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触ることの重要性。アートも器も、そして人も/秋、酒蔵にて2024
「中之条ビエンナーレ」も「伊参スタジオ映画祭」も、群馬県中之条町内のいちイベントという枠をとうに越えて、県内でも稀な、全国でも稀な育ち方をしたイベントだと思っている。そして、群馬県内のものづくり作家が集いそれに共感する料理人が県外からも集まり本格料理を提供する「秋、酒蔵にて」もまた、中之条町で開催される全国でも稀なイベントに違いない。全てに関わらせていただいているから特別視しているということは否めないが、アキサカ(「秋、酒蔵にて」の通称)に訪れたことのある人であれば、頷いてくれる人は多いように思う。
明日10/25金~11/4月までの11日間、中之条町の旧廣盛酒造で行われる「秋、酒蔵にて2024」。参加するものづくりは、陶芸・漆器・ガラス・金属・ジャンクアート・江戸小紋・書道・お香・音響製造・華道など多種に渡るが、毎回テーマを設けて作家たちが協働で何かしらの設えを作る。今回のテーマは「B・A・R」これは、お酒を嗜むBARを意味するが読みはビーエーアール。酒蔵一階奥のだだっぴろい空間に、各作家が今回のために作った天板を組み合わせた<<巨大なバーカウンター>>が立ち上がった(カウンターの足の一部には、陶芸の綿貫哲雄氏が建て替えのために崩した薪窯のレンガが使われている)。このバーカウンターは素晴らしい出来なのだが、それはぜひともその目で見て、触れていただきたい。
触れて、と書いたのは、例えばガラスの六箇山工房が作った天板にはガラスが埋め込まれガラスのつるりとした手触りを楽しめる。陶芸チームの机に埋め込まれた陶器は見た目だけではなく触り心地も一片一片が違う。ほか、漆の天板もあるし金属の天板もある。
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今回、この「秋、酒蔵にて」を、僕が昨年から映像記録を続けている下仁田町の彫刻家・三輪途道さんに紹介したところ、出展をする流れとなった。三輪さんが代表を務める(一社)メノキが、アイウェアブランドのJINS等と協働で作り普及活動を行っている「みんなとつながる上毛かるた(絵札がそれぞれエンボスとなっており、三輪さんのように目が見えない方でも触って楽しめるかるた)」の映像と共に、三輪さんが制作した、三輪さんが関わった、プレミアムな立体かるた、石膏心乾漆の鍋作品、脱乾漆のしじみ作品、お蚕さんを鼠から守る蚕神猫だるまなどを展示、販売する。また、10/28月には三輪さんがバーカウンターに立ち、参加者とかるたで遊ぶWSも開催する。
三輪さんが近年よく口にする「触察」という言葉。それはアートに限らない言葉であるが、ごく当たり前と思われる目による鑑賞・観察ではなく、目に頼らず「手で触れることにより、対象を理解しようとする行為」を指す。アキサカでも、三輪さんの作品はすべて手で触ることができる。つるつる、ざらざら、この札は鶴のかたち、この札は世のちりあらう女性のかたち(上毛かるたの「よ」の札は「世のちり洗う四万温泉(中之条町)」で絵札には裸婦が描かれている)。目に頼らない鑑賞は、体の状態に関係なく(三輪さんのWSでは参加者が目隠しを使う光景がよく見られる)新しい可能性を秘めている。
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話を戻して。通販や一部店舗販売と違い、アキサカの大きな魅力もまた「手で触れること」にあると思う。お茶碗にしても酒器にしても家具にしても。見た目の良さで選ぶのも良いが、毎日触るものとして吟味すると、末永く使える一品と巡り合える可能性は高い(できれば、買って唇でも触れてみたい)。
日替わりで名だたる料理人が料理を提供し、本格フラメンコライブも交流会もあるアキサカは、2009年の始まりから「ものの売買だけじゃない、人と人との関係づくり」に注力してきたイベントでもある。それはものづくりと料理人、出店者とお客さんという壁を越えて(今回のテーマに沿えば、エンカウンター・・偶然の出会い、あるいは遭遇)をして、「豊かさ」を共有しようという試みでもある。
目で耳で、そして触れることで、今年のアキサカを楽しんでいただきたい。