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理想のプロダクト作りの実現へ〜ログラスでブレイクダウンビジョンを作った話

この記事は「#BtoB事業開発アドカレ」 12日目の記事です。
前回はFastLabel株式会社の塚本賢一郎さんによる「AI業界におけるコンパウンド型の新規事業開発 〜業務提携から1年で数億規模のサービスを立ち上げた裏側を公開!〜」でした。

皆さんこんにちは!ログラスでプロダクトマネージャーをしています宮本です。このnoteは先日の#pmconf2023で登壇した内容を記載していきます。
理想のプロダクト作りと題して、ユーザーに届ける価値をどのように決めていったのか、そして、これを実現すれば事業でも勝てる!という意思も込めて、どのようにプロダクト戦略を描いたのかを書いていこうと思います。

以下のような課題を持っているPdMやプロダクト開発に関わる方におすすめです。

・ロードマップは作っているが、その背景に自信がない
・ ロードマップとプロダクトビジョンのつながりがうまく作れていない
・ 顧客要望を優先していて、ビジョンを実現するためのロードマップが
    作れていない


理想のプロダクト作りとは?

そもそもですが、理想のプロダクト作りとはなんでしょうか?
私が考える理想のプロダクト作りとは、以下と捉えています。

プロダクトの成長により、プロダクトビジョンを実現し、事業成長に貢献することで、ミッションの達成に近づくこと。

理想のプロダクト作りの定義

プロダクトの成長≒事業成長≒ミッションの実現と言い表すこともできると思います。ここが完全にイコールになるわけではないと思いますが、私たちが日々行なっているプロダクト作りの目的は、最終的にはミッションの実現に他ならないと考えています。ミッションは会社が掲げている最重要な旗印になるので、ここを実現し、より良い世の中を作っていくことこそが、理想のプロダクト作りと言えるのではないでしょうか。
ちなみに、ログラスでは「良い景気を作ろう。」という壮大でチャレンジングなミッションを掲げています。

MAKE NEW DIRECTION

では、プロダクトの成長に欠かせない重要な要素である、プロダクトビジョンは何なのか?というと、ログラスでは「MAKE NEW DIRECTION」というプロダクトビジョンを掲げています。日々このプロダクトビジョンの実現に向けて開発を行なっています。プロダクトビジョンの詳細についてはこの記事に記載をされているので、是非見ていただければと思います。

プロダクトビジョン:MAKE NEW DIRECTION

1: 組織の誰もがその時に必要な情報を最新の状態で取り出せるデータ管理を実現します。
2: 人間の力では読み解けない複雑な情報の関連性を自動で読み解き、それに基づいた「再現性のある適切な経営判断」を可能にします。
3: Loglassは思いもよらなかった選択肢を導き出し提案します。適切な経営判断が行えることにより、会社の業績向上、そして社会全体の良い景気作りに貢献します。

Loglass プロダクトビジョン:MAKE NEW DIRECTION

ログラスが抱えていた課題

上述したようにプロダクトビジョンはあるものの、現状のプロダクト状況とプロダクトビジョンとの差が大きく、ビジョン実現に向けて以下のような課題を抱えていました。

現状とプロダクトビジョンとのギャップ
  • 眼の前やるべきことはあるしお客様にも喜んでもらえているが、1年後2年後どうなっているべきなのかはっきり見えてない

  • 直近の開発もお客様要望を元にボトムアップ的な開発をしていて、MAKE NEW DIRECTIONとの繋がりがわからない

  • 今年に入って、PdMが1人→5人に急拡大したことで、向かうべき方向性が統一されていなかった

つまり、プロダクトビジョン達成に向けて、取り組むべきロードマップに自信が持てないという状況に陥っていました。

今見えている理想を今の解像度から形作る

私が考える理想と現実のギャップが大きい主たる要因は、お客様の解像度がまだまだ足りていないからだと考えています。そもそも私が考える解像度とは、お客様が抱えている課題を深く広く構造化して理解し、N1顧客の課題を自分ごと化して語ることができ、ビジネスの状況により取りうる解決策を考えられるということだと捉えています。

上述したように、PdMが今年に入り急増したこともあり、まだまだPdM個々人の解像度は低い状態でした。現に私も今年の6月入社であり、解像度はまだ抽象的なレベルに留まっていると感じています。

ただ、解像度が低い状態でも、理想を作ることはとても大切です。理想がないと、向かうべき方向性を見失うからです。故に、PdMチームでは今の解像度でも、まずは短期的に理想像を描く必要性があると考えました。

何をしたのか?

では、そのために何をしたかというと、「プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで」の著者の一人である小城 久美子さんがnoteにまとめられている「16時間でプロダクトに自信が持てるドリル」をログラス流に実践することにしました。

簡単にこのドリルの説明をすると、週2時間✖️8週の16時間をかけて、抽象的な概念である、プロダクトのCoreとWhyに向き合う時間を作るというものです。一定の時間はかかるものの、まずは目の前の課題解消に向けて実践をしていこう!ということでやっていくことに。

最終的には以下の図のように、「MAKE NEW DIRECTION」の実現に向けて、現在をLv1と仮定した場合に、Lv10・Lv20・Lv30・・・というようなブレイクダウンしたプロダクトビジョンを置くことに。そして、マイルストーン別のプロダクトビジョン・価値・NSM・KPIをベースにロードマップを作成していくことにしました。今回は初めての取り組みのため、まずは一番手前であるLv10を完成させることを目標として実施しました。

プロダクトビジョンLV10の作成と、ロードマップ決め

プロダクトビジョンは解像度を上げることでアップデートされていく

このワークを通じた感想から書きますが、上述した通り、プロダクトビジョンLv10の段階ではまだまだ解像度は抽象的であり、冒頭で書いた理想のプロダクト作りには遠いと思っています。だからこそ、これから先お客様が抱えている課題の解像度を上げることで、プロダクトビジョンのレベルを上げる必要があります。
そうすることで、大きい課題を解けるような機能開発ができると考えるからです。

プロダクトビジョンと解像度

具体的にお客様の解像度を上げる方法は、顧客要望の集計・インタビュー・サーベイが代表的ですが、深いところになると、お客様と一緒に働くなどがあります。お客様と一緒に働くという点では、VPoPの斉藤の記事がすごく参考になると思います。

とはいえ、プロダクトビジョンLv10を作成した時点で、このあたりは従来と大きく変わったので、着実に理想のプロダクトに近づいているといえます。

・短期ロードマップはビジョンをもとに作成できるようになった
・プロダクトビジョンLv10を中心に目線が揃った開発ができるように
・ビジネスサイドとの会話でも自信を持てるようになった

よかった点

また、今回の取り組みを受けての改善点はこのあたりになります。

・事業状況は常に感度高く把握しておくこと
・ビジネスサイドをもっと巻き込んで会話すること

改善点

どのようにやったのか?

前段が長くなりましたが、ここからは具体的にどのように進めていったのかを記載していきます。全体の進め方としては以下のような流れで進めていきました。
※なお、16時間ドリルに記載をされている、NSM・KPIについては運用テスト中のため、記載をしていません。

  1. 課題の認識を揃える

  2. プロダクトビジョンLv10の検討

  3. 価値検討と共通認識

  4. ロードマップへの反映

1.課題の認識を揃える

まずはPdMそれぞれの課題の目線を揃えることにしました。背景として、上述した課題にも記載をしているのですが、PdMが今年に入って1人→5人に増えたことで、それぞれの課題の認識や目線がぶれていたからです。
ここでは大きく2つの取り組みを行いました。

事実BOXの作成
このドリルを始める前に、事実BOXというnotionの箱を作成し、日々の業務で感じている課題や社内のslackなどで会話されている課題を集約。
その際に課題の粒度は問わず、まずは幅広く課題を集め、どんなことが課題にあがっているのかのインプットを行いました。
ここで上がってきた話として、例えば、「競合情報」「課題の優先順位付のロジック」など、様々な内容が集約をされていきました。

事実BOX - 合宿用

課題の絞り込みと、ゴール設定
ある程度課題のインプットができたところで、今度は取り組むべき課題の絞り込みと、今回のドリルのゴール設定を実施。
具体的には、プロダクトマネジメントクライテリアというフレームワークを用いることに。これはプロダクトの健康状態を計るフレームワークで、25項目のチェック項目があるのですが、PdM個々人で、足りている部分と足りていない部分をチェックしました。
結果として、プロダクトビジョンやロードマップに関わる部分が弱いということをそれぞれが再認識をし、今回のドリルのゴールとすることに。

プロダクトマネジメントクライテリア抜粋

2.プロダクトビジョンLv10の検討

ここまでで、課題の共通認識と、今回のドリルのゴール設定ができたので、プロダクトビジョンLv10の検討をすることに。
ここで先ほど収集をした、事実BOXなどを元ネタにして、PdM個々人でLv10・Lv20・Lv30・Lv100などマイルストーン別にビジョンを考えることに。そのあとは、考えたビジョンの読み合わせを行い、議論をしました。

議論のイメージ

ある程度の読み合わせができたところで、それぞれで考えた案を集約し、ビジョン検討の背景となる要素を書き出して優先度をつけていくことに。
例えば、「データの収集がラクになる」「データの分析がもっと簡単に行えるようになりたい」「AIを使ってデータの分析を自動化したい」などいくつかの要素が出てきました。
その中でも、まずは今どこがお客様の課題になっているのかを考えながら、優先度をつけることに。

優先度決め

前進するから、後退もできる
ちなみに、この時点でかなり抽象度が高い議論になっているので、このまま進めても大丈夫なのか?という疑問が出てきました。ただ、抽象度が高い議論や、全員の目線が完璧に揃っていない中でも仮決めして、前に進んでいくことが大事だと捉えています。
仮説を持って前進するからこそ、何かあった場合に振り返ることができるからです。このまま前進をしない状態ではプロダクトの進化や、お客様に価値が届けられないと考え、意思を持って議論を継続していくことにしました。

3.価値検討と共通認識

次のステップでは、プロダクトビジョンから考えられる価値の検討を実施。
ビジョンを元に、価値のブレイクダウンを行いました。
例えば、上述した「データの分析がもっと簡単に行えるようになりたい」という観点の場合は、「データをもっと深ぼって見れる」「簡単にサクサクと見れること」などの粒度で各自が洗い出し、それらをグルーピングし、議論をしていきました。
最終的にはこの右の図のような形式で、「MAKE NEW DIRECTION」を頂点にして、ブレイクダウンビジョン(今回でいうLv10ビジョン)→大価値→肉付け価値を定義。

価値のブレイクダウン

ある程度価値の認識が揃った段階で、カスタマージャーニーで、ユーザーの行動や感情などの目線合わせを実施。

緊急クエスト発生!!

ここまでは順調だったのですが、ここで1つの問いが出てきました。

プロダクトビジョンLv10は、本当にこれでいいのか?
事業上の優先度とプロダクトの優先順位が紐づいているのかが見えない。

ある程度プロダクトの価値は共通認識が取れている。ただ、それが本当に事業の優先度と紐づいているか見えない。このような疑問が出てきました。
そのため、開発チーム全体で改めて事業の優先度の確認と、プロダクトの価値が紐づいているのかのワークを実施。
この話の詳細は、ここのnoteに詳しく記載をされているので、是非見ていただければと思います!

4.ロードマップへの反映

開発チームとの協議を経て、プロダクトビジョンLv10と、紐づく価値を確定させることができました。ここまできてようやく、プロダクトビジョンから逆算をしたロードマップを引くことができます。
また、ロードマップアイテムの優先順位ですが、一例として「顧客課題」「プロダクトビジョンLv10のマッチ度」「事業貢献度(KPIへの寄与度)」を組み合わせてMoSCoW分類をしていきました。

ロードマップイメージ

さいごに

以上で今回のワークの内容は終了になります。
さいごに今回の取り組みでかかった体制と時間を書いておきます。

⚫️ 期間     :1ヶ月
⚫️ 参加者 :PdM5人・プロダクトチーム
⚫️ 時間  :PdM同期で約15時間
         プロダクトチームとのワークで1時間

それなりの時間を使ったと思いますが、今回の取り組みを通じて間違いなくプロダクトは前進しました。勿論、その過程では議論が白熱する場面や考えこむ場面もありました。それでも一緒に考えて、議論ができる仲間がいるのは本当に素晴らしいことだなと思います。
この場を借りて、改めてこのワークを提案したPdM・推進したPdM・一緒に考えたPdM・開発チーム・関連した方々に感謝したいと思います。

そして、今後も理想のプロダクトに近づけるように、プロダクトビジョンを磨いていき、事業成長・ミッションの実現に貢献できればと思います!

ありがとうございました!

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