくれた縁深いバンド。
ロックファンならば、サマソニファンならば、次の世代を託された彼らのステージを見ない理由はないだろう。

Skrillex

2日目のヘッドライナーはEDMの世界からSkrillex。この日は彼以外にもKYGOも既に発表されており、おそらくその他DJも集められEDM中心のパーティーなラインナップになるのは間違いないだろう。
このEDM路線は、ここ近年の悩みの中から生まれた、サマソニの新しい方向性である。
2011年から始まったサマソニ前夜のオールナイトイベント、SONICMANIA。その中で数多くのDJを呼び、ダンスミュージックの地盤を整えてきた。
そして世界的なEDMのムーブメントの中、ZeddやAlessoなど今を時めく人気DJを重要な時間帯にラインナップさせ、そして2017年にはついにCalvin Harrisをヘッドライナーにするなど、様々な挑戦しながらEDMをサマソニに根付かせてきた。
そしてこのタイミングで宇多田ヒカルやJustin Bieberとのコラボもあり、独創性やジャンルの幅の広さからEDMファン以外からも多くの人気を得てるSkrillexで、EDMを完全にサマソニファンに"当たり前"とすべくラインナップしてきた。

Skrillexはダブステップ/ブロステップというジャンルのサウンドで一躍有名になり、今やEDMの中の大枠"ベースミュージック"の顔とも言うべき存在。
モッシュ・ヘドバンが起こるような凶暴なサウンドで作り上げられる彼のライブを是非とも多くの人が味わっていただきたい。
特に"モッシュ/ダイブはロックの盛り上がり方"と思っている人にこそ、EDMの世界にあるエネルギッシュなライブを体感していただき、"ここにも同じような楽しみ方があるんだ”という発見をしていただきたいと思っている。

Post Malone

個人的に一番興奮したのは彼、Post Malone!
まだ24歳と他メンバーよりダントツで若く、そして圧倒的に今旬なラッパーである。
昨年リリースした3rdアルバム「Hollywood’s Bleeding」はビルボードのアルバムチャートで初登場1位を記録。その後3週連続で1位に君臨した後も度々トップに返り咲き、”2019年はPost Maloneの年だった”と言っても過言でない活躍であった。
rap/hiphipは特に世界との人気の差が激しく、日本ではまだいまいち浸透していない現状の中で、ラッパーである彼をヘッドライナーにする決断を下したことは、SUPERSONIC/サマソニにとって非常に大きな”挑戦”であり、”サマソニが日本の音楽シーンを変えていくんだ!”という強い意志を感じた。
”日本にrap/hiphipを浸透させ、今後も世界的なトレンドを反映したフェスであり続けるんだ”というメッセージを僕は受け取った。

さて、目下リアルタイムで世界トップの彼だが、実は元々ロックが大好きなギター少年だった。
オーディションに落ちたのがきっかけでラッパーに転向、楽曲投稿サイトSoundcloudに自らが作った曲を上げるとそこで火が付き、破竹の勢いでスターの道を駆け上る。
1stアルバムからJustin BieberやMigosのQuavoなどを客演に迎える期待度の高さ、そしてアルバムリリース後に出したシングル”Rockster”でビルボードのNo.1を獲得。
後にリリースした2枚のアルバムは、いずれも世界各国のチャートで1位を獲得し、音楽界のスーパースターの仲間入り。各種ストリーミングサービスのグローバルなチャート上位は今なお彼の曲が入り続けている。

彼の楽曲はhip-hopで流行りのTrapだけじゃない。ラップだけじゃなく歌も歌うし、ロック、アコギでの弾き語り、ポップスだって歌う。何でもあり。
だからこそ人を選ばず、皆が彼の曲を好きになってしまう。hip-hopに馴染みのない人でも、アルバムを通して聴けば必ず”好きだ”と思える楽曲に出会ってしまう。
ただ歌詞は暴力的・拝金主義的内容も少なくなく、見た目も顔までタトゥーを入れ、怖いイメージを抱いた人も少なくないと思う。でも実はゲームが大好きで、Twitchでゲーム実況を行っていたり、また日本のアニメキャラのタトゥーを体に入れてたりと、"今どきな若者"の側面もある。
函館にお忍びで来日し、地元の夏祭りに溶け込んでいた姿がInstagramに投稿されていたりと、日本人としても親しみを感じる姿がたくさんある。
オールドスクールなラッパー像、セレブ像とは違う、誰もが愛せるスターであるのだ。
だからこそ、この日本でもヘッドライナーを託された。
彼の渋くかっこいい姿と、お茶目でかわいらしい姿に、多くの人が好きになってしまのではないかと期待している。

変わることは面白い

僕は"変わること"が面白くて海外の音楽に興味を持った。
だから、サマソニが大好きなんだ。
ネットじゃよく愚痴られてる、批判されてる、決して賛辞ばかり言われるようなフェスではない。
でも、いつだってサマソニは変わり続けてきたし、"変わること"の面白さをいつも届けてくれた。
僕が27歳になった今でも、音楽が好きで、新しい音楽に出会って興奮する毎日を送れているのは、サマソニのおかげだ。

今こんな世界だけど、音楽はいつだって僕を楽しくさせてくれる。
だから皆この秋、SUPERSONICで僕と一緒に踊ろうよ。

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