「カミゴロク」第3話

【数年後・村・馬剣邸にある離れ・朝】

離れの寝床から、日が上らない早朝に誰よりも早く起床する15 歳になったカグマ。

水浴びをすると黒髪から赤髪に変わる。

それをコトサナの実から作った染料で黒染めをする。

そして、皆が起きてくる時間となり、掃除、朝食の準備、馬の世話など、朝の付き人としての仕事を3、4人と連携して淡々とこなすカグマ。

その目に生気はなく、明るかった性格が嘘のように抜け殻のようになっている。

【村・馬剣邸・朝】

馬剣「・・・ふむ。お前も少しは役に立つようになったか、カグマ」

カグマ「・・・はいっ」

馬剣「孤児のようなお前を雇ってやった私への奉仕だ。さぞかし気分がいいだろう・・・?」

カグマ「・・・おっしゃる通りです」

生返事なカグマに飽き飽きする馬剣。

馬剣「ふんっ・・・まぁいい。今日は外出が許される日だが、昼飯の準備までには戻ってくるように。少しでも遅れた時はわかっているな・・・?」

カグマ「・・・はい、存じています」

馬剣「私としては折檻がそろそろ恋しくてな・・・わざと遅れてもいいのだぞ?」

カグマ「・・・失礼します」

そう言って部屋から出ていくカグマ。

後ろに控えていた付き人Aが馬剣に近寄る。

付き人A「・・・馬剣様はなぜ、出自も分からぬあのようなモノを置いておられるのです・・・?」

ニヤリと笑う馬剣。

馬剣「奴には利用価値があるのだ・・・あの藤御門秀鳴を陥れるための・・・な」

【山中・昼過ぎ】

山にコトサナの実を収穫しにいったカグマ。

その手には、ゼンが残した自生場所が記された地図が握られている。

【山中・家・昼間】

ツクヨと猪を倒した場所を通り、以前、ゼンとツクヨと住んでいた家に到着する。

半壊し、煤だらけだらけとなっている。

カグマ「・・・ただいま、ツクヨ、ゼンさん」

【山中・家の中・昼過ぎ】

すり鉢を使って無くなりそうになっていた染料を作り足すカグマ。

【回想・数年前・家の中・夜】

ゼンが村人達に殺される前にカグマに言った言葉を思いだす。

ゼン「__________いいか、俺の身に何かあったとしても、村人達を逆恨みするなよ。その復讐の火は、心にしまい、来るべき時に正しく燃やすんだ。そうしないと今のお前じゃ、復讐や悲しみに身を滅ぼし、最後にはあっけなく死んじまうのがオチだ。いいか、必ず"その時"は来る。あの方は俺に言ったんだ。『いつか迎えに来るその時まで、我が子を任せたぞ』・・・ってな。それまでは村人達に紛れ、耐え凌ぐんだ」

【山中・家の中・昼過ぎ】

カグマ「ゼンさん・・・ツクヨ・・・俺はもう・・・無理かもしれない・・・流れる月日が心を癒す事はなくて、常にすり減らされる日々。あの村で笑顔で挨拶される度に、親切にされる度に吐き気がするんだ・・・全員死んでくれって、殺したいって思ってるのに、普通のフリをしなきゃいけない・・・なあ、いつまでこんな日々を過ごせばいいんだ・・・?」

もちろん、返事が返ってくるわけがなかった。

カグマ「・・・俺は怖いよ。自分が自分じゃなくなる感覚・・・いつかゼンさんとツクヨのことが俺の中で薄まって、あいつらと同じになっちまうんじゃないかってさ・・・」

カグマ「ゼンさん・・・ツクヨ・・・誰か、誰か____________助けてくれよ」

【村・昼過ぎ】

馬剣の元に戻ったカグマ。

昼飯時が終わると、馬剣が行脚の付き人の一員としカグマを同行させる。

そして、村の視察へときた馬剣達一向。

すると、ある小さな男の子が、馬件の服に持っていた食べ物をこぼしてしまう。

馬剣「_____________この童を殺せ。カグマよ」

カグマ「え・・・」

子供「ご、ごめんなさい・・・!」

子供の近くに親らしき人は見当たらず、泣きながら許しを請う子供。

馬剣「私の着ているものを汚したのだ。童だろうがなんだろうが、この村じゃ当然の摂理だろう・・・?なぁ、皆の衆よ」

すると、周りの村人達が迎合する。

村人A「そうだそうだ!」

村人B「殺せ!殺せ!」

カグマ<この村は・・・この世の中は・・・何にも変わっちゃいねえ>

馬剣「・・・カグマ、早うせんか」

カグマ「俺は_________俺は_________」

馬剣「もう、良い。私手ずから沙汰を下そう」

そう言って、式神を召喚し、子供を襲わせる馬剣。

泣いている子供がツクヨの姿と重なる。

カグマ<俺はまた・・・繰り返すのか・・・・?また、失うのか・・・?>

カグマ<そんなのはもう・・・いやだ!!!!>

そして、式神無しで力を使い、子供を救うカグマ。

それを見ていた衆人がざわつきだす。

付き人A「式神なしで特異な力を使った!?まさかこいつ・・・」

馬剣「やっと正体を表したなあ!禍身子よ!」

そう言って、近くにあった水の入った桶を掴みカグマにかけ、赤髪を露わにする馬剣。

馬剣「お前を手土産に私は、官の陰陽師へと成り上がるぞ!」

そして、式神を使いカグマ襲う馬剣。

死を悟るカグマ。

???「やっぱり僕の愛する我が子に間違いなかったね。長い間待たせたね。迎えにきたよ。僕が君のパパだ!」

そう言って式神を消しとばし、さっきまで泣いていた男の子がカグマを守る。

その姿が変わり、それはまさに神だった。


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