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「野球部でコントロール良かったんで」妻に椅子を投げつけた男の反省文に書かれていたこととは  #140(傷害)

「推しの裁判官」という言葉が世に定着して久しいですが、人によって「推し」の定義というのはまちまちなものでして。

え?「推しの裁判官」なんて言葉はない?…あなた、遅れていますね。

そんな話をしつつ考えたいのが、裁判官の適性ってどんなものなのでしょうか。
「法令に従って粛々と法的判断を下すことが出来る人」ってのは、まぁそりゃあそうなんでしょうけど、個人間の紛争(企業もありますが)である民事裁判はもちろんのこと、法に触れた疑いのある刑事裁判であっても、人としての感情を完全に排除することなどできようはずがありません

なので、これはいい悪いあるにせよ、その人間らしさみたいなのが垣間見える箇所がこちらに刺さる裁判官ってのは、「推し」となる一つの基準となるのでしょうね。
というのが、推し裁判官研究家の第一人者の私による寸評です。


はじめに ~被害者の関係者らしき人物の前で~

罪名 :傷害
被告人:50代の男性
傍聴席:平均3人(全2回)

初公判では、傍聴席に関係者と思われる方が数名
裁判の最中、検察官の主張には激しく頷き、被告人の言い分には首を横に振るなんて仕草が目立ちました。なので、被害者関係者かと思うのですが、入廷した被告人は特にそちらに目をやるでもなく自分の席に座りました。

被告人の仕事は自営で訪問販売を行っているとのこと。自営で訪問販売?と思わなくもないのですが、いい意味でも悪い意味でも、なんとなく納得させられちゃいました。
見た目は年相応なんですが、話がいい具合にうまそうでもあり、適当そうでもあり、訪問販売に来たらそこそこ追い払うのが面倒そうな感じがします。
ただ、拘置所の服を着ているので、お金がないのか、服を差し入れてくれる人がいないのか、その生活状況にもいろいろと考えさせられるものがありました。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人はに対して、自宅にて5kgあるダイニングチェアを投げつけて命中させ、骨折など全治一ヶ月のケガを負わせた。

5kgって相当ですよね。さすがに、そんなスピードは出せないと思いますが、逆に投げつけられた側も防御のしようがなさそうに感じます。

さて、どんな理由であれ、投げて当たった結果自体に擁護しようがないですが、あとはそのきっかけ。夫婦喧嘩によるものなのか、日常的に暴力を奮っていたものなのか、それとも別の理由があるのか、気になるところです。


採用された証拠類 ~不採用となった反省文~

検察官証拠
被告人は当時妻子と住んでいたが、事件後離婚を切り出されている。過去にも一度、離婚経験がある。同種の罰金前科がある。

被害者供述
被告人と家で酒を飲んでいたが、飲み足そうと立ち上がって、自分の席に座ったところで、椅子を投げつけられた。顔から出血し、目を開くことはできず、自ら110番通報をした。
顔面には傷跡が残る見込み。離婚届の用意をしている。絶対に許せない。

被告人供述
被害者と飲酒をしていて、その言動に立腹した。椅子を投げるのは危険とはわかっていた。

二人で飲みながら、何かの言動に立腹した上での犯行とのこと。それが喧嘩のように双方言い合ったりしたものなのか、一方的な因縁なのかはこの時点ではわからず。

そして弁護人からは、被告人の反省の気持ちとして反省文の取調べを請求したのですが、検察官は不同意

反省の色が見えなかったり、根拠のない勝手な言い分を書き立てている場合は不同意となることがありますが、そこそこ珍しいです。
つまりは、被告人としては、何かしらの強い主張があるということが伺われます。被告人質問が気になります。


被告人質問 ~椅子をうまく投げれると思った根拠は?~

この被告人、素なのか、わざと作っているかわかりませんが、劇場型というか、たまにミュージカルっぽく動作を交えながらオーバーに表現してきます
でも、文章ではその雰囲気を伝えられないのが残念。時おり、声を大きくしたり、泣きそうな声になっているけど、演技っぽいと思っていただけたら。

弁「今回の事件は、どうして起きたんですか?」

被「被害者は肝硬変だから、1本しか飲んじゃダメなんです!それなりに2本目を飲むから。僕は妻に死んでほしくないから、なんとか止まらないかなって、当てないつもりで、つい」

いきなりフルスロットルで感情を爆発。1つの質問につき、答えも長いので、申し訳ないですが適宜割愛。

弁「だとしたら、なんで家にそんな複数本もあったんですか?」
被「最近、調子良さそうだし、買っておいても飲まないかなと思ったんです」

弁「この日、他に被害者はお酒を飲んでいたんですか」
被「買い物から帰ったら、キッチンでビール4本、レモンサワー3本飲んでて」

弁「それを見てあなたはどうしたんですか」
被「もちろん取り上げました!しかし、取り戻そうとしてくるんで、流しに投げつけてやりました。私は妻に死んでほしくないんです

劇場は続いているんですが、傍聴席の関係者らしき人は、冒頭から首を横に振り続けています。どこからどこまで嘘なのか、裁判長は内緒にするから、こっそり教えてくれないものだろうか。

弁「イス投げる以外に止める方法思い浮かばなかったの?」
被「口で言っても持って行っちゃうんで、脅かすつもりだったんです」

弁「イス以外の選択肢はなかったの」
被「周りに他に物がなかったんです」

イスか否かの選択肢でなく、投げる投げないの選択肢からだろ、まずは。
本当に脅かすためだったら、椅子を振り上げるとかでも良かった気がするけど。というか、死んでほしくないと言いながら、一歩間違えれば自分が殺めてしまう可能性を取っていることが本当に救えない。

弁「被害者から離婚を切り出されたことは」
被「あります。でも、嫌なんで、ギュッとして。でも、酒やめないというので、カチンと来て『じゃあ離婚してやるよ』と言いました。嫌なんですけどね、向こうが飲むからなんですが

弁「被害者にケガを負わせたことをどう思ってます」
被「同じように妻にしてもらってでも謝り続けたいです」

弁「被害者は離婚したがっていますが」
被「子が心配なんです。妻はIQ50しかなくて、働けないですし」

自分をいいように見せるために、他者を平気で落とす方なのですね。
というか、奥さんが体調的に飲んじゃダメなのに飲み続けるというのは新情報としてわかりましたが、投げるに至った経緯や、そもそもの思考など弁護側主張でもなかなか同情しにくかったです。


さて、これは検察官の質問などでさらにボロが出そうな予感。

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