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太田市美術館・図書館3周年/「HOME/TOWN」とはどこか?
太田市美術館・図書館5/30まで開催されている開館3周年記念展「HOME/TOWN」の展示ダイジェスト映像が公開。撮影・編集を担当した。
開館記念展「未来への狼火」から早くも4年。太田市美術館・図書館とはその開館当初から映像記録で関わらせていただいており、3周年と聞いてあっという間を思う一方で、その間に行われてきた展覧会の豊富さを眺めると「積み重ねられてきたもの」の厚さを感じる。
「HOME/TOWN」展は太田市育ちの美術家・片山真理さんと、太田市生まれの写真家・吉江淳さん、そして太田市で詩作活動を続けた故人・清水房之丞の3者による展覧会。単なる太田市関係者による展覧会でないことは、ダイジェストを見ていただくだけでもわかっていただけると思うが、展覧会の意図等はこの投稿の最後に紹介する、吉江さんとこの展覧会をキュレーションした小金沢智さんとの対談動画を見ていただきたいと思う。
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よってここには、展覧会撮影の時に感じたことを書き残す。
撮った後に言うのもなんだが、写真を映像で撮る、という行為はしてはいけないことのように思う。フレームは写真家によって厳密に決められたものだし、本来であれば映像ができることは視線の誘導なしに写真のフレームをそのまま提示する、ことしかないようにも思うからだ。
が、僕は無謀にも展覧会記録において片山さんの写真を人物から背景に移動(パンアップ)をした。それは、セルフポートレートを中心に身体を主としてみられることが多いであろう片山さんの背景に、太田の川が映っていたからだ。人物と、その人物が立っている場所との関係性はこの展覧会において重要な部分。ダイジェスト映像ではごく一部しか見られないが(ロングバージョンは会期終盤に公開予定)、2階で展示されている片山さんの新作「ashio copper mine」においては、カメラを向ける対象は太田市から近い距離にある旧足尾銅山とその周辺となる。景色を映してもそれが片山作品であり続けるのは、構図や対象の取捨の秀逸性もあるが、「景色にまなざしを向ける私、それを突き詰めた上での片山さんの身体性」までもがその写真に含まれているからのような気がする。これは美術館で見ないと伝わらないことだと思う。
写真と映像の違いは、吉江淳さんの作品を見ていると明確になる気がする。映像は、時間によって人や景色が動き、伝わる内容や意図も変わっていく。だから鑑賞者である私も映像の変化に合わせて色々なことを思う。だが、写真は動かない。基本、音もない。であるから鑑賞者である私が動くのみである。歩きながら見てみる、じっと止まって正面から時間をかけて見てみるという体や視線の動きのみではなく、心も動く。吉江さんの写真は、絶妙な一定の距離感と視線をもって「写真が持つ意味をそぎ落としていった」静かな写真だと思うので、鑑賞者の心の動きがより明確になる写真であるようにも思う。これもまた、美術館で見ないと伝わらないことかもしれない。(が、吉江さんの写真の特徴については、対談動画で丁寧に語られているので、それを見てから美術館へ行くとなお良いかと!)
今展示において、お二人の写真作品の間に間に清水房之丞の詩が入っていることも、とても重要なことである(詩によって表情を変える文字展示のデザイン・制作は、展覧会フライヤーや図録も手掛ける平野篤史さんによるもの)。一見すると殺伐として見えるかもしれない太田市とその周辺の写真が続くなかで(観光地写真等は皆無という意味で)、房之丞によって書かれる少し昔の太田の地は、緑や水が豊かで地に根差した人々の生活も垣間見れる豊かな場所である(今も完全に失われたわけではないが)。そんな房之丞の詩は、片山さん、吉江さんの写真と対峙し、思考でパンパンとなった鑑賞者の心の隙間に、静かに、細く、血管のように流れる川となると言ったら言い過ぎだろうか。もちろんそれは僕の個人的感想であるが、この3者の絶妙な重なりこそ、美術館で見ないと伝わらないことかもしれない。
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最後に、今日は雨だしコロナでなかなか太田へ行けない方のために、僕が関わらせていただいた映像視聴によっておうちでできるアンオフィシャルな太田市美術館・図書館3周年記念展「HOME/TOWN」展の楽しみ方をお伝えしたい。
1)開館記念パフォーマンス「オオタドン」 を見る
https://youtu.be/sMlNOwUlHAU
2)太田市美術館・図書館を振り返る③太田のはじまりとこれからのこと を見る
https://youtu.be/vS3RplKvu9c
3)開館3周年記念展「HOME/TOWN」展示映像(ダイジェスト版) を見る ===NEW===
https://youtu.be/ksd_LWF29D4
4)吉江淳×小金沢智「対談:ホームタウンをめぐって」 を見る
(ショートバージョン前編)
(ショートバージョン後編)
5)映像ではないが、 プレオンラインプロジェクト「わたしのホームタウン」 を見て、自分にとっての「HOME/TOWN」とはどこかを自問する
6)行ける環境であれば、満を持して開館3周年記念展「HOME/TOWN」へ行く。図録や小冊子もゲットする。行くのが難しければ、会期終盤で公開予定の展覧会映像ロングバージョンまで待つ。
以上。あなたにとっての「HOME/TOWN」は、どこですか?